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2005年3月30日 (水)

個人 友達を大切にする

四国にいた母方の祖父から、よく言われた言葉がある。「勉強をしなくてもいいから、友達は大切にしろよ。そして、ひとさまに迷惑をかけるなよ」、である。

僕が小さい頃から19歳の時に祖父が他界するまでの間、四国に行くたび、この言葉を祖父から聞かされ続けた。勉強が一番大切であると、世間では当たり前のように言われる中で、勉強を否定して、それ以上に大切なものとしてその二点を指摘されたのである。「友達を大切にする」「人に迷惑をかけない」、この二つのメッセージは、僕の意識の中に深く刻み込まれることになった。

春めいた陽気となった3月中旬のある日に海外から友達が訪ねてきてくれた。その友達とは、IT系ベンチャー企業やベンチャーキャピタル(VC)などが集う会合を主催している、Alex Vieux氏である。3、4年前に僕と彼とをを引き合わせてくれたのが、中学・高校を通しての悪友である小口日出彦氏である。小口氏は、現在日経BP社に勤めていて「日経E-Biz」や「日経ベンチャー」の編集長を歴任していたので、シリコンバレー関係の人脈も豊富だ。そして彼の紹介でAlexに会ったのだ。

「面白いからETRE(European Technology Roundtable Exhibitiion)に参加してみたら」、と小口氏に言われて、彼の主催する会合に参加してみた。最初は、2002年の秋、スペインのセビリアでのETREに参加した。その後米国のシアトル(参照コラム「シアトルで思った事」)、中国の上海(参照コラム「二泊三日の香港・上海出張」)、フランスのカンヌ(参照コラム:「3週間の世界一周出張(その2-カンヌでのスピーチ)」)など様々な会合に参加してきた。一方、Alexが来日のたびにも会っている。日本だけでも既に4、5回会っているのだ。今や非常に仲がいい友達となっていた。「レッド・へリング」というテクノロジー系の雑誌社が一昨年経営破綻し、Alexがその会社を買うことになったときも、わざわざ米国から電話をくれて、「一緒にやろうよ」、と誘ってくれたのである。

先日、そのAlexが久し振りに、グロービスの東京オフィスに訪ねてきてくれたのだ。短い時間ではあったが、再開を喜び、彼の来日の要件を聞き、僕の友達を何人か紹介することにした。どうやら日本でもレッド・へリングのコンファレンスが開催されるようである。「是非成功して欲しい。僕も可能な限りお手伝いするよ」、と伝えて別れを告げた。Alexは、ちょっといい加減なところがあるが、とても気持ちがいい友達なのである。

Alex来訪の後、文部科学省に向かった。文部科学省の政務官として就任している、下村博文議員にお会いするためである。実は下村先生とのお付き合いは、不思議な縁がありかなり長い。彼の記憶では、僕が住友商事の社員だったころまで遡り、僕の記憶では、下村先生がまだ都議の議員であった頃まで遡るのである。お互い、20代、30代という計算になる。その後も「政治家」と「起業家」という、違う立場であったが、何度かお会いする機会が続いた。僕が自民党に招待されてスピーチをしたのは今まで二回しかないのだが、その二回とも会場で下村先生のお姿を拝見することができた。更に、教育関係の特区に関するシンポジウムが自民党で開催された時には 、下村先生がスピーカーとして登壇しており、僕は聴衆として参加させてもらっていた。

今回、その下村先生に会いに文科省を訪問したのだ。目的は、ただ一つ。それは、下村先生に、グロービスが特区を活用して、株式会社のまま大学院化する申請をすることを報告しにきたのである。先生に報告せずに申請すると、礼を失すると思い、訪問することにしたのだ。先生とは何度かお会いしているのだが、こうしてじっくりとお話をしたのは今回がはじめてであった。会談の冒頭では、僕らが初めて出会ったころの昔話に花が咲いた。年齢は多少先生の方が上であるが、友達のように親しくさせてもらっている。その後、株式会社大学院化の話をして、アドバイスを頂いた。とても気持ちが良いミーティングであった。

その夕方には、経済同友会の「次代を創る会」の会合があった。この会の委員長は、松井証券の松井道夫社長である。この会合は、18:30から21:00まで開かれる。常に直球勝負で気持ちの良い論調を繰り広げる松井社長が司会進行役である。そして政治家、官僚、財界の若手が集い、今後の日本に関して大いに議論しようという段取りだ。名簿を見て驚いたのは、僕がグロービスを創業する以前(つまり12年以上も前)から親しくしていたメンバーが、徐々に政界・官界・財界で重要なポジションを占めるようになってきていた、ということであった。

政治家でいえば、林芳正議員、浅尾慶一郎議員、河野太郎議員、西村やすとし議員などは、彼らが政治家を志す前からの友達である。更に、前原誠司議員、茂木敏充議員などもかなり前から親しくさせてもらっている。財界側は、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の後輩である楽天の三木谷浩史社長(当時銀行マン)や、お互いがまだ20代の頃に社会人の勉強会で出会ったサンヨー食品の井田純一郎社長(当時銀行マン)、KFIの木村剛氏(当時日銀行員)や村上ファンドの村上世彰氏(当時官僚)を筆頭に、親しい方々が大勢名簿に名を連ねていた。これらのメンバーの中で当日都合がつく方が集まり、議論をしたのである。

会場には、楕円形上に椅子が配置されており、財界側と政治家・官僚側が向かい合って座る格好となっている。僕らの間にはテーブルなどの障害物は置かずに、ひざを突き合わせて議論ができる設定になっていた。

目の前には、浅尾さん、林さん、西村さんなどの親しい友達が座っていた。双方が政界・財界の立場の一員として、経済同友会の場で意見交換しているのである。テーマは、「財政破綻がなされている中でどうやって公務員の人件費の削減などを実行しながら、改革を断行していくか」、というものであった。皆、日本の将来を憂えている同志である。事実、彼らのうち何人かと一緒に定期的に勉強会を実施している。彼らとは、これから一緒に日本を引っ張っていくことになるのであろう。「日本の改革を待ったなしで進めなければならない。自分に何が出来るであろうか」、そう考えながら、夜9時に会場を出た。

しかし、そこで終わり。という訳ではなかった。会場の外で談笑していた方々が自然発生的に声を掛け合い、有志が集い、二次会に向かった。二次会の会場でも新たな友達を紹介してもらい、輪が広がっていった。そこから僕も、友達を呼び出し、11時過ぎに、三次会へ。そして午前0時半過ぎに四次会に向かった。四次会の会場を出たときには、深夜の2時を既に過ぎていた。

どうやら、「ひとに迷惑をかけない」という点に関しては、失格かもしれないが、「友達を大切にする」という点では、ある程度の及第点を祖父からはもらえるかもしれない、と思えていた。確かに書き出したらきりが無い程多くの友達に支えてもらって、僕はここまでこれたのである。ありがたいことである。

考えてみれば、このコラムを書いているこの日にも、友達の家で夕食をご馳走になってきたのである。願わくば、今までを支えてきてくれた友達と、新たに出会うであろう将来の友達とも含めて、多くの友達と、明るく、楽しく、前向きに人生を歩めたら、とそう思っている。

2005年3月19日
山小屋にて
堀義人

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コメント(1)

  • 現在アメリカで博士研究員として生物医学(バイオ)関係の研究に従事しているものです。6年間の留学を終えて、今夏日本で自分の研究室を構えることになりました。

    私は研究者として、「日本を世界中から優秀な研究者が集まってくるような魅力的な国にすること」を「吾人の任務」とし、その具体的な短期・長期戦略構築に想いをめぐらせています。

    一部の研究者(学者)の日本を思う気持ちは政界・財界人にも負けないと思っているのですが、「次代を創る会」がいわゆる文系の方で占められてしまうのは、悲しい現実ですね。そのような比率の偏ったメンバーで、公務員(=学者)の人件費削減を何の迷いも無く前提においた上で、日本改革を議論されているのも不安な感じです。それは単に、自分の生活が多少懸かっているからかもしれませんが(笑)。

    しかし、ビジネス感覚というか「社会感覚」のとれた、皆さんと同世代の研究者がほとんどいないのも、その「仲間はずれ」の要因でしょうね。共通言語が存在しないと議論にはなりませんからね。

    私は将来、そんな部分の橋渡し役になれたらと思っています。まずは研究者として一日でも早く大成功を納め、この分野での地位を確立することを目指しています。その後少しずつそちらの皆様と交流しながら共通言語を学ぶつもりでいます。その際には、グロービスの基礎講座にお世話になる予定でいますので、よろしくお願い致します。

    投稿者: 相澤

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