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2004年5月13日 (木)

日本人・アジア人・地球人 初めての上海視察ツアー

今まで、「視察ツアー」なるものには一度も参加したことがなかった。

経済同友会、ロータリークラブ、ニュービジネス協議会、YEO、ベンチャーキャピタル協会などさまざまな経済団体に所属した。その都度、中国視察ツアー、シリコンバレー視察ツアー、東欧視察ツアーが組まれ、お誘いを受けたが、全て断ってきた。どうも、視察ツアーには、時間をもてあましたお偉さん方たちが参加しているようなイメージがあるのと、どうせ若手が参加しても、こき使われて終わりだろうという意識があるからだ。それに加えて、僕は団体行動が苦手ときている。従い、参加することなどありえなかった。

その僕が、今回初めて視察ツアーに参加した。というよりも、正確に言うと、自らが発起人として企画した。そして視察旅行に対する印象も変わってしまった。不思議なものである。

ことのいきさつは、こうだ。9年前の1995年に若手経営者(の卵)の有志が集まり、勉強会を組成した。その勉強会の目的は、21世紀を迎えるにあたって、僕ら同世代の経済人(一部政治家もいたが)が、何を考え、何をなすべきかを考える機会をつくろう、というものだ。メンバーは、同世代ということで、その当時30-35歳が中心となり、50名程度が集った。名称は、「21世紀を考える会」とし、2001年1月1日に解散するという時限的な会とした。
5年間強の間、毎月のように講演会を企画したり、リトリートと称して年に1-2回旅行も行った。

そして、その会は、予定通り、2000年12月に解散式を行い、その活動を終えた。解散後も、メーリングリスト(ML)だけは残しておいた。同世代で、過去数年にわたり、ガンガンに意見交換してきた気心が知れた仲間だ。当然、その後もML上で意見交換を重ね、今日までずっと交流してきた。

そのMLに昨年11月のコラム:「中国の若手リーダーとのネットワーク」を送ったら、数多くの反響を得て、「上海に視察ツアーに行こう!」という盛り上がりをみせるにいたった。皆忙しいので、やっと決まった日程が、半年後の4月である。参加メンバーは、10名。会員の中には、中国に工場を持っている人や、中国で事業をやっている人がいたりしたので、その方々に団長・副団長として企画を練っていただくこととした。

‘視察ツアー’ということなので、おそらくグロービスのスタッフも皆、僕と同様に遊びのイメージを持っていると思い、有給休暇を取得し、航空券はマイレージで予約した。全て私費で参加することにした。

そして、4月を迎え、上海視察ツアーに参加することになった(発起人として当初企画に参加したが、中身は団長・副団長にお願いしていたので、僕の意識では「参加」なのである)。

料理のメニューを選ぶときと一緒で、もしも自らが注文すると、ついつい同じメニューを注文してしまい、自分の口に合ったものは食べられるけど、未知の料理を味わえない。視察ツアーも同様で、僕が企画するとなると、ベンチャーキャピタル訪問、ハイテクカンパニー視察、大学視察など、ほとんどが自らの業務に関係するもので終わってしまうであろう。それでは、視野は広がらない。たまには、全く違う側面を見てみたい。そこで、全面的に団長以下にスケジュールをお任せすることにしたので、一参加者としては、未知の料理を味わえるかのような違った意味でのワクワク感がある。

今回の訪問にあたって、2つの目的をもって参加することにした。

1つが、中国を好きになること。今まで、上海2回、北京2回、西安など何箇所か行ってきたが、正直言ってまだ好きになるに至っていない。好きになれないと、理解が促進されない。良い面にフォーカスをあてて、好きになる努力をしようと決めた。

もう1つが、参加者となるべく話をすること。普段、忙しい人ばかりである。皆と最初出会ったのは、10年以上前である。そのときは、まだ社長ではなかった仲間が今では皆、大社長だし、家庭を持っているので、公私に忙しい。せっかくの良い機会なので、なるべく多くの方と話をして、更に親しくなろう、と思った。

フライトの前に集い、改めてスケジュール(メニュー)に目を通した。

4/15(木)

各自ホテルチェックイン
19:00ホテルロビー集合
移動(タクシー)
19:30-21:00夕食 <名軒> 上海市安亭路46号安亭別墅1号楼
花園飯店泊 上海市茂名南路58号

4/16(金)

08:00ホテルロビー集合
移動(貸切バス)
09:00-10:00上海証券取引所見学
10:00-12:00不動産(アパート・ゴルフ場・高級住宅分譲地)の視察
12:00-13:30昼食 <大公館> 上海市准海中路1110号 東湖賓館7号館
移動(貸切バス)
14:00-15:00楽購スーパー見学
15:30-16:30インベンテック見学 パソコン組み立て工場
移動(貸切バス)
17:00-18:00レクチャー 楽購スーパー董事長
移動(貸切バス)
19:00-21:00夕食 <真的好> 上海市興業路123-1
21:00-22:002次会 <上海宝莱納餐廰> ビアホール 上海市興業路123-1
花園飯店泊

4/17(土)

06:45ホテルロビー集合
移動(貸切バス)
08:00-09:00蘇州八木時装有限公司見学 江蘇省呉江市廬墟鎮
移動(貸切バス)
10:00-11:00上海敷島福紡織品有限公司見学 上海市金山区干巷鎮干林路2188号
移動(貸切バス)
12:00-13:00昼食 中国風田舎料理店
移動(貸切バス)
15:30-17:30杭州頂益工場視察 浙江省杭州経済技術開発区10号大街
移動(貸切バス)
18:30-20:00夕食 <杭州楼外楼> 浙江省杭州市孤山路30号
移動(貸切バス)
花園飯店泊

4/18(日)

06:45ホテルロビー集合で帰国の途へ

上海にとどまらず、蘇州、杭州までを3泊4日で駆け抜けるハードなものになっていた。視察の中身も、スーパーマーケットの訪問、ラーメン工場の訪問、繊維工場や縫製工場の訪問、更には不動産市場の視察など、僕が選ぶメニューには入りえないものばかりである。しかも移動が多い。さてどうなることやら。。

1日目は、ホテルに着くなり、プールに行き、食事前に時間があったので、仕事をした。メールを打っているうちに勢いがついて、コラムを一つ書き上げた(「起業家の風景」を書く意味)。そして、食事会へ、その後夜景が見えるバーに移動して、それから中国式のマッサージを受けた。1日目はゆっくりであった。

2日目は、先ず上海証券取引所、そして高級分譲マンション・高級住宅街、ゴルフ場の視察をし、それから昼食だ。中華料理を堪能した後は、楽講というスーパーマーケットを訪問した。ものすごい活気であった。このスーパーをオーナー兼創業者の董事長(中国では社長にあたる)が自ら案内してくれた。このスーパーマーケットが圧巻であった。1日平日で5万人来客があって、土日には7万人も来るらしい。

そして、今度は、ヒューレット・パッカード社などにノートブックパソコンをつくっているインベンテックという工場を視察した。その後、先ほど見学した楽購スーパーマーケットの本社に向かった。楽講の董事長がビデオを見せてくれて、その後中国におけるビジネスのレクチャーを受けた。そして、董事長の招待で、夕食にでかけた。夕食の間、質問を多くさせてもらった。そして夜は新世界へ。

3日目は、大移動である。上海から蘇州に行き、その後上海の金山地区に戻り、それから杭州である。上海の道路は、しっかりと作られてはいるが、路面が結構ガタガタである。総勢10名のツアー参加者だが、マイクロバスでなくて、大型バスを借り切った。マイクロバスでは振動に耐えられないからだそうだ。

僕は、友人の囲碁仲間とともに、常に一番後ろの席を陣取った。真中の席に囲碁盤を置き、移動中は囲碁タイムとなった。このために、わざわざ日本からマグネットタイプの大きめの囲碁盤を持参した。戦績は、2勝3敗の負け越しである。長考派の僕でも5局も打てたということは、かなり移動の時間が長かったということだ(僕らにとっては、移動の時間というよりも囲碁の時間ではあるが)。

蘇州の八木コーポレーションの現地工場の視察、上海市金山地区にある丸八真綿の関係先であるシキボウの工場訪問、そして杭州にあるサンヨー食品が出資している康師博(カンシーフー)のラーメン・飲料工場を視察した。夜は杭州の西湖の湖畔の楼外楼という高級中華料理店で、カンシーフーの役員のご招待で食事をした。

食後上海のホテルに移動して、着いたのが夜の11時半である。そして翌朝、一番早い 便で帰国した。あっという間のめまぐるしい4日間であった。

以下、印象に残った点である。
1)上海は3回目だが、好きになってきたような気がする。今回は、夜の新世界での遊びの交流(?)以外は工場訪問などが主だったので、印象面でしか言えないが、中国が経済的に発展をとげ、自信を持ち始め、ゆとりを持つにつれて、反日感情が薄れてきているような気がする。

今年は、中国を好きになり、理解することを一つの目標にしている。6月に再度上海に来る予定である。可能ならば、大連なども今年中に行ってみたいと思っている。

2)楽講、カンシンフー、インベンティスなど台湾人経営者が創業した企業の訪問が多かった。前回1997年に訪問した時は、米系(Whirlpool社)や中国国営系の会社(宝山製鉄所)を訪問したので、かなり印象が違う。ダイナミックでスピーディだ。 董事長によると、中国で勝つには、スピードが一番重要で、あとは戦略が大切だという。広大な地域での戦いなので、戦略的に重要な要衝がある。そこでいかにしてNo.1になるかが肝要であるという。

グロービス・マネジメント・スクールでも中国関係のケースを早い時点で書き始めたいと思う。

3)そして、最後は、良い仲間に恵まれたという点だ。全く違う分野の経営者が集っているので、皆視点が違って面白い。しかも現地に工場を持っている方々も多い。その工場や関係先を訪問できたのが何よりも面白かった。皆、率直に失敗や成功、苦労したことなどを経営者の視点で語ってくれる。何よりも得がたい体験であった。

往復の飛行機の中でも普段なかなか会えない友達と深く話ができたことが嬉しかった。こういう「視察ツアー」というのは、良いものだと思った。次は、ロシアに行こうかという話が出ている。さて、ウラジオストック、ハバロフスクか、それともモスクワか。いずれにせよ、良い仲間との「視察ツアー」であれば、休みを取って私費ででも再度行きたいと思った。


山小屋にて

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    受信 : 2005年7月28日 (木) 20時46分

コメント(2)

  • 今回のコラム、興味深く拝読させていただきました。

    学生時代に上海の留学生のご実家に泊めていただき、そこを拠点に上海・杭州・蘇州を旅したときのことを懐かしく思い出しました。

    堀さんも中国が好きになってきたとのことでしたが、私は個人旅行を通じて中国が大変好きになりました。旅行は今から10年前のことで、まだ上海のテレビ塔に色が塗られていなかったときのことでした。筆談と片言の中国語を駆使して、現地人に紛れてバックパックで、旅をしました。

    お世話になった、ご実家ではこれでもかとご馳走になり、(客が食べ残すまで料理を出すと言う中国の習慣を知らずに、「出されたものはすべて食べるべし」との日本のポリシーで食べていったので、翌日の胃もたれがひどく、大変でした。)
    杭州では、美しい西湖を眺め、地元の名物料理を食べることが出来ました。

    蘇州では、完全に自分だけで旅をしたので、宿を取ったり、次の目的地までの切符を取るだけでも「没有(ありません)」の連発で大変苦労しましたが、その都度出会った現地の方に助けてもらいました。その中には友達になって、今でも交流がある方もいます。
    (はじめてあった方でも、その場でもすぐに友達になれるところが、中国のよいところだと思いました。)

    私の印象では、中国では、コミュニティーの輪の中の一員として扱われれば、とても丁重に扱われるけれど、そうでないととても住みにくいところ。そしてそこに入っていくのには、(片言でもよいので)言葉と文化の理解が不可欠、と感じました。

    また、当時の中国では、いい人とそうでない人に大きなばらつきがあって、いい人は極端にいいし、親切でない人は、まるで相手にしてくれない感じでした。(これは私が日本人だからと言うことではなく、他の中国人に対してもそうでした。)公衆マナーに関しても、列に並ばない人も多くいましたが、そんな中に、礼節のある立派な方も居たりと、相当な、ばらつき感を覚えました。

    さて、堀さんの移動のスケジュールを見ると、全部同じホテルでびっくりしました。蘇州と上海だけならバスでの日帰りが可能かもしれませんが、杭州は省またがりで距離が遠く、さすがに厳しかったことと思います。マグネットの碁盤を持っていかれて正解でしたね。

    忙しい視察ツアーだったので、ビジネス中心だったかもしれませんが、堀さんが、「囲棋」が打てるということで、中国の方の間で話題になったりしませんでしたか?

    1994年当時、北京に滞在していたときには、「日本人で知っている名前は?」と現地で知り合いになった同じ年の友人にきいたら、山口百恵(当時、「赤いシリーズ」が中国で大人気だったための次に「小林光一」と来たくらいだったので、中国の囲碁熱も相当なものだと思いました。
    (当時は囲碁はルールも良く知りませんでしたが。)

    面倒なビザも不要になったことですし、発展がめざましい上海、美しい杭州、そして美しい庭園と「傾城」の多い蘇州を再び旅してみたい気持ちになりました。

    投稿者:

  • コメントありがとうございます。m(__)m ○○さんは、中国語も喋るのですか。すごいですね。
    今後ともよろしくお願いします。

    投稿者: 堀義人

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