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2010年1月27日 (水)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議2010~(1)ダボス会議に参加する意味

ワードローブの奥から防寒用の帽子やスノー用の黒い革製のブーツを取り出して、スーツケースにパッキングする。これらの防寒グッズは、前回ダボスに来た際に、街中で購入したものであるが、それ以来使ったことが無い。そもそも、ダボス以外では、移動は基本タクシーである。スーツを着て雪道を歩いて移動したり、寒い中で会議をしたりすることは、普段の仕事の中では考えにくいのである。

ところが、ダボスでは、会場がメイン会場以外にさまざまなホテルで分散して開催されるにもかかわらず、その間の移動には、タクシーが無いし(あっても僅か)、シャトルバスがあっても方向が一方向のみで不便である。しかも、アシスタントなどを伴えないから、自らの力で荷物を持って、雪道を歩かなければならないのである。

前回のダボスで、僕がトボトボと雪道を歩いているときに、ふと前を見ると、ジョージ・ソロス氏が厚いコートを着て帽子を被って歩いていたのである。ホテルのクロークでは、クリントン大統領経済諮問委員会委員長であったローラ・タイソン氏に出会った。皆、完全防寒の出で立ちをしていた。

おそらくダボス以外では、雪道を歩かないのであろう。そもそも一人で歩くことも珍しいのであろう。ただ、ダボスでは、仕方がないのである。僕は、最初はそれとは知らずに、普通の革靴を履いていったのだが、これが雪道では危険極まりない行為なので、ダボスの街中で急きょ革製のスノー・ブーツと黒い防寒用のキャップを購入したのである。

そのダボス会議に、僕は久しぶりに参加することになった。前回参加したのは、2004年から2005年にかけてであるので、実に5年ぶり3回目の参加となる。

<参考コラム>
世論形成の場としてのダボス会議 2005.2.3
ダボス会議参加報告(その1) 2004.1.27

簡単に「参加」と表現したが、ダボス会議から招待状が届くことは、実は至難の技なのである。基本的に毎年2300名ほどが会議に参加するが、そのうち半分超は、ファンデーション・メンバーと呼ばれている1000社の大企業(売上高5000億円超が条件)の経営トップと、スポンサーとなっているコンサルティング会社、投資銀行、PR会社などのトップによって占められている。残りの半分弱が、政治家、国際機関代表(国連、世銀、IMF、OECD、EUなど)、学者、メディア、アーティスト、NPO、宗教界代表などである。政治家といっても、国家元首クラスかシニアな大臣のみが参加可能である。学者枠も限られている。学長であれば、日本からは東大か慶応から2~3名程度であろうし、教授であれば世界的に活躍している学者のみが招待されるのである。狭き門である。

最後の枠組みが、200名程度のヤング・グローバル・リーダー、テクノロジー・パイオニアなどのユース・プログラムの参加者である。このユース・プログラムは、世界から、将来活躍するであろう人々を年間100名選ぶプログラムである。そのプログラムの対象者は、期間限定30代から40代前半までに2~3回程度参加できるが、それ以降は、ユースの枠組みを外れ、前述枠組みのどれかで来るしかないのである。

そして、これらの限られた参加枠を、欧米先進国と、中国・インド・ロシア・ブラジル・中近東などの新興国が奪い合うのである。その結果、最終的に世界から選ばれた各界の代表者のみが冬のダボスの地に集結できるのである。

僕も当初は、2004~2005年とユース・プログラムの一環で参加したが、ある時期からはユースの枠を外れたので、なかなか参加できなかった。だが、幸いなことに、今年から正式な招待状が届くようになった。地道な世界会議の場でのプレゼンスの向上と、グロービス経営大学院やグロービス・キャピタル・パートナーズの社会的な評価が上がったことが大きな要因であると思っている。いずれにせよ、晴れてダボス会議に、復帰できたのである。

そもそも、何であんなに不便な場所に、寒い冬に、世界からリーダーが結集するのであろうか。その魅力とは、何であろうか。他人の考えはわからないが、僕なりの考えはわかるので、自分なりに参加する動機を整理してみることにした。

(1)まずは、リーダーから学ぶためである。住友商事を辞めてからは、僕には上司が存在しない。となると、自らの学びは、社会全体で出会った人々から得るしかなくなるのである。そこで、自らをさらなる高みに引き上げてくれる人物に出会うべく努力をし続けてきたのである。ダボス会議には、世界のリーダーが集結している。いわゆるグローバル・リーダーの「品評会」のようなものである。その世界のリーダー達が何を、どのように語るのか。彼らの立ち居振る舞いは、どうなのか。彼らの思考は、どうか。そして、彼らと比較して、自分には何が足りないのか、を認識するために来るのである。所謂グローバル・リーダーから学び、自らを磨くために来るのである。

(2)次に、最先端の知に触れるために来るのある。ダボス会議には、世界から頭脳が結集してくる。科学の最先端、金融の最先端、政治の最先端で何が起こっているかを知ることができるのである。僕は、可能な限り、自分が知らない分野に顔を出すように努力をしたいと思っている。その結果、自らの知能の幅を広げることが多少なりともできると思っているからである。

(3)そして、世界のリーダーとのネットワークをつくるために来るのである。グロービスがアジアNo.1のビジネススクールになるときに備え、世界のリーダーとのネットワークを創るという意味も当然、ある。しかし、それ以上に、いつかは自らがグローバル・リーダーの一員となり、世界の問題を解決する一端を担いたいという志があるから来るのである。

2004~2005年に、ダボスの雪道で転がりながら、世界のリーダーに触れてきた。まさにその時に自らがグローバルなリーダーの一員となると志を立てたのである。そして、今年再度ダボスに戻るのである。しかも、過去の2回は、一参加者の立場でしかなかったが、今回は、分科会ではあるが、パネラーとして登壇するのである。ダボス会議のプログラムに僕とグロービスの名前が掲載されるのは、一つの大きな前進であろう。

一昨年は、福田総理が参加した。昨年は、麻生総理である。今年は、残念ながら鳩山総理が欠席となってしまった。その分、参加者一人一人が、日本代表の立場で、ダボス会議に参加することとしたい。

2010年1月26日
フランクフルト郊外のホテルにて
堀義人

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