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2006年6月12日 (月)

個人 ボストン訪問記Ⅲ-人生の成功とは?

ハーバード経営大学院同窓会のメインイベントは、木曜日の夜の「セクション・パーティ」である。

HBSでは、「セクション」と呼ばれる、80から90人編成のクラスがある。 HBSでは一年次は全て必修科目になっていて、そのセクションの同じ90人の仲間が、一年間同じ教室の同じ席で、同じ科目を学び続けるのである。だからこそ、セクションの仲間とは、非常に親しくなるのだ。

同窓会での一番の楽しみが、このセクション単位で行われるパーティなのである。今年のセクション・パーティは、「セクション・メイト」の家で開催され た。5周年の時は、レストラン貸切で行われ、10周年の時は、ベンチャーキャピタルのパートナーとなって大成功した家で行われた。そして、今回の15周年は、ベイン・コンサルティングのパートナーとなった仲間の家で行われている。双方の家ともデカイのだ。
Photo_1

その豪邸に妻とともに到着したときには、グラスを片手に既に皆盛り上がっていた。立ち話をしている人々は、同じセクションで一年間過ごした懐かしい仲間ばかりである。それぞれ、奥様・旦那様を同伴していた。皆、15年前の在学中から同伴者と付き合っていたので、それぞれ顔見知りである。僕も妻とはHBS時代から付き合っていたので、彼女は皆のことを知っているし、皆も彼女のことを良く知っていた。

豪邸に入り、人一人一人にしっかりと挨拶をした。男性とは握手をして抱き合い、女性とは両方のほっぺたに一回づつキッスをして挨拶をした。15年の月日が経過したが、皆基本的な性格や雰囲気は変わっていない。ただ、外見は多少は変わっていた。男性は禿げて、お腹が出てきて、皺が増えている人がいて、女性も皺の数が増えている人もいた。

10周年と比較して、クラスメイトの表情が幾分丸くなった気がしていた。今回の特徴は、あまり仕事の話をしなくなってきたことであろうか。皆、それぞれの道を見つけて、それなりに満足しているから、他人が何をしているのかも気にならなくなっているようであった。5周年や10周年の時に垣間見た、競争心が旺盛なMBA生の姿から、明らかに脱皮した感じがしていた。

その一つの象徴が、フォーブスの表紙の切抜きを見せた時の反応である。僕は、近況を説明するために、フォーブスの記事を持っていったのだが、その表紙を見て、以前であれば、多少の嫉妬心を見せるところであろうが、皆が本当に心の底から喜んでくれているのがわかった。仲間に祝福されると、照れくさくなりながらも、嬉しかった。
※参照コラム:フォーブス誌アジア版の表紙を飾る!

仲間の一人、大学院時代から比べて、格段にシェイプアップしている人がいた。彼は、ライコスの創業期からの経営陣で、時価総額数千億円でライコスを売却した後で、引退してしまったのである。そして、何とトライアスロン選手に転向して、今や年齢区分別の世界大会では、2回に1度は優勝する、トップアスリートになっていたのだ。

「目標は何?」と彼に聞くと、「なるべく多くの大会で勝ちたい」と真顔で答えが返ってきた。毎日2-6時間は練習して、食事量もキチンと計算しているらしい。60%炭水化物、30%たんぱく質、10%脂肪分が良いらしい。奥様とも久しぶりに会ったが、メチャクチャ元気そうであった。聞くところによる と、今年のボストンマラソンに参加したのだと言う。二人は、良い練習環境を求めてフロリダに移住することも真剣に考えたが、最後の一歩が踏み出せなかったのだという。「子育てにはやはりボストンが一番だ」、という結論に達し、ボストンに住み続けているのだ。

女子のセクション・メイトの出席率も高かった。女子のセクション・メイトの多くは、仕事を辞めているか、パートタイムで仕事をしている人が多かった。 「仕事よりも家庭を優先したい」、ということらしい。子供が4人いる人はいたけど、5人も子供がいたのは僕らだけであった。アメリカ人にとっても5人兄弟は結構衝撃のようであった。"Five Boys!"と子供の数を言うたびに、ビックリされていた。

このセクション・メイトの輪の中にいると、15年前の光景がフラッシュバックのように思い出される。彼らとは、大学院時代に何度となくホームパーティを繰り返してきたのである。ケースに追い回される日々の合間に、仲間の家でビールやワインを飲みながら、今と同じように立ったまま喋り、騒ぎ、そして踊ったりしたものだ。

15年後に同じセクションメイトと再会し、ビールやワインを片手に談笑している。会場や雰囲気は多少違うが、同じ仲間なのである。お酒が入り、緊張感が解けると、もう気を許しあえる昔のままの仲間に戻れるのが、不思議な感覚である。

暫く気持ちのいい雰囲気に浸りながら談笑していたが、子供達が心配だったので、僕らは早めに退散することにした。翌日のガラ・パーティで再会することを約束して、雨が振る中黄色いタクシーに乗り込み、ホテルに戻った。

翌日の午後には、学年ごとのパネル・ディスカッションが開かれた。3つのテーマの中から選択して、参加する形式になっていた。3つの中で最も多くの参加者を集めたのが、「ボードにおける取締役の責任」、「次代のテクノロ ジーの流れ」というテーマではなくて、「仕事と人生のバランス」と題したものであった。

その討議では、「人生の成功とは何か?」、「自分にとって何が重要なのか?」、「幸せとは何か?」、「何を社会に残したいのか?」ということを問いかけて、同じ学年のMBA卒業生が自分達の考え方を共有する形式になっていた。

米国では、40歳前半でほぼキャリアが見えてくるのであろうか、それぞれの人生を肯定した上で、「これからは、もっとバランスのある人生を歩んでいきたい」、という論調が多かった。

たまたまその日の朝、ホテルのエレベーターで一緒になった50周年記念同窓会に参加している日本人卒業生の方と、朝食をしたときの会話を思い出した。彼の学年では、600人中250人が既に亡くなっているのだという。「同窓生を見ると、40代後半で引退してから財団かNPOで余生を送りたいと思っている人が多かった」、らしい。

彼は、半生を米国に過ごし、米系企業に働き、現在は、シリコンバレーに住んでいる。彼は、近いうちに日本に帰ろうかと思っているのだという。理由を聞くと、「米国は、老人を切り捨てる社会だから、いるのが辛いのだ」ということだ。「米国で、経済的基盤を持たずに引退すると、厳しい現実が待っていると」、と。確かに、シリコンバレーでは、60歳以上の方はあまりみかけない。その前にハッピーリタイアしたいのであろう。

20周年記念の同窓会に参加した卒業生の方に「どうだった?」と印象を聞くと、「もう既に引退している人が多かった」、という答えが返ってきた。セクションメイトは、もう余生を考える時期に移行していたのだろうか。僕 は、40代でハッピーリタイアしたいとは思わない。なぜならば、今している仕事に夢を感じ、この上なく楽しみ、社会に貢献していることに誇りを持っているからだ。

その晩のガラ・パーティで、セクションメイトに再会した。皆の表情はそれぞれ朗らかで、「この同窓会を楽しもう」、という自然体な気持ちで臨んでいるのが感じとれた。

翌朝、僕の家族8人を乗せた飛行機が、ボストンのローガン空港から、飛び立った。5周年、10周年では、「もっと頑張ろう」という刺激を受けたものだが、今回の15周年では、「もっと人生の違う側面を楽しもう」という気持ちを抱くことになった。「2011年に20周年記念同窓会でセクション・メイトと再会するときには、仲間達はどんな表情をしているのであろうか」、とふと考えてみた。

青いカリフォルニアの空が、僕らを迎えてくれた。
ベイエリアで投資家に会った後に、帰国の途に着くことにした。

2006年6月7日
パロアルトのホテルにて
堀義人

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コメント(4)

  • HBSを卒業しても、バラエティに富んだひとたちがいるのですね。いや既にHBSに入る時点でバラエティには富んでいるとも考えられるんでしょう。
    28歳の僕にはそんなにまだライフが無茶苦茶重要には考えられませんが、でもどこかで気づき始めているからこそ、この記事に吸い込まれたんだと、自分の意識に気づきました。

    またほりさんの「人生の違う側面」、記事になるときがくればいいなと思いました。

    投稿者: ざき

  • こんにちは 名古屋校の水野@銀色です。
    文中にあった、ルーザベス・モスカンター教授の「勝ち続ける
    組織・負け続ける組織」の研究の講義の話で、堀さんが挙げられたキーワード・・・「協調性」、「規律」、「地道な努力の
    文化」、「Never Give up]など・・・このへん興味あります。このほかどんなキーワードがありました?ひとつひとつの意味を自分なりに掘り下げていきたいです。

    投稿者: 水野雅之

  • すみません
    以下のコメントは、一つ前の
    ■ボストン訪問記 Ⅱ-ハーバード経営大学院の15周年記念同窓会
    に対するコメントでした

    投稿者: 水野雅之

  • こんにちは 堀義人様、本日は国際大学大学院修了式にご出席いただき、まことにありがとうございました。先日来、毎日のように堀様のブログを拝見させていただいておりましたところ、お目にかかれたらなどと儚い夢を抱いておりましたが、
    本日のご来学で握手までしていただき、非常に感激してしまいました。
    「叩けばドアは開かれん」強く望めば願いはかなうという私のポリシーが実証された日でした。
    でも、1週間分くらいの幸運を使いはたしてしまったかもしれませんね。

    投稿者: Minako-Nakazawa

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