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1998年12月 7日 (月)

個人 生きていく方向性(その2) 〜ベンチャーキャピタル事業の強化〜

そのグロービスのビジョンに従って、歩んできたが、どうも世の中の進歩のスピードが大変遅い気がする。

確かに、グロービスは成長したし、僕らの考えは、ほぼ当っていた。グロービスもこの経済環境の悪化にも拘わらずに、年率50%超の成長を創業以来達成してきた。多くの個人に、大学院レベルの教育機会と「良い生き方」を提供することができてきたと思っている。クライアント企業に対して、「良い会社」の実現にも手助けをしてきた。社会に対しては、良い本を出すことにより、効率的経営のあり方は、どうあるべきか等と問うてきたし、ベンチャーキャピタルを通して新たな社会価値の創造に寄与してきたと思う。だが、どうも社会全体が、うまく機能していないようである。

山一の倒産等によって、先行きへの不安が広かり、消費は冷え込み、設備投資も停滞した。金融機関の貸し渋りが発生して、国内総生産は4四半期連続のマイナスであり、失業率も高い。経済を循環する血液であるお金の流れが滞ってしまったようである。そのさなかに、第3次ベンチャーブームは終焉して、数多くのベンチャー企業が倒産した。その結果、起業家は自己破産して、エンジェルは損をして、ベンチャーキャピタル(VC)は投資を回収できずで、結果的に投資家に良いリターンを生み出せないでいる。銀行もベンチャーへの融資に慎重になり、皆、ベンチャーに興味を失い、更にベンチャーを取り巻く環境は悪化している悪循環に陥いっているようだ。

問題は、数え上げても切りが無い。
- 経営者のマネジメント能力の欠如は明らかである。

- 紛失まがいの決算や損の隠蔽などのディスクロージャーに対する経営姿勢は、論外で ある。コーポレイトガバナンスに問題がある。

- VCなどの支援機間は、経営を理解していないようだ。

- 銀行の融資姿勢は、反省すべき点もあると思う。

- 制度面や市場の不整備など多くの問題があるのは事実である。

結果として、今ベンチャーへの意欲は絞り込んでしまっているようである。良く聞くのは、「所詮、日本の教育では、ベンチャー起業家育成ができない」、「日本の社会風土自体が、ベンチャーに向いていない」であり、更には「日本でベンチャーは育たない」と断言する人も出てきてる。したがって、日本に投資しないで、米国に投資するというVCも出てきた。

そうなると、日本は、先の論文に述べられた、「ベンチャー型成長モデル」を放棄することになり、明らかに、経済の長期的な凋落傾向を打破することはできないであろう。産業構造が変革する中で、新たな知識創造型産業を育てる仕組みが無ければ、経済は発展を停めてしまい、雇用の吸収はできずに、社会不安は一掃広がっていくばかりであろう。

僕が、問題にするのは、まさにその点である。つまり、ベンチャーを育てる社会基盤(ビジネスインフラ)の整備が必要であり、それを民間の立場で、グロービスのビジョンの通り、創ることは可能なのである。ただ、どこから始めて良いのか分からないほどの状態であることは確かである。でも、誰かが始めなければ、何も生まれないのも事実である。「僕らがやらなければ、誰がやる」という言葉は、社内でも良く使われている。誰も始めないなら、僕らがやるしかないのである。それがグロービスなのだ。

僕らが、6年間かけてやってきたのは、未だ序の口であり、これから本格的にそのビジョンに邁進する必要がある。そのためにも、僕は、今迄のヒト・ノウハウの整備から、大きくカネの面の整備、つまり、ベンチャーキャピタル事業に軸足を移そうとしている。

つまり、自らの生き方を「起業家」から「ベンチャーキャピタリスト」に転身しようと考えている。そして、今迄5億4千万円しかなかったファンドの規模を一挙に100億円程度にアップさせて、数多くの成功事例を世に出したいと思っている。それらの方法論は、別途機会があれば、コラムに掲載することとする。誰かが本気になって知恵とエネルギーを注がなければ、何も変わらない。

僕は、そのベンチャーキャピタリストとして、パワーアップするために、明日12月6日から2月20日まで、年末年始を挟み、2ヶ月間海外に行ってこようと思っている。(ドイツ、イスラエルに年内に行き、年始から6週間ロンドンに滞在して、その間にフランスに行く予定である)。米国の状況は、ある程度理解できているが、欧州の状況は良く分からないので、この機会に学ぼうと思っている。実は、今欧州のベンチャー企業はホットなのである。米国は、希に見る経済の躍動感を維持しており、これは移民社会だからできるという人がいる。英国は、アングロサクソン系だから日本とは違う、という人がいる。僕もそう思ってきたが、ドイツとフランスの活況はどうやって説明できるのだろうか?ドイツ・フランスに起こった変化は必ず日本にも起こると思う。その欧州での手法を学ぶことによって、日本でのベンチャーキャピタル事業のヒントにしたいと思っている。

創業以来6年間、ノンストップで頑張ってきたので、2ヵ月ほど海外で過ごすのも良いものと思っている。違う国からじっくりと自らを見つめ直しながら、思いっきり学び、経験する良い機会でもあると思う。じっくりと次のビジョンを思い描いてみようと思う。

今、ドイツは寒いらしいし、イスラエルは、ちょっと治安が悪いようだ。何を感じるのか、自分でも楽しみである。(^^)/

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