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2005年12月13日 (火)

組織人 グロービス経営大学院への道のり-(2)レスター大学との提携によるMBAの発行

海外大学院との提携話は、ひょんなことがきっかけであった。

1992年にグロービスを創設後、積極的に世間にグロービスを知ってもらうべく、さまざまな手を打った。ダイレクト・メールを発送したり、パブリシティに訴えかけたり、年賀状で宣伝したり、更には僕の結婚式の来場者にグロービスのパンフレットを同封したりもした。

その広報・営業活動の一環として、能率協会が主催した「人材開発展(HRDジャパン)」に出展することを決めた。ただ、創業一年未満であった1993年初春は資本金80万円で、まさしく「アパートの一室と貸し教室からのスタート」したばかりであり展示料が出ない。そこで、新宿通りを挟んで真向かいにオフィスを構えていた、ザ・アール社の奥谷禮子社長にお願いし、展示料を折半してブースの半分ずつを使うことにした。

展示会で、ブースを半分ずつ分け合うというのは、過去にも今でも見たことがない。でも、そんなことを気にしてもいられない。開催中は連日会場の幕張メッセに通い、なりふりかまわず、パンフレットを片手に、ブースの前を通る方々に、「ビジネススクールのグロービスです。よろしくお願いします」と訴えかけた。

僕らのブースでは、ザ・アール社とグロービスが競い合うように、パンフレットを配っていたが、僕らの横のブースはいつも静かであった。そこには、英国人が静かに立っているだけだった。なにやら大学を宣伝しているようだったが、僕は、気にもかけずに、営業に専念しつづけた。

だが最終日に、お隣さんに声をかけてみることにした。たまたまランチの時間が空いていたので、二人で食事をすることにした。

よくよく話を聞いてみると、ブースで静かに立っていた彼は、英国で教育ベンチャーを立ち上げた起業家社長であった。英国で新しくベンチャーを立ち上げて、英国の教育コンテンツを世界に売る代理店的な事業を行っており、日本でも提携先を探しているというのだ。

「そんな提携先をHRDジャパンのような展示会で探すのが良いのかどうかはわから ないけど、面白い人だなぁ」と思いながら、ランチをしていたのを昨日のように思い出す。風貌は、英国の紳士というよりも、大航海時代の船長のような逞しさとやさしさを兼ね備えている人だ。

食後、僕はブースに戻り、パンフレットを配り続けた。そして彼は、いつものように静かに立ち続けていた。

その後も、彼との交友は続いた。そしてグロービスも順調に成長し、受講生からも「MBAを取得したい」、という要望も出始めていた。僕は、彼と親しい関係にあったレスター大学との提携に興味を示すに至っていた。

レスター大学は、社会系に強い100年以上の歴史を持つ英国の国立大学である。英国のビジネススクール・ランキングでもかなり高評価を得ている。通信教育で、MBAを発行しているのだが、そのカリキュラムが結構良くできているのである。

僕は、このレスター大学との提携を真剣に考え始めた。レスターが国立大学ということもあって、官僚的な組織の壁にぶつかると想定していたが、杞憂であったことがわかった。サッチャー政権による大学の独立法人化に伴い、補助金が大幅にカットされ、各大学がしっかりと経営しなければならない、というマインドを持つに至ったようだ。

レスター大学は、僕らが想定していた以上に柔軟にスピーディーに対応してくれて、とんとん拍子で話が進んだ。レスター大学側は、グロービスのカリキュラムを精査し、クラス見学もされた。教材・シラバスを吟味し、予習時間を計算した。

そして、グロービス・マネジメント・スクールの6科目をレスター大学の1年次と同等であると認定し、全ての単位をレスター大学と単位互換にして、グロービスとジョイントでMBAを発行することを決めてくれたのである。

僕らは、その当時まだ社員10名程度のベンチャー企業であって、しかも民間である。その小さな会社と英国の国立大学であるレスター大学は、アライアンスを組むことを決めてくれたのだ。

レスター大学との提携は、次の通りであった。

・グロービスの全ての科目をレスター大学と単位互換とする。
・グロービスのコア科目の6科目を修了すると、レスターの一年次を修了したとみなし、TOEFLなどのアドミッション(入学審査)を経てレスター大学に進学する。受講生は、レスター大学にて2年次と2.5年次の科目を通信教育によって学習し、MBAを授与される。

このグロービス・レスターMBA・ジョイントプログラムの仕組みは、様々な意味で画期的であった。グロービスで、1年次にケースメソッドで学び,論理思考力,問題解決能力、口頭でのプレゼンテーション能力を学ぶ。そして2年次にはレスター大学に進学し、英語でレポート、修士論文を書き英語のコミュニケーションスキルを身につけることになっていた。

グロービスでのケースとレスター大学の教材、日本語と英語双方の言語、そしてクラスディスカッションと通信教育という多様な教育手法を活用していた。しかも英国国立大学のMBA学位を日本にいながらにして修得することができるのである。

受講生の関心も高く、1996年4月に4名の第一期進学者を擁してスタートした。グロービス・レスターMBA・ジョイントプログラムは、2005年12月現在、進学者は200名を超え,卒業生は120名以上となっている。

これも最初の展示会で出会った英国の起業家との縁が始まりであった。

2005年12月12日
二番町のオフィスにて
堀義人

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    受信 : 2005年12月18日 (日) 11時48分

コメント(2)

  • いつもコラムを楽しく、また私の事業の足がかりとして読ませて頂いております。

    私も昨年秋から(ようやく1年が経過しましたが)中国・上海にて、主に日系企業に勤務するローカルスタッフ向けの経営教育事業を始めております。

    今回堀さんが今のグロービスを作っていかれる中で、
    ただ、創業一年未満であった1993年初春は資本金80万円で、まさしく「アパートの一室と貸し教室からのスタート」したばかりであり、

    というところにとても賛同できました。
    そうなんですよね。事業を始めたばかりのときって、やはり皆さん同じなんだな、と共感できました。私の会社も当初はお金もない、信用もない、はたまた場所もない、とないないづくしでしたが、今では一応にオフィスを構えることができ、お客さんからのオファーやリピートも増え、一端に資本も増えてきて、経営者としての楽しみはそうやって会社が少しずつ目に見えて成長していくことだな、と感じています。

    結局お客さんがいろいろ事業のアイデアのヒントをくれ、それを忠実にやっていくことが、事業を大きくしていくことなんだろうな、と思います。まさしくお客さまは神様ですね。

    また面白いコラムをお願いします。今後も期待しております。

    投稿者: mk

  • 今回のコラム、なんだかいいですね。堀さんがHRDでパンフレット配りをしていた事も。そして、お隣さんに声をかけのがきっかけでレスターとの提携話が繋がっていった事も。うまく表現できませんが、そういった一つ一つの積み重ねや人の縁って不思議だなぁと思い、ほのぼのしました。

    投稿者: coco

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