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2010年7月 5日 (月)

組織人 あすか会議2010~志士達の伝説がここから生まれる

いよいよグロービスMBAの在校生と卒業生を対象とした泊り込みのコンファレンスである「あすか会議」が始まる。この週末は、大学院が東名阪の3キャンパスとも全て休みとなり、学生、教員、スタッフ、そしてゲスト・スピーカーとともに山に籠り学ぶ予定となっていた。グロービスの年中行事となった「あすか会議」には、今年も凄いメンバーが集うことになっていた。

今年で6回目を迎えるあすか会議。発端は、僕がダボス会議から帰国後すぐに、学生とともに冬の高野山に登り、お風呂につかりながら思いついたものである。(「ダボス会議からあすか(ASKA)会議へ」を参照)  

第2回目のあすか会議から、前日の夕方よりグロービス経営大学院の教員リトリート(泊り込みの研修会)が併設して開催されることとなった。教員も皆あすか会議に参加するならば、前日から泊り込み、大学院のビジョンに関して皆で語り合おう、という趣旨から始まったものだ。今年のテーマは、「グロービスらしい研究活動とは何か」である。学術系の大学院とは違い、グロービスは、経営大学院であり、リーダー養成を目的とするものだ。「アカデミックに偏らない、本当に社会に役立つ研究とは何か」、を議論する予定となっていた。

山梨県小淵沢にあるあすか会議の会場「リゾナーレ」に到着した。山の中は空気がおいしい。部屋にチェックイン後、専任教員との夕食会に向かった。夕食会を、単なる食事と談笑の場にしないのが、グロービス流だ。せっかくの教授陣が集まる機会だ。各自の最近の関心事を発表してもらうことにしている。今回は、3人の教員が発表した。発表10分間、質疑応答15分間で、時間管理しながら進んでいく。「家元制度の研究」、「日本の流通業の課題」、「日本在外資系企業の最新動向」などの発表があった。優秀な方々が周りにいると、知的興奮が得られてとても楽しい。

翌朝、会議室に向かう途中の小路で、山の空気を思いっきり吸い込み、会議室に閉じこもり教員リトリートに臨んだ。事前にHarvardやChicagoのビジネススクールの事例(ケース)や研究体制に関する論文を読み、「グロービスとしてどういうリサーチをするべきか?」を議論した。5人ずつ6グループに分かれて討議し、その上で全体共有する形式をとった。議論の流れで、既存大学の学術的研究手法や論文(ジャーナル)偏重指向に捉われずに、リーダー育成にふさわしい研究、そして社会に役立つ発信形態にする方向性を確認できた。

昼食時に、パネルディスカッションの登壇予定者と打ち合わせし、12時半に大ホールに向かった。東京、名古屋、大阪から集まってきた学生達とすれ違う度に、挨拶をする。どんどん気運が高まってきた。

定刻に開会式が始まった。音楽が流れ、「志士達が集う学びの場」というテロップが大きく流れ、会場のボルテージが上がる。そして、トップバッターとして僕が壇上に登った。僕が、オープニングのスピーチをし、星野リゾートの星野さんが続き、そして最後に学生企画委員長がスピーチで締めくくる。あっという間に開会式が終わり、いよいよ第1部の全体会が始まる。

壇上の配置が代わり、スピーカーの紹介がされる。最初のスピーカーは、旭化成の蛭田前社長。蛭田氏は、30分間強で、旭化成の改革をわかりやすくスピーチされた。そして45分間の対談と質疑応答の時間に入った。「どん底を経験しているから開き直れた」、「社内で3回ほどSeclusion(干された)が、自分の姿勢を結局変えなかった」などの人間味溢れるお話を頂き、場内が初っ端から最高潮に達っしているのが感じ取れた。

そして、15分間の休憩時間を挟み、第2部がスタートした。パネラーは、ワークスアプリケーションズの牧野社長、ATカーニーの梅澤・日本代表、そしてゴルフダイジェスト・オンラインの石坂社長だ。僕の親しい仲間が手弁当で駆けつけてくれたのだ。テーマは、「日本をハチャメチャに元気にする戦略とは」である。ワールドカップ・サッカーで多少は日本が元気になった。だが、いまだ閉そく感が漂う。やはり、元気が必要だ。それも「ハチャメチャ」な元気だ。僕が、引き続きモデレータとして登壇した。会場に活気が溢れ始めた。

第3部が始まった。第3部は、3つの分科会に分かれて実施された。僕は、ワークショップ形式の「世界観」に冒頭参加することにした。日本GEトップの安渕さんが、オープニングのプレゼンをされた。「世界観」のテーマに相応しく、スライドは英語で書かれていた。

その後再生の部にも参加した。「再生」の部は、エーエム・ピーエム・ジャパンの相澤前社長のモデレートのもと、星野リゾートの星野社長、会社更生のプロでもある永沢弁護士、再生ファンドの代表としてジェイ・ウィル・パートナーズの佐藤社長という陣容だ。こちらもとても面白かった。

印象に残った言葉を紹介しよう。「破たんは、素晴らしい」by星野社長。「破綻した会社の仕事をするときに心がけていること。落ちてくるナイフは掴もうとするな。落ちたナイフを拾え」by永沢氏。

ちなみに、第3部のもう一つのテーマは、「環境」である。登壇者は、元経済産業省でテレビでもおなじみの澤昭裕氏、環境ベンチャーの雄でもあるリサイクルワンの木南社長、国立環境研究所の藤野純一氏だ。これも興味深い。

第3部のあと、17時15分からゲスト・スピーカーを集めたティー・パーティが開催され、19時からアルムナイアワード(卒業生表彰)と夕食会、21時から登壇者を囲んだ小グループで議論するナイトキャップと続いた。22時30分過ぎからゲスト・スピーカーを招いてのワイン放談だ。知的興奮からか、どうしても日本を取り巻く環境と今後というような真面目な議論になっていた。

解散後、深夜に一人お風呂場に向かった。露天風呂となっていた混浴風呂では、男女の学生がなにやら楽しげに議論していた。部屋に戻り、テレビを付けた。何とアルゼンチンが0-3で負けていたのだ。最終的には、0-4となりゲームオーバーとなった。昨晩のブラジル敗退に続き、衝撃的な結末を確認して、床についた。

朝6時からの早朝企画(ヨガ・ウォーキングなど)はパスして、7時からのパワーモーニングに遅れて参加した。朝から皆、熱いのだ。そして朝9時から第4部の分科会セッションに入った。テーマは、3つだ。「クリエイティビティ」、「歴史観」、そして「メディア」だ。僕は、メディアの分科会に参加した。登壇者は、元受講生のアルファブロガーの徳力氏(何とツイッターで20万人のフォロワーがいる)、ダイヤモンド社の藤井副編集長、そしてJBpressの川嶋氏だ。

「クリエイティビティ」のセッションのゲストはカフェ・カンパニーの楠本社長と「Soup Stock Tokyo」を運営するスマイルズの遠山社長。「歴史観」のワークショップのゲストは、ライフネット生命保険の出口社長だ。どれも魅力的で、参加するセッションを選ぶのに学生達も皆悩んでいるようだった。

第4部も3つの会場に分かれて開催される。「コミュニケーション」、「キャリア」、「パワーと影響力」だ。僕は、「コミュニケーション」のセッションに参加した。テーマは、「トヨタ事例に学ぶグローバル社会のリスク管理とコミュニケーション」だ。フライシュマンの田中社長がメインスピーカーだ。内容は門外不出なので、ここでは紹介できない。

そして、いよいよ最後のセッションの第6部が開催された。あすか会議の大トリを務めるのは、田坂広志氏だ。テーマは、「なぜ、我々は志を抱いて生きるのか」、だ。ここでは、パソコンの使用も控えるように言われ、皆が田坂氏のスピーチに聞き入ることとなった。

素晴らしい感動に参加者が包まれたまま、最後の閉会式へと進行した。日本GEの安渕さんからクロージングのコメントを頂き、学生企画委員長がスピーチをして、僕が締めくくりを行った。皆が立ち上がり、「来年もあすか会議で会いましょう」と唱和して、あすか会議2010が閉幕した。

僕らを歓迎しているかのように、会期中に断続的に降っていた雨がパタっと止み、太陽が顔を出していた。オープンな中庭で立食の「フェアウェルランチョン」を楽しむ参加者の顔には、達成感と充実感そして、意欲が漲っているのを感じ取れた。

僕は、特急あずさに乗り、帰路に着いた。車中熟睡し、帰宅した。今回も本当に絶大なる学びを僕自身得ることができた。僕がプログラムを設計するときに心がけているのは、テーマと登壇者だ。面白い話は、面白い人からしか生まれない。そのテーマに合った「面白い人」を発掘し、招待するところから企画が始まる。今回は、その登壇者に恵まれたと言えよう。手弁当で来てくれた登壇者の皆さんには、この場を借りて感謝の意を示したい。

リーダーを志すならば、グロービス等で徹底的に学びながらも、良質なリーダーに触れ続けることが重要だ。様々な分野の第一線で活躍するリーダーに触れ、知的に興奮し、迫力に圧倒され、謙虚さに感動する。トップリーダーに触れ続けるにより、更なる高みを目指す気概が生まれる。僕もそうやって成長してきたのだ。

「あのリーダーの何が凄いのか。僕には何が足りないのか。どうすればあのようになれるのか」、と世界のリーダーに触れながら考え続けた。そして20年以上に亘り鍛え上げてきた結果、世界次元のリーダーの入り口がかすかに見え始めた気がしている。

僕は、グロービスの学生に、僕が得たのと同等の「リーダーから学ぶチャンス」を与えたいと思い、あすか会議を始めた。トップレベルのリーダーが何を考え、どう行動してきたのかを直に感じる機会を与えたかったのだ。その刺激の化学反応は、想像を超えるものであることが、参加者のツイッターを読み理解することができた。大成功である。

このあすか会議の学びを胸に、数多くの「創造と変革の志士」が飛び立っていって欲しい。そして、社会に大いなる創造と変革のダイナミズムを生み出して欲しい。このあすか会議から志士達の伝説が生まれるのだ。

2010年7月4日
自宅にて
堀義人

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コメント(1)

  • あすか会議の様子わくわくしながら読ませていただきました。海外で学び零細総合商社を経営するものとして、大変印象に残った言葉としてどん底を経験しているから開き直れたです、事業を営むものはどん底を何度も経験するので、寝る前に毎日1度は自分の会社を倒産させ(頭の中で)再構築させる思考が必要です。アカデミックに偏らない本当に社会に役立つ研究はまず自分が本当に好きな事業の発見、世界に通用する英語力、国内、国外の人脈だと思います。
    素晴らしい思考には素晴らしい行動力が伴うことが必要だと思います。
    まさにNO PAIN NO GAINが適切な言葉だと思います。

    投稿者: 上羽

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