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2006年6月 9日 (金)

個人 ボストン訪問記 Ⅱ-ハーバード経営大学院の15周年記念同窓会

翌朝5時に、長男に起こされた。時差ぼけで、早く目が覚めてしまうようである。 隣の部屋からは、赤ちゃんの声が聞こえてきた。「このまま長男と5男を部屋の中に置いておくと、他の子供を起こしてしまう」、と思い立ち、僕はスニーカーを履いて、二人を公園に連れて行くことにした。

僕らが泊まっているホテルは、チャールズ川のほとりにあるケネディ公園に隣接していた。昨晩買ったバットとフリスビーを片手にベビーカーを押しながら、川のほとりの緑の公園に向かった。芝生には、露が降りていて湿っていた。9歳になる子供に、「アメリカの公園は全部芝生なんだよ」、と教えてあげた。「どうして芝生が濡れているか知っている?」と質問した上で、露のでき方を説明した。

子供は、すぐにでも遊びたいようで、父の説明にはうわの空で、フリスビーで遊び始めた。僕は、説明もそこそこに、長男と一緒になって、フリスビーを投げてはキャッチして、楽しんだ。暫くしたら、今度はバットとボールを持ち出して野球で遊んだ。

30分程遊んだ後、川沿いを散歩することにした。川の向こうに、ハーバード経営大学院(HBS)の図書館が聳え立っていた。「パパは、あそこの大学院に行ってたんだよ」と説明して、「○○にも、できたらハーバードに来て欲しいな」、とさりげなく長男に語りかけてみた。「そのためには、英語が喋れるようになって、しっかりと勉強しなくちゃならないんだよ」、と諭した。

こういう一対一の時の子供は、素直である。「うん、分かったよ」とは、言っ てくれてはみたものの、将来どうなるかは、わからない。でも、僕として は、小学校を休ませてきたのだから、少しでもその気になってもらわないと困るのである。

川岸に鴨が50羽ほど戯れていた。僕らが近寄っても逃げる気配も無い。5男が、ベビーカーから手を伸ばしていた。鴨に語りかけているようであっ た。子供達と鴨たちが、曙の川沿いの景色に溶け込んでいて、美しい。

ホテルに戻り、家族で朝食をした。僕はその後一人で、川向こうのHBSの理事会に参加するために出かけた。理事会の合間に、投資家と連絡を取る必要があった。日本時間の本日の夜、つまり6月2日の大安の日にグロービス・キャピ タル・パートナーズ(GCP)の3号ファンドの第一次募集締め切りが行われる予定であったからだ。全ての投資家からキチンと契約書のサインが届くかが、気になっていた。

全ての投資家から予定通り契約書のサインが届いたことを、ニューヨークの法律事務所から連絡を受けたのは、夕食に出かける前であった。「ヤッ ター!」、と小躍りした。これで第一次締め切り(クロージング)が完了したことになり、グロービスとして新たな投資を実施することができるのである。

この日の家族との夕食会は、お祝い会となった。僕は、シャンパンのハーフボ トルを開けることにした。妻と義理の母と一緒に祝福した。 食事が終わった頃に雨が降り始めたので、急いでホテルに戻ることにした。

翌朝、今度は次男に起こされた。窓から外を見ると雨が上がっていた。昨日と同じように、今度は次男とともにケネディ公園に向かった。昨日と同様に、フリスビー、野球で遊んだ。子供が多いと、フェアに遊んであげなければならない。僕にとっては、同じことの繰り返しで、飽きているが、次男にとっては初めての経験だ。昨日と同じように、対岸のHBSの図書館を見ながら、「ハーバードに勉強しにきて欲しいな」、と伝えた。今日も、鴨が僕らを迎えてくれた。

本朝から、15周年記念の同窓会が始まった。HBSの同窓会は、原則木曜日の晩から日曜日の朝まで3泊4日で行われる。5周年から25周年と、50周年の同窓会が同時に開催されるのだ。この同窓会に参加するために、世界中から集まってくるのである。毎回、以下の通りの、同じ式次第で開催されている。

木曜日の晩:レセプション。
金曜日の午前:学長のスピーチがあり、その後ファカルティ・プレゼンテーシ ョンが続き、夜がクラスの仲間と食事会。
土曜日の午前中:ファカルティ・プレゼンテーション。昼間が学年ごとのパネ ル・ディスカッションである。夜が、学年単位のガラ・パーティである。
日曜日:お別れブランチ、となっている。

金曜日の朝、ファンドの募集締め切りの関係で投資家と法律事務所とに連絡を取り合った後、家族全員でHBSに向かった。子供達には、キッズプログラムが用意されているのである。異文化交流の良い機会と思い、連れていくことにした。

家族をキッズ・テントに残して、僕は「ファカルティ・プレゼンテーション」に向かった。毎回、この教授による講義が楽しみなのである。「競争戦略」の マイケル・ポーター、「イノベーションのジレンマ」のクレイトン・クリスチャンセン教授、「ベンチャーキャピタル」のジョシュ・ラーナー教授などの錚々たる教授陣が、最新の研究をジョークを交えながらプレゼンテーションしてくれるのである。これは、最高の知的贅沢である。

僕は、一番最初のセッションでは、ビル・サルモン教授の「起業家の成長」に関する講義を受けた。ニつ目がルーザベス・モスカンター教授の「勝ち続ける組織・負け続ける組織」の研究の講義を受けた。これが面白かった。「なぜ 組織やチームは勝ち続け、そして負け続けるのか。なぜ組織は負け続けいても、改革して勝つことができるのか。そして、そのために必要な要素は何か?」ということを、数多くの豊富な事例とともに、研究成果を教えてくれるのである。僕が印象に残ったキーワードは、「協調性」、「規律」、「地道な努力の文化」、「Never Give up]などである。

昼食は、テントの中で学年ごとにまとめて頂くことになっていた。僕は子供達と一緒に食事をすることにした。懐かしい顔の同級生が来るたびに立ち上がり、挨拶をした。午後の三番目のセッションでは、ウオーレン・マックファーレン教授ともう一人の教授の講義を聞いた。

僕は、優秀な教授陣の話を聞きながら、将来のグロービス経営大学院の姿を思い浮かべていた。グロービスが、ハーバードに追いつくまでには、やるべきことはいっぱいある。でも、やりがいはある。しっかりと一歩一歩確実に前進しようと思った。

そう言えば昨日の朝、長男が、「大学はハーバードかスタンフォードに行くけど、大学院はグロービスに行くよ」と言っていた。 どこまで、ハーバードやスタンフォードが難しいことも知らないであろうし、どこまでグロービスのことを知っているのかは、わからない。ただ、子供達なりに、僕が一生懸命に、グロービス経営大学院を運営していることを知っているようであった。

子供達に選ばれる大学院にするべく、父として、学長として、最善の努力をしたいと、心に誓った。


2006年6月5日
米国にて
堀義人

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