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2004年10月20日 (水)

組織人 3週間の世界一周出張(その2-カンヌでのスピーチ)

10月10日の日曜日の朝、成田空港に向かった。体育の日で3連休のど真中であ る。本来は4人の子供達と遊ぶ家族サービスの日のはずなのだが、コンファレンスの日程は変えてもらえない。連休初日に行われる保育園の運動会(体育館で午前中のみ実施)に参加してから、出張にでかけることになった。

前日は、58年ぶりの台風が関東を直撃していた。グロービス・マネジメント・スクール(GMS)でも、東京では創業以来初めて、全面的にクラスを閉じることになった。それだけ強い台風であった。その台風の影響もあり、成田空港はごったがえしていた。僕も出張が多いが、これほどの混雑は見たことがない。無理もない。三連休初日のフライトが殆どキャンセルとなり、その人々が何とか飛ぼうとして交渉しているのである。そして皆いら立っていた。ただでさえ混み合うのに、ダブルにそのインパクトがある。

やっとのことで飛行機に乗り、2時間遅れでパリに向けて飛び立った。そして現地時間の夕方、パリに着いた。幸いパリでは乗り継ぎがスムーズにいき、エールフランスに乗り換えて、海に面したニース・コートダジュール空港へ到着した。そして送迎の車でホテルへと向かった。あたりはもう暗かった。

カンヌ映画祭でセレブリティたちが泊まる海沿いの高級ホテルの1つにチェックインした。 翌朝は、時差ぼけもあり、早く目が醒めた。目の前にあるビーチサイドのプロムナードを散歩することにした。地中海は思ったより波があった。10月の早朝だというのに、陽射しが明るい。黄色っぽい建物に反射して生まれる光の色は独特である。気持ちがいいので、ヨットハーバーまで散歩した。見たことがないほど大きなクルーザーが停泊していた。あとで聞いた話だが、80%ぐらいはほとんど海に出ないらしい。お金持ちの人たちが道楽で購入し、自己満足のために置いているのであろうか。しかし、大きい。

歩きながら記憶を辿ってみた。南仏のこの陽射しに触れるのは何と14年前まで遡ることになる。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の学生だった頃、夏休みに6週間のバッ クパックの1人旅に出て、南仏を通り過ぎたことがあった。気ままな1人旅だったので、イタリアのミラノからジェノバ経由で、バルセロナ行きの急行に飛び乗った。その電窓から景色を眺め、コードダジュールの中で降りたいと思うところがあれば、降りようと決めていた。モナコを過ぎ、ニース、カンヌと電車が停まったが、どこも降りてみたいという気分にはならず、結局プロバンス地方のビーチでまで行き、夏を楽しんだ。

そう考えると、コートダジュールには初めて来たことになる。今回は、バックパックではなくて、欧米のテクノロジーとベンチャーキャピタル関係のコンファレンスへスピーカーとして参加するために来た。当然スーツとネクタイである。レジストレーションを済ませてから、会議に参加した。何名か興味深いスピーカーがいた。日本からは、NTTドコモの立川敬二会長がスピーカーとして参加されていた。

僕の出番は、15:15からのGlobal VC Outlookと呼ばれるセッションだ。パネラーは、モビウス・ベンチャーキャピタル(旧:ソフトバンクベンチャーキャピタル)の創業者のゲリー・リシェル氏、トライデント・キャピタルの創業者ドナルド・ディクソン氏、パーテック・インターナショナルの創業者のヴィンセント・ウォーム氏、ベンチマーク・キャピタルのパートナーであるジョージ・コヘイロ氏と僕という布陣であった。そして、コーディネーターが、ETREの主催者のアレックス・ビーウィー氏である。

このセッションは、関心が高いようだ。会場に入りきれないほどの人が集まっていた。半数以上が欧米のベンチャーキャピタルの関係者である。提携先でもあるエイパックス社からも3名ほど来ていた。ひな壇に座り、満員の会場を見渡しながら、こう思った。『この会場の中で、グロービスのことを知っている人は10%もいないだろうなぁ。この人たちは、欧米VC業界のオピニオンリーダーだから、グロービスの存在を強烈に示してみたい。遠慮しないで、思いっきり伝えよう』と。

ディスカッションが始まった。各自の簡単な自己紹介後、アレックス氏が鋭い質問をしてきた。先ずは、ベンチマーク・キャピタルに対して、「なぜ欧米・イスラ エルに拠点があるのに、アジアに無いんだ」、と。彼は「アジアはまだ何も起っていないからだ」という趣旨の発言をしたので、僕は颯爽と手を上げて反論した。

「その考え方は間違っている。通信インフラを考えても、ブロードバンドの普及率そして価格、モバイルインターネットの普及率、ファイバートゥザホーム(FTTH)の導入、どれをとっても、日本が進んでいる。将来を背負っていく有望分野においても、ナノテク、燃料電池、ロボットなど日本が優位に進んでいる分野が多い。日本のこの流れに、韓国、中国も追随してきている。そこに今、ベンチャーキャピタルが根付きはじめている。ここにいるパネラーの皆様の会社が日本に拠点が無いのは、ショッキングなことである」という趣旨であった。

その後も、何回か発言の機会があった。会場が一番ビックリしていたのが、コーディネーターのアレックス氏が、僕のことを持ち上げてくれて、グロービスのビジネスモデルを説明してくれたときのことだ。僕は、彼に紹介される形で、グロービスのモデルを説明した。

「グロービスの特徴は、ビジネススクールとベンチャーキャピタルを双方持っていることだ。ビジネススクールを持つことによって、ネットワークは作れるし、経営陣も育成できる。受講生の中からベンチャーを興すケースも考えられる。一方、ベンチャー起業家が一番苦労するのは、カネではなくて、ヒトとチエだ。ビジネススクールを持っていることにより、いい人材といいチエを持ったネットワークを投資先企業に提供できるのだ。」

「このビジネスモデルは、世界中どこを探しても見当らない。ただ、日本に対する関心があまり高くないから、会場の皆さんはあまりグロービスのことを知らないかもしれない。そういった意味では、この機会にグロービスのことを紹介してくれたアレックス氏に感謝をしたい」、と。そして、セッションは暫くして閉幕となった。

アレックス氏が日本に来たときにキャンパスを案内し、グロービスのビジネスモデルを とうとうと説明したことが功を奏したのだと思う。終わった後の反応は、非常に良かった。大体、終わった後の反応でよかったか悪かったかはわかるものだ。今回は、特に良かった。その後のコンファレンスでは、すれ違う人にも呼び止められたり、エレベー ターの中でも「良かったよ」と言われたり、街中を散歩していても声をかけられた。 とても充実感があった。

翌日、コンファレンスに参加した。実に天気がいい。空は青く、陽射しの反射が黄金のように光っていた。気持ちが良かったので、思わずプロムナードを端から端まで走り抜けた。ふと見ると、10月なのに海で泳いでいる人が見えた。ちょっと寒そうだったけど、勇気を出してビーチに降り立ち水着になった。

「14年ぶりの地中海だ。また14年間も来れないかもしれないし、思いっきり泳いじゃえ〜」と思い、海の中に入った。そして、体が暖まるまで、ひたすら泳ぎ続けた。冷たいけど、実に(超?)気持ちいい。

コンファレンスは、昨晩ガラパーティを終え、ほぼ全日程を終了した。時差ぼけもあ り、また朝早く起きてしまったので、このコラムを書いている。
もう外は明るい。今からパッキングをして、オスロに向かうことになる。南仏のカンヌから北欧のオスロへ。かなり寒いのかな〜と心配しながら、パソコンを閉じることにした。

2004年10月12日
南仏・カンヌにて
堀義人

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