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2004年6月29日 (火)

組織人 BoA 型ビジネスモデル

本日、ソウルで歌手のBoA(ボア)と会った。

BoAと言えば、若者に人気の韓国人女性シンガーである。BoAは、ダンサブルな音楽をリズム良く歌い、日本で人気が急上昇したが、何とまだ17歳である。場所は、ソウルの新羅(シーラ)ホテル。世界経済フォーラム(WEF)主催のニューアジアンリーダー(NAL)のレセプションパーティの会場だ。僕らエグゼクティブ・コミッティーが主催したレセプションパーティに、韓国人政治家とともに、スペシャルゲストとしてBoAを招聘したのである。

なぜ、BoAが来てくれたかというと、彼女のプロデューサーである、リー・スーモン氏が、NALの仲間だからだ。彼は、昨年のソウル、シンガポール、北京、ランカウイ島と過去4回も参加している。そのスーモン氏が、BoAを連れて来てくれたのである。

ホテルの中庭で開催されたカクテルパーティの最中に、BoAが登場した。白いジャケットをブカブカに着こなし、茶色くストレートの長い髪が印象的だ。彼女は、少し照れくさそうにしていた。思ったよりも小さく、可愛らしい少女、という感じだ。当然、参加者は記念撮影をすることになる。韓国人の政治家も大喜びだ。僕も何枚か一緒に写真を撮ってもらった。

その後、会場を屋内に移動し、着席形式のディナーが始まった。僕はすかさずBoAの横に座り、彼女に日本語で喋りかけた。笑顔が可愛く、チャーミングだ。人気があるのもよくわかる。ディナー冒頭に行われたスピーチの合間に、彼女はスーモン氏に連れられ退席した。

興味があったので、戻ってきたスーモン氏に、例によって続けざまに質問をさせてもらった。「そもそもどこで見つけたの?なぜBoAと名前を付けたの?どうやって日本に進出させたの?そして今後のビジョンは?」などである。
彼は、嫌な顔もせずに、隠すこともなく、教えてくれた。

「あるダンスコンテストで、小学校5年生だったBoAを、我が社のスカウトが見つけた。そのコンテストに参加していた兄の踊りに合わせ、会場の下で踊っていたのが妹のBoAで、その姿がスカウトの目に留まったのだ」と。
そして、事務所に連れてきた際にスーモン氏が偶然通りがかり、歌を歌わせたら、いい声をしていたし、踊りも抜群であった。そこで、BoAをプロデュースすることにしたそうだ。

先ずは、長期的計画に従い育成を始めた。彼女を国際的なスターに育て上げるべく、インターナショナルスクールに通わせて、英語を学ばせた。そして日本に2年間行かせ、日本語も学ばせた。日本的踊り方・歌い方と、欧米的踊り方・歌い方をマスターさせた。名前は、本名であるクオン・ボアの名前だけ使い、BoAと表記した。「Bank of Americaっぽくていいでしょう?」と問い掛けられた。

そして続けた。「日本でデビューさせるには、ダンスミュージックで定評があるエイベックスへのアプローチが必要だ。さまざまなツテを使い、会長にアプローチしたが、なかなか会う事が出来なかった。最終的には、なんとか会っていただける事になったが、30分しか時間をもらえなかった。しかも当日は、嫌々会ってもらっている感じで、20分経過しても、時計をチラチラ見ていて、反応が鈍い。そこで、破れかぶれになり、思い切って、今後のアジアにおけるミュージックシーンのビジョンを語った。そうしたら、会長が身を乗り出して聞いてくれた。どの言葉が良かったのかわからなかったが、最後には、『明日、再度会おう』と言ってくれた。翌日、帰国する予定を変更し、ディナーを共にした。その後、会長を韓国にお連れして、とんとん拍子に話が進んだ」。

「BoAは、日本で大成功した。そして、今後、先ずは韓国デビューさせる。本日が韓国デビューの日で、韓国語の曲を用意した。日本で成功したら韓国では簡単である。そして、次は中国に行く。日本と韓国でNo.1になり、中国でも人気が出れば、アジアNo.1になる。そうなると、ハリウッドを含め、世界への道が開けてくる。」

スーモン氏は、国立ソウル大学出身のエリートでありながらも、歌手になった異色の人物だ。年齢は僕と同じ位で、韓国では有名なトップスターだ。英語も流暢だ、さすがに戦略的にものごとを考えている。帰り際に、BoAのサイン入りCDとポスターをプレゼントしてもらった。(^^)

会場からの帰り、ふと、昨日訪問した、Zionex社の取締役会の様子を思い出した。Zionex社は、2000年に韓国の若者3人によって創られたサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェアのベンチャー企業だ。創業者3人共、MIT(マサチューセッツ工科大学)の博士課程で学んでおり、そこで出会い、ベンチャーを起こすことにした。Zionex社を創業してまもない頃、僕は彼らに出会った。何度か話をしているうちに可能性を感じたので、投資を検討し始めた。当初はファンドから投資しようと思っていたが、アラン・パトリコフ氏に、「当面は日本にフォーカスするように」と言われたので、仕方なく個人のポケットマネーで出資することにした。2000年末のことである。

僕はその後、年に2-3回必ず韓国に行き、Zionex社の取締役会に参加した。方向性を示したり、時には叱咤激励した。僕の投資後、Zionex社は、順調に業績を伸ばした。毎年、売上を倍倍に伸ばし、昨年は利益も計上した。顧客もサムスン電子やLGなど、韓国の大手企業にも食い込んできた。今年も更に売上を倍増する勢いの会社だ。まさに、ワークスアプリケーションズ社の成長と同様の軌跡を歩んでいる。(※参照コラム「ワークスアプリケーションズのIPO」)
ただ、韓国の場合、マーケット規模も限られている。しかも、クライアントは、自国のソフトウェアベンチャーのことをあまり信用してない。どちらかというと米国系メーカーのことを信用しがちである。善戦してはいるが、どうしても発想を変える必要があった。僕は昨日、彼らに強い口調で述べた。

「韓国内だけにとどまっているような会社に投資をした気はない。せっかくグローバルな発想ができる経営陣がいるのだから、頭を切替え、日本に進出してはどうか。今までの創業ステージは成功裏に終わった。これからはギアチェンジして、アジアの次元で物事を考える必要がある。先ずは、経営陣の株式所有比率など気にせず、思い切って資金を調達し、人も採用し、日本に出てこないか。その際には、僕もお手伝いできる。また、公開する市場も韓国のコスダックではなく、日本のジャスダックやマザーズを狙ってはどうか。そして、日本、中国、韓国の3国にマーケットを広げる努力をするべきではないか」。

「次回の取締役会は、日本でやろう。先ずは、経営陣がじっくりと座って3-5年後のビジョンを描いてみてくれ。そのビジョンと計画をもとに、日本で意見交換しよう」、と締めくくった。

本日のBoAの話を聞き、まさに『BoA型ビジネスモデル』とも言えると思った。韓国の一番の問題点は、自国の市場が小さいことである。日本の1/3以下の人口で、1/3以下の1人当りGDPである。従い、市場規模は、約1/10になる。これでは、いくら技術やコンテンツが良くても、大きな会社は作れない。従い、海外に進出する必要がある。だが、なかなか成功しない。どうしてもグローバルに成りきれないのである。そこで、日本の強いパートナーと韓国の良いコンテンツ(人材)とプロデューサーが必要となる。つまり、avex、BoA、スーモン氏の組み合わせが必要なのである。

Zionex社は、いい会社である。従い、コンテンツはいい。僕がスーモン氏の役割を果たすとなると、残るは日本側のパートナーである。どこが良いだろうか、と考えてみた。果たしてBoA型ビジネスモデルは、成功するのだろうか。また、韓国の歌手や企業ばかりでなく、日本の歌手やベンチャー企業もグローバルに展開するビジョンを持ちえるのだろうか。今は、日本、韓国、中国の大競争時代に入った。もう国境など無くなりつつある。その時代に合った戦略やビジネスモデルが必要になるのであろう。

CDプレイヤーからは、BoAのダンサブルな音楽が聞こえてくる。このCDで、BoAは日本語でも韓国語でもなく、英語で歌っている。
040629.jpg

音楽をBoAからモーツァルトに切替え、寝る準備をすることにした。
ソウルの中心に位置する南山(ナムサン)に聳え立つホテルの部屋からは、漢江(ハンガン)にかけての町並みの夜景を見下すことができた。明日から、会議のメインプログラムがスタートする。様々な会合で積極的に発言しよう。韓国の大統領にも再会できるだろうし、多くの方々とネットワークを広げたい。そう思いながら、フカフカのベッドの中に体を滑り込ませることとした。

ソウルのホテルにて

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コメント(4)

  • 韓国は私が初めて訪問した(83年)外国であり、自転車の旅でした。

    下関からフェリーで渡航し、プサンからソウルまで約2週間。初めての外国で、なにより印象に残ったのは、韓国人のパワフルさでした。もうあれから20年以上たちますが、いまでも最も印象深い旅の一つです。顔は日本人と変わらないのに、やたらパワフルで短気でかざらない彼ら。
    それは、有史以来の中国との関係や、20世紀以降に絞っても、日韓併合、朝鮮戦争、戦後の復興、など内外からのパワーに翻弄され、激動の歴史がはぐくんだものだと感じずにはいられませんでした。
    そして、避けて通れないのは、日本人に対する特別な感情。
    翌84年には教科書問題が燃え盛ったのです。

    しかし、その後の急激な発展は、堀さんがおっしゃるように、韓国人自身が国内だけでは大きくなれないことを痛切に感じ、外に顔をむけることなしには起こりえなかったと思います。

    そして、ここ数年の韓国ブーム。焼肉やエステを楽しむ激安ツアーの大盛況、「シュリ」を初めとする映画の大ヒット、ワールドカップの共同開催。BoAの活躍、そして「冬のソナタ」の異常な盛り上がり。
    韓国側も日本文化への規制を緩め、日韓の溝は、大きく縮まったような気がします。

    やはり、経済が世界の枠組みや、ついには個人の心のわだかまりさえも変えてゆけることを証明していますよね。

    何年か後には日中韓(ロ朝?)の東アジアFTAや、統一通貨など、想像を絶する変化が起きて、とてつもないビジネスが生まれているかもしれません。

    そのとき私は、自転車に乗って投資先を探す、冒険投資家のジム・ロジャーズのような生き方ができれば、最高です。

    投稿者:

  • コメントありがとうございます。とても楽しい内容ですね。今後ともよろしくお願いします。m(__)m

    投稿者: 堀義人

  • いつも堀様の感性のすばらしさ、そして演繹的な発想のすばらしさには、本当に圧倒されます。

    私の勤める会社自体にも商社でありながらメーカーの子会社でもあり「商社」としての経営手法の「殻」を破れず、根本的な問題として、「商社」としての経営発想ではメーカーの経営は出来ない。とトップに対して何度も進言をしておりますが、私自身の能力の低さから周囲の人材を動かせるだけのオーラが無いと言う状況がございます。

    私は今の会社に転職をして、いくつかのタスクを与えられました。 1. 従業員に東証1部上場会社としての自覚を啓蒙する。
    2. 子会社の持つ部門技術の「権利化」をする。
    3. 「商社」としての「知的財産のあり方」の啓蒙する。
    4. 従業員に東証1部上場会社としての自信を、「法律」というフィルターを通じて啓蒙をする。

    それは、極めて一般的なことであるという認識から(前職では「あたりまえの事」にあたることが多かったので)決して難しくないことであると思い、ここ半年タスクの遂行をしてきたのですが、やはり個々の会社に「文化」が存在するのは当然です。

    弊社は創業60年間余の間、外様を受け入ない全てが「自前主義」という文化があり、外からの「改革」は「エイリアン」という閉鎖的な環境からか、私の仕事は「社内の反対勢力との戦い」という本当に無駄で馬鹿げたことが現実に起こっているという状況があります。(「戦い」という言葉を使わなくてはいけないということ自体、本当に異常事態だと考えております。)

    私の勝手な思い込みかもしれませんが、おそらく日本の会社では、多かれ少なかれ、私の勤務する会社と同じ状況にあるのではないかと思います。
    IR活動として「グローバリゼーション」を謳いながら社内は非常に閉鎖的な、従業員が自分の言いたいことも言えない状況にある「グローバリゼーション」どころか「社内の健全化」も出来ない会社の方が圧倒的に多いのではないかと思います。

    私が一番伝えたかったことは、堀様がSCMの会社に「世界展開」を指示されたこと。これは、日本の殆んどの会社に必要なのではないか、と私は今回のコラムを読ませていただいて強く感じました。
    今回のコラムのお陰で自分に「問題提起」をすることができました。私は日本の企業は圧倒的に私の指摘するような会社の方がメジャーだと認識しているのですが、堀様はどのようにお考えでしょうか。

    投稿者:

  • コメントありがとうございます。僕もそう思います。ポジティブに考えると、変革のチャンスはいっぱいある、ということですね。(^^)明るく、楽しく、前向きに進めたいですね。(^^)

    投稿者: 堀義人

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