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2010年5月11日 (火)

日本人・アジア人・地球人 タンザニア旅行記(出張記)~その6)アフリカよ、己の強さに気付け!

「今からホテルを出る。本日いよいよタンザニアの地で、世界経済フォーラム主催の会議のパネルに参加する。準備も終わった。あとは、本番で堂々と喋るだけだ。日本人唯一の登壇者だ。日本代表の気持ちでいながらも、リラックスして参加したい」。

ツイッターでそう呟いて、ホテルの部屋を後にした。前日から、グロービスのリサーチ・スタッフ総動員で、必要なデータの収集を行ってもらっていた。自分なりに話す内容を決め、そのロジックに従い、スピーチメモも作成した。

自分の得意分野の起業や人材育成について喋るならば、気が楽だ。だが、今回はそうではない。「発展途上国企業の成長戦略」など経験もないし、考えたことも無い。何せサブサハラに来るのも初めてなのだ。しかも、言語は英語で、聴衆は半分以上が現地の事情に詳しいアフリカ人だ。さすがの僕も、緊張してきた。

バスで移動中、つまり、もっともネットワーキングしやすい時に、僕は初めてネットワークをせずに、メモと資料に目を通していた。会場に着いた。朝9時からは、「E-Africa」というテーマのインターネットのセッションに参加した。当然、パネルに耳を傾けながらも、自分なりの考えを頭の中で繰り返していた。スピーチやパネルの発言で一番いいのは、メモを一切見ないで喋ることだ。そのためには、頭の中に数字を入れ、主要なポイントを念じるように繰り返すことが必要だ。

ついに僕が登壇するパネルの時間が迫ってきた。会場に入り、他の登壇者と挨拶を交わした。段取りを確認して、着席し、開始の合図を待っていた。ソフィアバンクの藤沢久美さんが一番前の席に座ってくれていた。彼女が取ってくれた写真が以下だ。

http://twitpic.com/1lpofb

僕の左横にいるLeeさんは、若く見えるがCNNのManaging Editor(編集長)で、今回のパネルのモデレーターをしている方だ。スタートの合図が出て、冒頭にWEF(世界経済フォーラム)のマネジング・ディレクターのRobert Greenhill氏が意見を述べて、パネルが始まった。

僕の番が3番目に回ってきた。僕は、「おはようございます。ジャンボ!(元気ですか?)」と現地語を交えながら喋り始めた。冒頭に僕は、「この地域に来ることは初めてだし、アフリカのことは良く知らない。だからこそ、日本人としての違う視点からこのパネルに貢献したい」と自分の立場を明確にした。

僕のポイントは、以下だ。「アフリカからフォーチュン500の企業を生み出す方法を考えるには、歴史観を持って世界の流れを理解しなければならない。歴史を振り返ると、先ず欧米企業が先行し、日本が追いつき、韓国・台湾が追随した。今は、BRICsが台頭してきており、他の新興国企業も急成長している。将来、アフリカの企業がこのリストに載ることは、不可能ではない。では、どうすればいいのか」、と質問を投げかけ、間を取った。

「基本的には、自らの地域や国の強みを生かした固有のモデルを作る事が重要だ。日本の場合には、地下資源が全く無い。だから人的資源、つまり教育に力を入れて、研究開発、生産に強みを持つ日本モデルを作った。ブラジル企業は、鉄鉱石などの地下資源を強みに拡大し、ロシア企業は、石油とガスなどで引っ張った。インドは、英語力を使ったアウトソーシングとソフトウェア技術で国の成長を引っ張り、中国は輸出主導型の製造業で成長を遂げた。さて、アフリカのモデルとは何であろうか」、とまた会場に質問を投げかけた。

「成長のためには、どの国・地域であっても、以下4つの柱が必要となる。
 (1) 教育への投資。初等教育と高等教育の双方が重要だ。
 (2) インフラの整備(電力・ガス、水道、交通網、通信網、港湾設備等)
 (3) 資本・人材・技術・経営ノウハウが自由に流れ込む仕組み
 (4) そして、政治的なリーダーシップだ。規制緩和を行いながらも、
    法的整備をしっかりと行い、成長への強い意思を表明することが、重要だ。

では、『アフリカ・モデル』として、何が必要なのだろうか。グロービスに来ているアフリカ人の学生に、来る前に聞いてみた。彼らの答えは、『地下資源と農業に力を入れ、地域ブロックを作り上げて、海外から技術や資本を呼び込む魅力ある市場をつくることだ』、だった。それらを行えば、明らかにこの地域から次代のフォーチュン500企業が生まれることを、僕は確信している」、と述べて、最初の発言を終えた。

2回目に回ってきたときには、他のパネラーの意見に答える形で、以下を述べた。

「政府に期待する気持ちはわかるが、民間セクターは自らの力で創意工夫をしながら、与えられた条件の中で、起業家精神を発揮して、最善の努力をすることが重要だ。教育に関しても、大学などの教育機関に頼るのではなくて、家庭、コミュニティ、会社、あるいは、このようなコンファレンスの機会でも、皆が学び合うことが重要だ。ここにいるアフリカのリーダーがその気になれば、政府に頼らなくても、すぐにでも前に進められる」。

会場との質疑応答の中で、僕は、3回ほど発言機会をもらった。とてもいい感じだった。途中で停電となるアクシデントがあったときも、「インフラが重要だ」とジョークを飛ばすほどの余裕があった。そして、セッションの終わりの時間が近づいたので、最後の発言として次の通りに述べた。

「僕は、昨日までサファリに行っていた。アフリカは、素晴らしいところだ。僕は、この地を大好きになった。アフリカには可能性がある。焦らずにじっくりとやっていこう。小さく始めてポレポレ(スワヒリ語でゆっくり)と歩めばいいではないか。10年後、いや30から50年後を見据えて確実に前を向いて歩いていこう」。

そう述べて、僕は最後の発言を締めくくった。終了後、すぐに会場の参加者がニコニコしながら近づいてきた。「良かった。勇気をもらった。アフリカ・モデルを考えるには、アフリカの強みを理解することだ、というメッセージが心に染みた」、というコメントをもらえた。一緒に登壇したモデレーターやパネラーに謝意を示して、その場を後にした。

藤沢久美さんからもフィードバックをもらった。彼女のツイッターでは、以下の通りつぶやかれていた。

「上から目線の発言が多い中、パネリストの中で唯一堀さんだけがアフリカの立場に立った発言でハートがありました。とても誇らしかったです。」

そうなのだ。今回、自分が意識したのは、発言内容よりも、心を込めて発言する姿勢を持ち続けようと思った点だ。他のパネルを聞いていて気になっていたのが、かしこまった言語になったときに、普段の彼らが持っているパワーが響かなくなってしまっていることだった。「かしこまったり、他をまねする必要は無いのだ、アフリカ人はアフリカ人の良さに気付き、アフリカ・モデルをつくれば良いのだ」、と心を込めて、熱く語りかけたかったのだ。その気持ちが、そのビートが伝わったようで、とても嬉しかった。

パネル後の休憩中に多くの方から声をかけられた。知らぬ間に、南アフリカの大統領やタンザニアの大統領が登壇するアフリカ経済サミットのエンディング・セッションが大会場で始まっていた。僕は、その場で佇んでいたが、暫くして会場を後にすることにした。

そのときに、ツイッターで呟いたのは、以下の言葉だった。

「終わった! 良かった!! 褒められた!!! 嬉しい!!!!」

2010年5月9日
ドーハの空港ラウンジにて執筆
堀義人

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コメント(2)

  • 堀さんが唯一の日本人登壇者として、フォーラムに参加され
    発言されたことを、誇りに思います。
    そして、アフリカの立場に立って問いかけ、語りかけられたことを
    素晴らしいと思いました。

    主人は、地元NGO・研究機関と協力しながら、アフリカに自生している
    非食用植物を使って、バイオ燃料を作ろうとしています。
    ジェフリー・サックス教授のBOPビジネスを実践しようとしていますが
    堀さんの提案されるビジネスモデルが生み出せればいいなぁ、と思います。
    10年・20年後を楽しみにしていてください!

    投稿者: イザベル

  • スワヒリ語の挨拶について。(少々おせっかいですが。。。)

    「ジャンボ!」というのは、正しくは、
    「フ・ジャンボ?(あなたは元気ですか?)」 もしくは、
    「ハム・ジャンボ?(あなたたちは元気ですか?)」 です。
    それに対し、
    「スィ・ジャンボ!(私は元気です)」
    「ハトゥ・ジャンボ!(私たちは元気です)」 と答えます。

    ですから、堀さんがスピーチの際に冒頭で挨拶されたときは
    「ハム・ジャンボ?」の方が良かったんですね。

    この「ジャンボ」を使った挨拶の前に
    「ハバリ・ザ・レオ(こんにちは)」「ンズーリ!」 とか
    50歳以上の長老に対しては、「シカモー」「マラハバ」 とかの
    やり取りがあります。
    こちらの方々は、挨拶をとても大切にされており
    何よりも真っ先に覚えなければならない言葉であり
    この風習も文化のひとつかな、と思います。

    投稿者: イザベル

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