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2010年3月 4日 (木)

政治・社会 個人の自立心が日本を強くする

先のオピニオンでは、「雇用を聖域にせずに改革せよ」と言った。当然の前提として、日本の美徳であるコミュニティ型経営を維持する必要があるのは、確かだ。それが日本企業の強みにも直結しているからだ。ただ、これだけ周辺環境が激動する中においては、企業は急速な変化適応力を求められる。そうなると終身雇用は、守れなくなることがある。

そもそもが、企業は、終身雇用の保証などはできない、と思っている。「企業30年説」を説く人もあるほど、企業というのはライフサイクルが短いものなのに、それより長い間の雇用を企業が絶対のものとして保証できるはずが無い、とも考えられるからだ。戦後から今までの時代は、たまたま長期間安定的な経済成長を遂げられた。しかし、これは、むしろ奇跡なのかもしれない。今起こっているインターネット革命とグローバル競争の中では、企業の優勝劣敗が更に早いスピードで進んでいく。

そうなると、企業の盛衰が猛スピードで起こり、企業は雇用を守れなくなる。そのような環境では、個人一人一人が自らの頭で考えて、自らの市場価値を客観的に測る必要がある。自らが所属する企業の行く末を考えながら、自らの持っている技能が時代遅れになっていないかを確認する必要がある。次の時代に必要な能力を、自らが育成し続けないと、自らの職の保証はありえない。企業が職を保証するのではなくて、自らの努力が職を担保するのである。

雇用・職は、社会全体でセーフティネットを張りながらも、基本的には一人一人の自助努力で自らが獲得するしかないのだ。一人一人の国民が変化に適応し、価値を発揮すれば良い。そうすれば、必ず雇用・職はついてくる。基本的には、自分の人生だから、自らが責任を負うしかないのだ。政府に文句を言っても始まらない。政府の財政もそのうちに破綻するのだ。基本的には、自らが不屈の精神を燃やしながら、努力をして能力や職を獲得し、人生を切り開いていかなければならないのだ。

その一人一人の努力の集合体が、日本という国の国力を創りだすのだ。一人一人が怠けるようなシステムになっていると、より環境が厳しい韓国とか中国には、国家として太刀打ちできない。頑張っている人間、価値を生み出している人間に報いこそすれ、懲罰を与えるような税制・社会システムなど、言語道断である。もっと各自が頑張る仕組みを導入しないと、日本全体の成長などありえない。

ただ、そもそもその雇用を生み出す新たな産業が必要となる。その産業を創出し、新たな雇用を創るのが、イノベーターの役割だ。このイノベーターの爆発的な成長力を積極的に活用するのが、実は一番早道なのではないかと思っている。だからこそ、その人材の育成、新たな産業の創出そして知恵の発信に、グロービスが全精力を注ぎ、会社の資源を割いているのである。

このイノベーターに関しては、後のオピニオンで述べることとする。その前に格差が問題なのかどうかを論じてみたい。


2010年3月4日
堀義人

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    受信 : 2010年3月 5日 (金) 09時15分

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    ●勝負したいところで勝負できる所へ(2013年8月1日)  私がこれまで、このブログで仕事観について書いたのは、ほぼこの1回きり。これ以上のことを書くには、まだ私の仕事経験が少なすぎます。しかし、私の仕事観はコレ!と思う文章(というより、私の仕事観に少なからず影響を与えているもの)が他にいくつかあるので、以下にまとめて紹介してみたいと思います。 +++ ●個人の自立心が日本を強くする(堀義人氏、2010年3月4日)  次の時代に必要な能力を、自らが育成し続けないと、自らの職の保証はありえない―...……続きを読む

    受信 : 2013年10月22日 (火) 21時03分

コメント(9)

  • 格差について考えます。

    私が気になるのは経済格差です。
    しかし、非正社員やワーキングプアの現状については、様々な論評がありますし、
    私も詳しくはないので、専門家に委ねたいと思います。

    なら、私が考えたいのは、若い人も中高年者も、どうやったら多くの人が雇用にありつけるかです。

    打ち手は、やはり新しい雇用を生み出すこと、つまり起業家を増やすことだと考えます。
    しかし、「皆が新しい事にチャレンジし、創造し、頑張れば良い」だけでは、
    ただ混沌とするだけで、なかなか産業創出の本流が出来上がらないと考えます。
    抽象的ですが、みんなが色んな方向に一斉に動き出したら、
    力が分散され、また力が相殺されてしまいます。

    では、どうしたら力が分散せずに、日本がまとまったエネルギーで突き抜けることができるのか?
    それは、分かり易い「流れ」を生むことだと私は考えます。
    私は、日本がどの方向性に動くきだすのか、まだ創造できません。
    ですので、トヨタのリコールは何が問題なのか?など、そういう後ろ向きな話ではなく、
    もっと現実感のある未来の話をして欲しいと思います。

    少し、堀さんの次の話に進んでしまったようですね。

    では話は戻り、仮に起業家が増え、雇用が増えたとしても、
    効率の良い労働ばかりに頼ってしまっては、短期的な収益ばかりに目が行き、
    いち早くエネルギーを得た労働者だけ富が集中し、短期的な投機が増え、
    短期的な富で国民が満足し、またバブルで終わってしまったら、経済格差は益々拡大すると感じます。
    その観点から、やはり私は、一個人のチャレンジも大いに必要だと感じつつ、
    一企業の人材育成の責任も伴わなければ、日本の創造の流れがすぐ止まってしまうと考えます。
    企業家には、ぜひそこまで考えてほしいと思います。
    エネルギーを溜めて、爆発で終わらずに、エネルギーを正しい方向に導いていく必要があるのではと思うのです。
    「走ろうとするまえに、まずは歩くことを徹底する」という気持ちが大切なのかもなと感じました。

    投稿者: Mr.K

  • 今日、お昼に「ひとりひとりの力を高めないと」と漠然と思ったので、このオピニオンには驚きました。でも、まわりにはうつ病の方が増えているのも事実。追い立てることが怖くもあります。子どもたちの教育においても、三単現のSはどうでもいいから(?)、もっと社会をよくする実践的な勉強が絶対的に必要。その一方で、生きにくさを感じる子どもたちも増えている(困り感をもった子どもたち)。生き物は遺伝子進化(退化?)のための道具かもしれないと考えることがあって、ならば、遺伝子は何がしたいのだ、どうしたいのだと考えています。

    ひとりひとりの力を高めることは必須。だけどそれをどう広げていけばいいのか。そこがわからないのです。

    投稿者: てらだ

  • 私も、新たな産業の創出が早道だと思っています。
    特に、環境ビジネス、代替エネルギービジネスです。

    投稿者: エミコ

  • 格差は起こると思います。
    価値を生み出す人に多く報いるのは、社会の仕組みとして
    当然だと思います。それを否定する社会に未来はありません。

    格差といっても今の日本で、餓死する人はまずいませんし、
    最低限のセーフティネットは必要だと思います。若者には
    学ぶ機会の提供も必要だと思います。
    しかし過剰な保護は、自立の妨げとなります。

    格差を問題視する心理の根底には、人を羨む精神と、努力も
    していないのにもっと分け与えられて然るべきという甘えの
    精神があるように感じます。

    足るを知る精神。今の日本での生活がいかに恵まれているか、
    日本人はもっと自覚した方がいいと思います。そして、
    このままの状態は長く続かないことも知っておいた方がいい
    と思います。
    まず、今の恵まれた状態に感謝し、これからの日本の未来に
    向けて一人ひとりが自分をどう活かすのか。そのことに注力
    すべきではないでしょうか。

    投稿者: Saito

  • 一連のご論考を、興味深く拝読しました。

    >雇用・職は、社会全体でセーフティネットを張りながらも、基本的には一人一人の自助努力で自らが獲得するしかないのだ。

    100%賛成です。 
    大企業のグループ会社の、親会社からの天下り人材には、ひどい人も多いです。

    中高年も自助努力により、新たなスキルを身につけ、会社と社会に貢献できる。
    私自身、グロービスの学びを生かし、前の会社に続き、
    今の会社を変革したいと思っています。

    定年まで7年ありますので、変革には十分な時間が残されいると思っています。
    一度きりの人生ですので、やるべきことをやり、
    悔いなき人生を送りたいと思います。

    それが、次の世代への遺産だと思いますので。

    投稿者: 佐久間@モッティ

  • 競争の世界は、平等でも公平でもないことを認めたうえで格差はその結果として創出される。しかし、問題はその格差が経済力というバックグランドで格差が世襲されることを社会的な問題と考えます。
     格差は一代の努力に報いる上で必要なことかもしれません。しかし、自営業という不公平な税制で能天気に貧困家庭の子供と一緒に預ける成金にはアンフェアと言わざるを得ない。このことを抜きにして成功を語ることは片手落ちだと考えます。匿名Mr.Kさんに同感です。

    投稿者: 山下 政嗣

  • 今の日本の状態は異常。餓死者も出ていると思う。一家の大黒柱が【税込】年収200万未満で子供持ちなんていう家庭は自分も含め周りに沢山出てきている。「今の日本で餓死する人はまずいません」と言っている人は自分がどれだけ無知であることを自覚するべき。

    投稿者: サトル

  • 努力という言葉が格差や能力の市場価値についての文脈ででてくるのは不正確かと思われます。

    自分の能力がいくらで売れるのか、あるいはいくら集められるのか、を市場に問うのが最もシンプルで公平な評価で、努力は無関係ですよね。自分の方が努力しているのに、という不平を持つ人がいますが、それは不健康です。

    規制や監督をするならその市場原理がちゃんと働くようにすることだと思います。過剰雇用リスクを下げる雇用形態を提供して正社員と同等の仕事をする派遣労働は本来なら正社員よりかなり報酬が高くなるはず。アメリカではそうなってますね。失職リスクの差が大きい日本では尚更派遣の方が報酬が高くなるのが道理と思われます。

    その市場原理、労働の流動性を歪めているのか終身雇用、年功序列、定年制だという単純な事実に日本育ちの多くの人は気づいていないようで驚きです。年功序列が中高年での再就職を必要以上に困難にしています。終身雇用のせいで過剰雇用解消が困難で就職氷河期という機会不均等が置きます。過剰雇用されている人たちも当然良い扱いは受けません。皆が不幸です。

    制度がどうあれ弱者にはセーフティネットが必要ですが、日本では生活保護や雇用保険などセーフティネットがちゃんと機能しないようなので、日本新党が言うようにベーシックインカム制に置き換えてしまうのが良いように思われます。

    投稿者: あずま

  • 個人が自立し、セーフティネットワーク化するには「アイディア創造力」が大事かと思います。政治や経済を評論、議論するのではなく(多少は必要ですが)、アイディアを出すこと、行動することが大事だと思います。
    私は日本が燦々と輝くよい国になるように願い、経済産業省のアイディアボックスに33個のビジネスアイディアを出しました。
    これは国民全体から投稿されたアイディアの5%に相当します。的外れのものも多いかと思いますが、とにかく沢山出せばいくつかはビジネス化の可能性があると考えています。
    全グロービス関係者が同じ数のアイディアを出せば、凄いものも生まれると思います。頑張りましょう。 https://open-meti.go.jp/

    投稿者: Atarashii_koto

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