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2002年1月29日 (火)

組織人 『吾人(ごじん)の任務』出版にあたり

いよいよ僕が一字一句書いた本が完成した。本日、ゲラの修正も終わり、あとは3月 の発売日を待つのみとなった。どのような反響がありうるのか楽しみだ。

コラムの読者にもその本の「はじめに」をご紹介することとする。

■はじめに

「吾人の任務」は、構想から出版まで5年以上の歳月がかかった。
 最初に本を書こうと思い立ったのは1996年3月のことである。「目立ちたくないから」という理由で、1997年に一度出版を取りやめた。本を書くとそれだけで、「自信過剰」であるとか、「目立ちたがり屋」と思われてしまう。また、「本をマーケティングの道具に使っている」とうがった見方をされることもある。僕は、そういう意図がないのにいらぬ嫌疑をかけられたくなかったので、結局出版をとりやめてしまった。僕は、経営者であって、ベンチャーキャピタリストでもあるので、本を書くことを本業としていない。したがって、本の執筆をやめるということは、それほど難しい意思決定ではなかった。

しかして僕は、40歳を迎えるにあたって自問自答した。「そもそも自分が他人から誤解されたくないと言う自分勝手な理由だけで、出版しないと決めるのは良いことなのだろうか」、と。「今まで、数多くの本を濫読することによって、さまざまなインスピレーションを得ることができたではないか。その本の作者達が執筆するという勇気と情熱を持ってくれたお陰で、数多くのヒントをもらい、僕自身の人格を磨くことができた。とても本に感謝している。今後は本から一方的にTakeするのではなくて、僕なりに何らかのGiveをしなければならないのではないか」と思い始めたのである。

 その中で、いよいよ日本の先行きがあやしくなってきた。政治・経済・技術・金融・財政・教育など問題が山積みである。僕が40歳前後の同世代の仲間を集めた勉強会でも、僕らはどういう役割を果たすべきかに関して、激しい議論を始めた。結論は、「次の日本を担う僕らが当事者意識を持って、立ちあがるべきだ。言うべきことをしっかりと言わないといよいよ日本は取り返しのつかないところまで行ってしまう。立ちあがろう。何もしないのは無責任であるし、不作為の罪だ」であった。

 2001年10月にいよいよこの執筆プロジェクトを再開した。時間とエネルギーをかけて、1冊の本を書き上げることとした。執筆が本業でない僕には、かなり厳しいものであった。自分のことをさらけ出すようで恥ずかしい面があるが、経営者というのは、常に考え方を世に提示しなければならないものだと言い聞かせて、自分をプッシュして書いてきた。

 過去に書いた「MBAマネジメントブック」、「ケースで学ぶ起業戦略」「ベンチャー経営革命」「成功するキャリアデザイン」などすべては、他の方との共著であり、しかもビジネス書であった。今までは、僕自身の考えを前面に出さずに、一般的なフレームワークを提示することに専念してきた。今回書き上げる本は、僕自身が過去から今まで考えてきたことを記したものである。ゴーストライターをつけて書いてもらおうかと思ったが、結局、一字一句自らが書くことにした。

 本書は、1989年3月末にハーバードビジネススクールへ(HBS)の留学が確定した日から始まり、2001年末に至る時点までの約12年間、僕がどのように生きてきて、何を考えてきたかを書きつづっている。1章から3章を通して、商社、留学、起業の道のりで僕なりに生きてきた風景と考えてきたことを書いている。4章は、僕が起業したグロービスの理念をまとめた。5章では、「社会認知型ビジネススクール」のビジョンを書いた。ちょうど、MBA取得に始まり、MBAを創るところで終わっている。本のタイトルの通り、「吾人の任務〜MBAに学び、MBAを創る」という構成になった。最後に付録として、今までホームページ上に書き連ねてきたコラムを掲載した。

 さて、どのような内容になっているかは、読者のみなさんにご評価いただきたいと思っている。僕にインスピレーションを与えてくれた本とは、比べものにならないほどお粗末なものかもしれないと思うが、読者の方々の何らかの示唆になれば、幸いだ。

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