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2005年7月27日 (水)

組織人 シリコンバレーでの起業家とベンチャーキャピタルの集い(その2)

二日目の夜が明けた。時差ボケで早く起きてしまったので、メールチェックをしながらブログ用のコラムを書く。
朝7時に提携先のエイパックス社のパートナーとホテルで朝食を共にして、その後会場まで送ってもらう。

朝8時に会場につき、昨日同様、最初からセッションに参加した。これほど真面目に最初から最後まで参加したカンファレンスはかつて無かった。つまらなくても、頭が疲れても、最後までキチンと聞いていこうと思っていた。このカンファレンスに参加するためだけにシリコンバレーに来たので、言い訳はできない。しっかりと学んで行こうと思った。

今回のカンファレンスでは、全てのセッションが一つの会場で開催されていたので、全てのセッションに参加できた。ただ、同時開催さているイベントがあった。「CEOピッチ」と呼ばれる起業家によるプレゼンテーションで、別の小さな会場で開催されていた。中国に関するセッションの時に、ある程度内容がわかっていたので、メイン会場を抜け出し、CEOピッチを覗いてみた。小さな会場いっぱいに人がいて、意外に人気があるのには、ビックリした。

日本で行う起業家プレゼンテーションに比べて、かなり充実している。ある程度の売り上げもある エクスパンション(成長)ステージの会社のCEOが出てきていた。ベンチャーキャピタリストと思われる人々が熱心に聞いている。考えてみると、起業家にとってはこういった場所でプレゼンテーションができるなんて格好の機会である。

米国では、数多くの会社が立ち上がる。 認知されていないと言うことは、存在しないと同じである。だからこそ、米国の起業家は、PRなどのコミュニケーションに熱心である。新聞や雑誌さらにはブログなど、可能な限りに目立とうとする。ある程度知られていて、十分にお金があったとしても、いずれは売却や上場(IPO)しなれければならない。そのためには、いずれにせよ知名度が必要なのだ 。このCEOピッチに参加している起業家もほとんどがベンチャーキャピタル(VC)の投資を受けている実績がある会社だ。それでも、「予選会」を経て、晴れてこの機会を獲得したのである。

とは言っても、このCEOピッチは、結構シビアである。一社当たり12分しかない。プレゼンテーションの時間は、たったの5分。5分を越えた瞬間にすぐにストップされる。その後、「審判」3人から一人づつ、質問を受ける。時間があれば会場からも質問を受ける。11分30秒経過した時点で、審判3人が判定をくだす。3つの項目に関して、5段階評価の札を上げるのである。その3つの項目とは、①市場性、②マーケティング、③全体の印象である。

3人の審判によって出されたその3つの指標の得点は集計されて、カンファレンスの閉会式の前に上位3位までが表彰を受けるのである。その際には、全ての参加者(含むウェブキャストの聴衆)に1分ずつ、ピッチ(プレゼンテーション)を得る機会があるのである。すると、一躍知名度が上がる仕組みになっていた。

僕は、3社のピッチに参加することができたが、結構スピーディで面白い。ある起業家は、冗談っぽく、「自分の事業に関しては自信があるので、人前では評価を受けたくない。個人的には、最もやりたくないことをやっているのだ。本音を言うと、勘弁して欲しい、という気持ちだ」と率直に話しをして、ピッチ(プレゼンテーション)を始めていた。

今回のカンファレンスに一貫して流れていたテーマは、「オープン」だと思う。セッションのタイトルの中で3つもオープンという言葉が使われていた。「オープン・メディア・ネットワーク」、「オープン・ソース」、「オープン・ウェブ」という具合にだ。ディスカッションでよく使われたコンセプトを以下の通り、3つにまとめてみる。

①オープンソース・オープンスタンダード
②オープン・コンテンツ
③オープン・メディア・レボリューション

①オープンソース・オープンスタンダードに関しては、かなり前から言われていることなので、新鮮味は無かったが、面白い視点がいくつかあったので、紹介することにする。このセッションには、米国サン・マイクロシステムズの社長兼COOのジョナサン・シュワルツ氏がプレゼンし、その後クライナー・パーキンスのベンチャーキャピタリストによるモデレーションでパネルディスカッションが行われた。

ディスカッションの流れは次の通りだ。「ソフトウェアの世界では、何とトップ3社(マイクロソフト、オラクル、SAP)が利益の75%を稼ぎ出し、トップ15社で85%を占める寡占業界である。その利益を上げている会社は、全てがソフトウェアをオープンにしていない。一方では、クライアントを中心としてソフトウェアの選定には厳しくなってきて、ソフトウェアのオープン化は進んでいる。その中で、どうやって儲けるかが課題となる」。

②オープン・コンテンツとは、何かというと、コンテンツの著作権を放棄して自由にインターネット上を行き来できるようにしてしまおう、という考え方だ。
マーク・キューバン氏というカリスマ起業家が中心になって過激に提唱していた。マークは、ブロードバンド・ドット・コムを創業後、ヤフーに6000億円近くで売却し、その後HDネットという映像コンテンツ配信会社を経営する傍らNBAプロバスケットチームを所有する、というバリバリの起業家である。このオープン・コンテンツという発想は、かなりの議論を喚起していた。シリコンバレー対ハリウッドという構図で議論が進んでいった。

③オープン・メディア・レボリューションとは、主にブログのことである。今や誰でもブログを開設するとメディアになれるのである。その時代に、どうやって儲けて、5年後・10年後に世の中はどうなってしまうのであろうか、という議論であった。

その議論の中で、常に出てきたのが、「Disruptive」という言葉である。訳すると「非連続的な革新」という意味である。HBSの教授である クレイトン・クリステンセン氏が提唱したコンセプトである。このDisruptiveという言葉がそこら中に聞こえてくる。やはり、そこにアメリカの起業家精神を感じざるを得ない。

「小さいことをやってもしょうがない。ヤフーやグーグルに続くようなでっかいことをグローバルレベルで考えよう。そのためには、非連続的な革新を起こし、既存ビジネスを陳腐化させるほどの革新的な発想が必要になる。その発想は何で、どういうイノベーションが必要なのか」、を念頭において、皆が未来指向の議論をしているのが印象的であった。

僕が、ニューインダストリー・リーダーズ・サミット(NIILS)で提唱したように、「日本の起業家よ、そこそこの成功に安住するな。でっかいことを考えて、グローバルな視点で考えて欲しい」ということである(コラム:NILSという学びの場参照 )。

そのカンファレンスで、物足りなかったことは、2つである。一つが、ワイヤレス(無線)のディスカッション。テクノロジーの中心地であるシリコンバレーにおいて、まだ携帯インターネットができない環境である。ワイヤレスは日本が圧倒的に進んでいるので、パネルの中であまり参考になるものは無かった。

もう一つが、中国ブームである。何かというと中国の話を出したがる雰囲気があるのだが、それが一般論に終始しているのだ。つまり、市場は大きい、成長しいてる、優秀な人材が科学と技術分野に多い、などであるが、具体的な話に一切ならないのだ。つまり、中国もワイヤレスに関することも、よく知らない人が、一般論で議論しているので、物足りなかった。

二日間を終えて、カンファレンスで出会った友達にホテルまで送ってもらった。久しぶりに学生に戻った気分で、学ばせてもらった。一日中、テクノロジーに関する議論を英語で聞いた。しかもパネラーは皆早口である。彼らの発する言語のスピードが、僕の頭がテクノロジータームを英語で理解する処理速度を越えていることがあり、スパークすることもあったが、何とか二日間参加し続けられた。

僕らグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)の投資も、「第二のソニー・ホンダを創る」、という気概でやり続けられたらと思う。既に、ワークスアプリケーションズというERP分野では日本No.1の会社とGDHというデジタルアニメーションではNo.1の会社をプロデュースした。双方とも今やグローバル展開に乗り出している。

どんどん日本から世界に発信させる力を持つ会社を生み出し続けたいと思う。次に続く会社が投資先企業にいくつもあり、ものすごい可能性を感じている。しかし、それだけで満足せずに、新しい産業を創出しうるような、ベンチャー企業を、50社、100社と輩出させたいと思う。そういう起業家には、ぜひグロービスのドアを叩いて欲しいものだ。

「日本の起業家よ、そこそこの成功に安住するな。でっかいことを考えて、グローバルな視点で考えて欲しい」

2005年7月21日
パロアルトのホテルにて
堀義人

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コメント(2)

  • トラックバックありがとうございます。
    以前より堀さんのブログを拝見させていただいていましたので、私のブログを見ていただけましたこと嬉しく思っております。

    「日本の起業家よ、そこそこの成功に安住するな。でっかい
    ことを考えて、グローバルな視点で考えて欲しい」
    いい言葉ですね。
    私もでっかいことを成し遂げられる起業家を目指したいと思います。

    投稿者: 石倉良和

  • 石倉さん

    コメントありがとうございます。m(__)m
    ブログを拝見しました。多国語しゃべられるとのことすごいですね。(^^)

    投稿者: 堀義人

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