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2010年3月 1日 (月)

政治・社会 一人一人の言動が日本を変える

今まで僕は、意見を言うのは控えてきた。なぜならば意見を言えば必ず反論され、批判を受けるからだ。誤解もされるし、その結果、敵もつくることになる。だが、もうそうは言っていられない。日本が抱える課題はかなり大きいにも拘らず、その課題・問題に対して前向きに取り組んでいる姿勢があまり見られないからだ。

僕の立場も変わりつつある。グロービスは、日本を代表する経営大学院になりつつあるし、僕自身、もう年齢的に50歳近くになる。当然、次の日本を背負う僕らの世代には、責任がある。これからは批判を気にせずに、言うべきことを言い続けることとした。

ホリエモン、村上ファンド、グッドウィル等への社会的制裁により、起業家仲間でも、「目立たない方が得」という風潮が出てきた。なぜならば、目立つと叩かれるからだ。しかし、社会の活性化には、イノベーターが、「我こそは○○でござる」と自らを宣言し、考えを主張することが大事である。

その違う個性による強烈な自己主張のぶつかり合いが、社会のダイナミズムを生むのだ。大人しい、真面目な人ばかりでは、何も生まれない。「調和社会」は、聞こえがいいが、一歩間違うと「何もしない人の集団」となり、イノベーションが生まれない。

良い意味での「ダイナミックな調和社会」は、主義主張をぶつけ合いながらも、生み出せると思う。個性を尊重し、違いを認め合い、感情的にならずに論理的に意見交換をし、ルールに従い意思決定をする。その素地が社会にあれば、異種の自己主張のエネルギーを吸収しながら、ダイナミックな変革を担い続けられると思う。それが、日本が向かうべき「ダイナミックな調和社会」と言えよう。

どんな服装をしようが、髪型をしようが、髭をしようが、いいではないか。それが個性なのである。その個性を伸ばす社会であれば、世界でもっと活躍できる人材が生まれると思う。

最近記者会見などを聞いていてよくわからないのが、「世間を騒がせて申し訳ないと思う」、という発言である。「え?どうして申し訳ないの?」と思ってしまう。世間が騒ぐが騒がないかは、世間が決めるものである。自らが決めるものではない。

グロービスのベンチャーキャピタルのパートナーであるアラン・パトリコフ(コラム「伝説のベンチャーキャピタリスト、アラン・パトリコフ」参照)が面白いことを言っていた。「頭の中で悪魔を増長させてはいけないよ」、と。僕は、何の意味かわからなかったので、質問して教えてもらった。彼が言うには、「悪魔」というのは「問題」のことである。小さな問題でも、頭の中で考え続けるとその悪魔(問題)がどんどん増長していくのである。つまり、問題は、大きい小さいに関わらず、意識の持ちようで大きくなったり小さくなったりするのである。

これは、世間でも一緒である。小さな問題でも、マスコミが大きく取り上げたら社会問題になる。ましてや国会、さらには公聴会で取り上げると、これは、「大問題」になる。ところが、実際には「大した問題ではない」かもしれない。ただ、そこまで行くと、誰も「大した問題ではない」とは、言えない空気が生まれ、謝罪をしなければならないところまで追いやられる。これを英語では、「politicize」と言い、「政治問題化する」、と訳される。つまり、意図的に政治利用するのである。一方では、大きな問題であってもマスコミが取り上げないと社会問題化しない。本来は、世間で騒ごうが騒ぐまいが、「良いものは良い」、「悪いものは悪い」のだ。

その政治利用のために、目立つものがターゲットになることがある。検察、行政、マスコミによる一罰百戒的な見せしめ的行為により、目立つものがターゲットになるのである。その結果、「出る杭は打たれる」という諺が現実のものになってしまうのだ。となると「目立たない方が、得」と意識が芽生え、ダイナミックな変動が何も起こらない社会が生まれることになる。(ただし、実際には、目立たないところでは、様々な動きがあるが、静かにしているので社会を動かす力になりえないのだ)。

僕も、今まで黙々とやるべきことをやってきた。日本にとって必要なのは、新たな人材育成である。だからこそ、グロービスを通しての人材育成をしてきた。日本に必要なのは、新たな企業・産業である。だからこそ、ベンチャーキャピタルを通して第二のソニー・ホンダを生み出そうとしてきた。日本に必要なのは、新たな知のダイナミズムである。だからこそ、出版による知の提供をしてきたのだ。

だが、それだけでは足りない気がしてきた。だからこそ一歩踏み出し、オピニオン「起業家の冒言(ぼうげん)」を書き始めたのだ。僕自身、目立つことに抵抗はあるが、そうは言っていられないのだ。環境も変わって来た。社会の中での危機意識もかなり共有されてきた。

ITの進化により、「よりパワフルな発信力を個人が持つようになり」(ツイッター7つの仮説2)、そして、「パーソナルな情報がマスメディアを凌駕する」(仮説4)のだ。この環境であれば、草の根的な改革は、実現できると思う。

先ずは、各人が各人の立場で発言し、行動することが重要だと思う。僕も、提唱者として、臆することなく、今後とも気がついたことは必ず発言し、行動に移そうと思う。同世代には、政治家の良き仲間も多いし、経済人、文化人、メディアの人も多い。ツイッターでも仲間が増えてきた。同志が多いことは、心強い限りである。

先ずは、身の回りからの一人一人の発信、行動である。そこから日本の改革が始まるのである。

2010年2月28日
堀義人Twitter@YoshitoHori

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コメント(8)

  • 私も出る杭になるのを恐れてはいけないと考えています。
    出る杭にならなければ見えない景色もあると思いますし、多分出る杭になれる人は、そうなってでも、問題提起をしなければいけない使命があるのではないでしょうか?
    それにしても、マスコミはどうして批判ばかりするのでしょうね。日本人は人を誉めることが下手過ぎます。欠点ばかりを責めてても何も産み出せないのにと残念でなりません。もっとおおらかな目で他人を許すことのできる社会になることを願うばかりです。

    投稿者: S.S


  • どんな服装をしようが、髪型をしようが、髭をしようが
    、いいではないか。それが個性なのである。その個性を
    伸ばす社会であれば、世界でもっと活躍できる人材が生
    まれると思う。


    この考えいいですね。今技術者は派遣に置き換えられて
    現場にいる平に近い社員の胸八寸で3ケ月延長があるかどうか決まります。彼らの好みで人を切るか決められるため
    結果上品な人しか残りません。個性は逆に目立ち首になりやすい 借りてきたピエロのようにキャピキャピ振舞える
    道化を演じられる技術者だけ残ります。だからつまらないものしか生まれてこなくなったんだけどね 

    投稿者: 通りすがり

  • ホリエモン、村上ファンド、グッドウィル等への
    社会的制裁により

    こいつらは目立ったから潰された「尊い犠牲者」ではありません
    イノベーションや変革といった大義名分を振り回しながら
    違法行為をやっていたのが露見して自滅したような連中です

    これからイノベーションを生み出そうとする
    みなさんが上に挙げたような連中と同じ目に遭うのでは、
    とビビる必要は全くありません

    みなさんにとってむしろ必要なのは
    こういう連中をドライに切り捨てることではないでしょうか?

    「既成社会」といったような実体がアバウトな
    仮想敵をでっち上げて「ボクも出る杭になる!」
    などと粋がる前にまずそれをやるべきです

    投稿者: ふぁふぁふぁww

  • まず全てを受けれる。その度量の大きさが必要だと思います。
    玉石混合の企業家の中で、真に尊い志と行いを積み重ねた者
    だけが、残っていく。時代が物語っています。
    今までのところ、堀さんの志と行いは、まっすぐで正しいと
    思います。
    マルクス・アウレリウス曰く「そろそろ良い人間について
    論じるのはこの辺で切り上げて、良い人間になったらどうだ」
    人の批判の前に、まず自分の身の処し方が正しいのか、考えて
    みてはどうでしょうか。

    投稿者: Saito

  •  たいへん勇気をくださるコメントで、「体温」が上がりました。同感です。
     私は、国際会議などの経験も多少はあり、政治・行政に近い立場にありますが、世界の中で見ても、ひとりひとりが声を挙げ、それを許容する社会にならなければ、日本の未来もおぼつかないと痛感しています。

     多様な意見を許容すること自体が第一歩ですが、そのために何が必要でしょうか。どうしたら認識が変わるのでしょうか。「教育」に押しつけるのではなく、やはり、そのよなスタンスで発信する人間の個数を増やすことが必要と思います。
     その上で、日本人の議論を見ていると、①事実認識と価値判断の部分が混同している、②組織・社会のヒエラルヒーが自由な意見交換を制御している、③感情的な発言や品性を欠く発言で議論を攪乱する、④異なる意見が出そろったときにそれを収斂し、止揚させるスキルが乏しい、といった課題が指摘できるとおもいます。
     そのような意味で、「会議の技法」「(多数決に頼らない)合意形成の技法」を生み出していくことが必要と考えます。このような点にブレークスルーを生み出すことも重要な視点だと思います。

    投稿者: tkt

  • 私は、
    「個人がもっと発言して、議論から創造が生まれるには
    個人として何をしたらよいか?」について考えました。
    以下は、それについての意見です。

    私は、大きく2つの行動が必要だと考えています。

    ■同意や否定をせずに、ゼロベースの発言をすること

    人間、発言を否定されれば、腹が立ち、同意されれば、嬉しいと感じてしまいます。
    悪い感情も良い感情も両方とも、正しい議論へは導きません。
    よって、相手の発言の違いや共通点を見つけるのではなく、相手の発言から気づいた事に対して、
    ゼロベースで自分が考えてその意見を提供しなければならないと考えます。
    そうして、意見から意見が作り出され、みんなで創造された意見は、すでに特定の誰かの発言ではなくなります。
    そうすれば、その意見に対する否定や同意があっても、特定の誰かが感情的になることはありません。
    そのステージになれば、否定や同意の発言が、創造の価値として認められるのです。
    そうなれば、意見をすることが楽しくなり、発言が増えると私は考えています。

    ■良い異見を出す場所を探して、良い仲間を増やすこと

    とはいっても、会社内では、否定や同意をしないのは非常に難しいと思います。
    ですので、まずは会社外の場で、そういう仲間が集まる場所を探して、そこで大いに議論をし、自分に習慣付けるほうが良いかと考えます。
    なぜなら、自分の発言が否定される恐怖に打ち勝たなければいけないと思うからです。ポジティブな感情で、それを乗り越えたとき、会社内での発言にも変化が訪れるでしょう。ただし習慣になるまでに時間がかかることは付け加えておきます。
    私は最近、自分の性格に問題を感じたときは、まずは行動から変えるようにしようと思います。
    なぜならば、自分の性格が問題だと思うと、解決できそうと感じないからです。
    しかし、自分の行動が、性格に問題を与えてると思うと、解決できる問題に変わるような気がして、気が楽になるのです。
    ということで、否定されるのを怖れないようにするには、自分の行動を変えれば良いのだと考えました。

    投稿者: Mr.K

  • 投稿者: tkt さんの下記コメントに現実性を感じます。
    私自身も業界内のさまざまな討議に参加することがありますが、そこで述べられる立派な見解や、具体的なアプローチを収斂して着実に実行してプロセスに繋げることが大事と感じることが多いです。
    学問の世界にいらしゃる方々、現業にいらっしゃる方々、またメディアの中にいらっしゃる方々、それぞれにすばらしい思考と発言をしてくださいます。
    これらを現実の行動に繋げてゆく行動力と、リーダーシップが何より今は大事かと思います。
    国の将来の財政を考えた場合にも、消費税のUPはきわめて大事な議論にも関わらず、冷静な議論に導けないのは情けない限りですね。

    ①事実認識と価値判断の部分が混同している、
    ②組織・社会のヒエラルヒーが自由な意見交換を制御している、
    ③感情的な発言や品性を欠く発言で議論を攪乱する、
    ④異なる意見が出そろったときにそれを収斂し、止揚させるスキルが乏しい、

    投稿者: No.6 卒業生

  • 先日の國母選手の件と絡んで気になったので、少しコメントさせて頂きます。

    >どんな服装をしようが、髪型をしようが、髭をしようが、いいではないか。それが個性なのである。

    ある意味正しいとは思いますが、誤解を受ける言い方でもあると思います。服装、髪型などは確かに個性かもしれませんが、個性だからといって結婚式の席に黒いネクタイで行ったり、葬式に派手な格好で行ったりすることを想定されて言われたわけではないと思います。
    「個性」を曲解すると先日のオリンピックでの國母選手のような例も出てきます。私は國母選手の服装の件について、小さい問題とは思えません。少なくともあの場面で、自分の開会式や服装に対する考え方について堂々と述べる代わりに、悪態をつくことが許される社会ではあって欲しくないと思います。

    「個性を尊重し、違いを認め合い、感情的にならずに論理的に意見交換をし、ルールに従い意思決定をする。その素地が社会にあれば」
    というところとセットで読まなければ誤解が生じやすい箇所だと思いました。

    投稿者: yh

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