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2006年12月 8日 (金)

日本人・アジア人・地球人 インド出張 - その6:外出禁止令下のエローラ石窟群見学

外出禁止令が、午前中に一時的に解除されている隙をぬって、僕はガイドと運転手とともに、朝7時にホテルを出た。この日(12月3日)は、午前中の6時から正午までと夕方4時から6時までの間に、「外出禁止令」が一時的に解除されるのだという。外に出てしまえば何とかなるだろう、という考えで、早めに出発することにした。

街中を通ったが、特に何かが破壊された形跡も無く、普段と変わらず平穏な感じがしていた。最初に向かった目的地が、ダウラタバードのお城である。平地には砦があり、小高い山の上にはお城のようなものが見えた。

1183年から1948年まで、約800年近くにわたって活躍した、難攻不落の城だという。その間、全部で8つの帝国の居城とされ、14世紀には、一時期デリーからこの地に遷都されたことがあるほどの要衝の地である。

門から入ったが、日本のお城と同じように、ジグザグの通路があり、迷路のようにわかりにくくなっていた。門の表面には、大きなとげのような形をした円錐の鉄の塊りが突き出ており、像による門の突破ができないようになっていた。

中には、貯水池や寺院があった。当初は、ヒンズー教徒やジャイナ教徒が支配していたが、後にイスラム教の支配者が入ってきて、ジャイナ教やヒンズー教の塔や寺院を破壊した跡があった。そこにモスクが建っていた。イスラム教は、一神教ということで、他の宗教に対して寛容ではないし、偶像崇拝も許さない。イスタンブールのブルーモスクのように教会をモスクに変えたことや、アフガニスタンでのパーミヤーン石仏の破壊を思い出された。

城内には、15世紀に建てられた、チャーンド・ミナールというイスラム形式の戦勝記念塔があった。インドでは、デリーにある世界遺産のクトゥブ・ミナールに次ぐ二番目の大きさだという。坂を登り、砲台に立ってみると、デカン高原が見渡せた。市街地には、朝もやのようなものがかかっていた。よく見ると、朝もやではなく、市街地から出てくる炭の煙であることに気がついた。皆、朝御飯をつくっているのであろう。

城の奥に進むには、中の堀を渡らないとならない。当時は、皮でできた橋のみがかかっていて、すぐに切断できるようになっていたらしい。その堀には、ワニを生息させていて、侵入してきた敵が落ちれば、すぐに始末してくれるようになっていた。何やら映画でにでてきそうな話である。城を見上げるとお堀から150mの絶壁があり、猿でも登れないつくりになっていた。

橋を渡ると、次は暗闇の道である。その道をガイドのたいまつの火を頼りに歩いていく。中は、こうもりの巣である。この暗闇に入った敵に、上から熱湯を落としたり、槍でつついて撃破したらしい。僕は、こうもりの甲高い金切り声を聞きながら、黒い丸い糞らしいものを踏み付けながら登っていった。

その暗闇の階段を上がると、あとは小高いの山への長い階段道である。ガイドさんは、色々と理由をつけて行きたがらなかったので、僕は一人でひたすら登ることにした。途中でお猿さん達が迎えてくれた。頂上のお城(パレス)につくと、そこからはデカン高原の360度のパノラマ・ビューである。ここに、一時期インドを支配する王が居住していたのである。確かにこの頂上に立つと、攻めてくる敵の様子を見渡せるし、街の様子もわかる。

王様になった気分で見下ろしてみることにした。眼下には、枯れた茶色の土地が続き、ポツンポツンと緑の木が生えている程度である。近くに見える山、と言っても台地に近い塊りは、岩肌が露出していた。灌漑用の池があり、一部土地が畑作用地になっていた。あとは乾燥しているのか、薄茶色の大地が続いていた。市街地が見えた。さっきよりも煙が減っていた。もう朝食の用意も終わったようである。

頂上で、アウランガバードで学んでいる二人の学生に出会った。インドの人は、皆フレンドリーである。暫く会話を楽しみ、一緒に下山した。彼らもこれからエローラに行くらしい。彼らはバイクの二人乗りで、僕はトヨタ車に乗り、エローラ石窟寺院に向かった。

ほどなくして、エローラに着いた。全部で34の石窟群がある。アジャンタは、川沿いの渓谷に造られたが、エローラは平地に岩壁がさらけ出された台地との境のところに造られていた。その分、1つ1つの石窟が大きく、二階建て、三階建てなどの多層構造になっていた。6世紀後半に、突如としてアジャンタの掘削が止まり、エローラの掘削が始まったのだという。その理由は、よくわからないらしい。

僕の推測は、拡張に伴う移転ではないかと思う。アジャンタの人口が増えてきたので、そこで掘削を続けるよりも、新天地に拡大の可能性を求めたのではないかと思う。ま、これも起業家的発想なのだろう。

エローラは、3つの違う宗教が、それぞれの時期に造られたのだという。1-12番石窟が仏教で7〜8世紀。13-29番石窟がヒンズー教で8〜9世紀。30-34番石窟がジャイナ教で、9〜11世紀だという。

先ずは、10番の仏教寺院に入ってみた。ここは、アジャンタに比べてはるかに大きい。2層構造になっていて、2階からもお祈りができる形になっていた。 音響も素晴らしいので、仏教の楽器や念仏の声が、こだまするようになっていた。中の仏像も美しい。だが、残念なことに、壁画の保存状態が良くなく、内壁は石肌がさらけでているだけだった。

12番の石窟は、僧侶の寄宿学校として使われていたようだ。 3階建てになっていて、大きな石柱に支えられる形で大広間が2階と3階にあった。その広間の内壁をくりぬいて、寄宿用の部屋がいくつが造られていた。 当時、ここに寝泊りした寄宿僧は、この広間で僧侶となる訓練を受けていたのだろう。不思議なことに、ヒンズー教やジャイナ教には、寺院のみがあって寄宿できるスペースや学校の跡地は無いようだ。仏教の目的が、悟りを開くことにあるのに対して、ヒンズー教は現世利益を求めることが主になっていること の違いだろうか。

そして、このエローラの目玉である16番石窟であるカイラーシュに着いた。これは、コラムで説明するよりも、絵をみてもらった方がいいだろう。


ヒンズー教の寺院で、中には、シバ神の男根の象徴である「リンガ」が納められていた。そこに皆がお参りし、祈願するのである。この寺院は、全て岩を掘削してできたもので一枚の岩でできている。掘削してできた寺院ということでは、ヨルダンのペトラ寺院に似ているが、こちらの方が、もっと奥行きがある
※ご参照コラム「ヨルダン旅行記」

休憩をしたあとに、ジャイナ教の32番石窟に向かった。ジャイナ教は、もともとは、仏教よりも古いが、紀元前5世紀ごろに仏陀と同じ時期にマハービールというカリスマが活躍した。この寺院もそのマハービールに捧げられる形で造られていた。中の石造の芸術的価値は高い。印象的なのは、裸の男の像である。ジャイナ教では、「空気をまとう服」つまり、「裸」が1つの理想形と言われているので、裸の男の像が各所に見られた。

最後に、ヒンズー教で最後に造られたという29番石窟に入った。ここは、後期に造られたのか、シバ神の像の大きさや、中のスペースの広さと言い、規模が大きい。この石窟寺院には、窓がついていて、滝が見えるようになっていた。 岩盤の上から一筋の滝が流れ出て、石窟群を背景に緑の滝つぼに落ちていく様は、古代にタイムスリップしたかのような感覚におそわれる。

アウランガバード市街には外出禁止令がまだ敷かれているようなので、近くのレストランで、インドのタリー(定食)を頂きながら、時間を潰した。当然ドリンクは、キング・フィッシャー・ビールだ。12月とはいえ、インドは暑い。しかも乾燥していた。喉を通る感覚は、何ともいえない。

ガイドさんと運転手さんが情報収集をしてくれていた。とりあえず走ってみたが、やはりちょっと時間が早いようであった。市街に入るときに警察にとめられて、16時まで道端で待ちぼうけした。そして、16時前にOKが出て、やっと市街地に入ることができた。街中では、外出禁止令が明けて、一斉に人々が出てくる様が見えた。

ホテルに戻り、一泳ぎした。汗をかいた後の水泳は、とても気持ちがいい。時間があったので、隣にあるホテル・マネジメントの学校を見学させてもらった。 実は、ホテル滞在中に初々しい研修生を多く見かけていたのである。彼ら (彼女)に声をかけてみると、「隣に、インドでNo.1のホテル・マネジメ ントの大学があり、そこのトレーニングの一貫で来ている」という返事が返ってきた。どうしても、見学したくなって、研修生に 案内してもらう事にした。非常に実践的な教育が施されていて、ここからホテル・マネジメントのプロが育成されていくのが理解できた。

エローラの寄宿学校といい、ホテル・マネジメントの学校といい、僕は知らぬ間に教育に興味がいってしまうようだ。夕食は軽く済ませて、翌日からのムンバイにおける「ベンチャーキャピタル・コンファレンス」に備えることにした。

いよいよ外出禁止令下のアウランガバードから開放される。不思議なことに、外出禁止令は、インドの中でもこの地域だけに発令されていて、大都市であるムンバイは、全くその対象外らしい。

ま、いずにせよ、これからは、インド一の大都会のムンバイに行くことになる。
ムンバイでどういう風景が見れるのか、楽しみである。

2006年12月3日
アウランガバードのホテルにて
堀義人

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