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2002年12月10日 (火)

個人 「囲碁と経営」その1

久しぶりのコラム執筆である。なぜこれだけ長いこと沈黙していたかというと、理由 はたった一つである。囲碁にハマっていたのである(実のところ沈黙でも何でも無い のである。ただ単に精神的にも時間的にもコラムを執筆するゆとりが無かっただけな のである)。

昨年末、二つの理由で囲碁をはじめることを決めた。一つが、友人からの誘いであ る。その当時山小屋計画(コラム「山小屋計画」参照)が進んでいたが、山小屋の近 くの友人が囲碁打ちで、「山小屋の夜の時間にぜひ一緒に打とうよ」と誘ってきたか らだ。確かに山小屋での夜の過ごし方には、困るかもしれないと思い、囲碁を打つこ とを考え始めた。さらにもう一つのきっかけは、「吾人の任務」の執筆を決めた理由と 同様に、40才という年齢がある。翌年40才を迎えるにあたって、30代までと全く違ったことをしてみたかったからである。もちろん、親父が囲碁打ちであったことも 当然影響していたように思う。

「吾人の任務」の執筆も終わり一段落したので、年末年始の休みから囲碁を学び始め た。最初は右も左もわからない状況である。つまり、さっぱりである。何から何までが全くよくわからないのである。仕方がないので、「習うより慣れよ」ということ で、まずは打ってみた。しかし、それでも囲碁に慣れるのにとても多くの時間を要した。

まず、第一に言葉がわからないのである。囲碁では、コスミ、トビ、ツケ、ケイマ、 コウ、ヒラキ、シマリなどなぜだかカタカナ表記の言葉が多い。これに慣れるのに苦労した。慣れるための共通言語の習得から始めた。

そして、第二に、囲碁の概念である。ルールは比較的簡単であるが、概念を理解する のに苦労した。たとえば、二眼の概念、終局の概念など、どうすれば生き死に、勝ち負けが決まるのかを理解するのに時間がかかった。

第三に、勝つ方法である。ルールと言葉がわかっても、今度は、勝つためには最低限の知識のパッケージの習得が必要になってくるのである。たとえば、定石、手筋、詰 碁、ヨセなどの最低限のパターンの習得である。これらのまとまった知識を頭に入れるのには、ただひたすら本を読むしかない。30冊以上は買ったかと思う。最初は、簡単な初心者向けの本から始まり、中級者向けに進み、さらには上級者(初段)向けなど少しずつ難易度が高いものにチャレンジした。受験勉強みたいに、何度も何度 も読み直して、できなかった場合には、赤ペンで×をつけてその問題を後日やり直し た。「何事も反復と継続だ」、と自らに言い聞かせて、勉強した。

この間、好きな読書はほとんどやめていた。未読の本が本棚にどんどん積まれていっ た。出張には、囲碁の本ばっかり持っていった。経営書とか歴史書とかだと慣れてい るので、すぐに読み終わるが、囲碁の本だと一冊読み終わるのに、十数時間かかった。

そしてさらに実戦を積んでいって、理解を深める努力をした。これらをビジネス、家族との時間の合間に行うのだから結構大変である。集中するので、頭の中は囲碁状態である。当然、コラムを書くことなど考える余裕がなかった。

囲碁を始めて間もないころ、僕の知り合いの女性経営者からこう言われた。「私は、 囲碁をはじめて1年半で初段を取ったのよ」、と。その言葉に、僕は鋭く反応して、対抗意識を燃やした。彼女が1年半で初段を取れたなら、僕は絶対に一年で初段だ、と心 の中で意思決定した。そして、周囲にも、「1年で初段を取る」と宣言してしまったのである。家族からは、「じゃ、1年で初段をとれなかったら囲碁をやめてよね」とも言われた。いよいよプレッシャーがかかってきたのであった。

そして、夏の間は囲碁三昧である。1ヶ月間で50局程度は打ったかと思う。家族サービスもおろそかになり、囲碁一色になりつつあった。それでも仕事があるので、 なかなか時間がとれない。こうなると投下時間あたりの効果を最大化するために、工夫をせざるを得ない。まずは、囲碁日誌を書き、何が悪かったのかを一局ごとに振り返り、問題点を抽出して解決する努力をした。さらには、囲碁サロンにも通いはじめてインストラクターとも指導碁を打ってもらったりした。

そして、9月ごろから満を持して初段の認定大会に参戦した。これが、なかなか勝てないのである。5連敗して、もうだんだん気がうせてきているのを感じ取ってきた。囲碁の負け方は、本当にボロボロになるので、涙が出るほど惨めな気持ちになる。でも、自らに言い聞かせて頑張った。認定大会で初めて1勝できたのが、3週間経過した後の6局目のことであった。この初勝利の嬉しさは、とても表現し尽くせない。嬉しくて、嬉しくて、グロービスで勉強会をしていたGMSの受講生とグロービスのスタッフを皆誘い、全員にお酒をご馳走して、そのまま勢いで朝まで飲み明かしてしまった。
初勝利からの囲碁は、それでも一進一退であった。勝ったかと思うと、負けたりした。ただ、確実に勝つことができ始めてきた。

初段挑戦後3ヶ月経過した11月のボジョレーヌーボの解禁日に、会社を午後休んで、日本棋院認定の団体の大会に参加した。あと1ヶ月で初段獲得宣言をした期限の1年間を迎えてしまう。気合を入れて大会に臨んだ。1局目勝利、そして3局目も勝った。ヤッター!!何と、初段の認定を受けることができたのである。とても嬉しかった。
当然、その局終了直後からはボジョレーヌーボをガボガボ飲みはじめた。相当ストレスがたまっていたのであろう、この日も結局朝5時まで飲み明かした。酔っ払っても気分爽快だ。

初段認定を受けてからしばらくして、やっと精神的にゆとりができて他のことを考えることができるようになってきた。そして今、ようやくコラムを書く余裕ができたのである。

では、囲碁がなぜそんなに面白いのか。なぜ僕がはまってしまったのか、また囲碁と経営の関係性は何かを次のコラムで書いてみたいと思う。囲碁にご興味が無い方も是非次のコラムもお付き合いください。m(--)m

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