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2010年8月 9日 (月)

日本人・アジア人・地球人 アフリカにおける国際奉仕活動への参加報告~(2)良い教育環境を子供たちに

朝6時にモーニングコールが鳴る。朝6時半から7時15分まで朝食をとり、朝7時30分に集合する。そして、自分の仕事がアサインされる。このルーチンが、4日間続くことになる。

今回のプロジェクトでは、参加者は7つのチームに分かれる。トイレチーム、教室チーム、幼稚園チーム、テニスコートチーム、孤児チーム等に10人ずつ分かれるのである。僕は、長男から3男までと同じ教室チームにアサインされた。妻と4男・5男は、幼稚園チームだ。

水や菓子が入っている茶色の紙包みを受け取り、チーム単位でバスに搭乗する。10分ほどバスに揺られて、小学校に到着した。青い制服を着た生徒たちが僕らを迎えてくれた。「制服だけは皆が着ることを要求されるので着てくるが、各家庭の経済環境は良くない」とのオリエンテーションでの説明が、頭をよぎる。

僕らへの歓迎の意を込めて、この字状に立っていた合唱団が歌い始める。途中から踊りも入った。美しい歌声と、リズム感が良い踊りに僕らもついついつられて、体が揺れる。歌い終わり、僕らは、小学校の中を巡回し、説明を受けた。小学校は、まだ復興の途中という感じだ。建物は、ほぼ出来上がっていたが、トイレはまだ壊れたまま、机も椅子もない。壁はコンクリートのままあるいは、荒廃したままだった。現地の小学生がクラスの中にいた。この日から、冬休みに入るらしい。青い制服から露出された美しい黒い肌。快活な顔に輝く白い歯と、真っ白の目の中で光る黒い眼球が印象的だ。

「この学校を復興させるのだ。この子供達に、良い教育機会を与えよう」、という強い気持ちが内面から湧き上がってくる。僕らは、チームリーダーに率いられて、持ち場に着いた。僕らの担当は、教室の復興だ。僕らは、教室の壁に紙やすりをかけて拭き、そしてペンキ塗りに勤しむこととした。

途中、妻と4男・5男を見に行った。子供達も一心不乱に、幼稚園の遊具を塗り続けている姿が目に入った。午前中2時間働いたのちに、朝10時に休憩時間に入った。僕は、子供達とともに、トイレに行き手を洗い、木陰を見つけて座り込んだ。茶色の紙袋を開けて、水を飲み、リンゴとお菓子を体の中に取り込む。

あたりを見渡すと、3種類のTシャツがあることに気がつく。僕らボランティアは、オレンジ色だ。黄色が、現地の労働者。そして水色が、バオバブ小学校の生徒達だ。高学年の生徒たちも数人手伝ってくれている。

僕ら、オレンジ色の労働者は、黄色のTシャツを着た現地の労働者の下、水色のお手伝いと一緒に働くことになる。ここジンバブエは、昔ローデシアと呼ばれ、英国の植民地だったため、公用語は英語である。現地の小学校でも英語で教えていたから、英語でのコミュニケーションには、まったく問題は無い。

アフリカのこの地では、毎日が青空だ。雲ひとつない。10月から11月に雨季がある以外は、毎日快晴だと言う。空気が乾燥しているので、朝晩が寒いが、昼間は暑くなる。休憩が終わり、また職場に戻る。だんだん暑くなってくる現場で、僕らはひたすら単純労働を繰り返した。

不思議な巡り合わせである。僕は、基本的に単純労働が嫌いなのだ。東京では、自らが指示を受けて働くことは殆どない。基本的にビジョンを提示し、組織をつくり、気持ちよく働いてもらうのが、経営者としての僕の役割である。この奉仕の場では、まったく逆である。僕は末端の末端で指示を受けて、初めて行う単純労働を行うのだ。

多くの経営者が、旅費と参加費を払い、世界各地から集結して、このプロジェクトに参加しているのだ。普段は、いわゆる知識労働者として指示を出す立場だが、ここでは建築現場の労働者から支持を受けて、単純作業を繰り返すのだ。「どうしてこのプロジェクトに参加することにしたの?」と質問をすると、「社会に何らかの形で、還元したいと思っているからだ」と答えが返ってきた。今は、純粋にあの子供達に良い教育環境を与えたい、という気持ちから、皆が頑張っているようだった。

そして、13時となり、僕らの「仕事」を終えた。約5時間みっちりと働いた。顔と手には、ペンキがびっしりとこびり付き、ズボンとTシャツは、白いペンキで使いものにならかった。

オレンジ色の奉仕労働者は、バスに乗りホテルに戻った。慣れない肉体労働で体は疲れていた。このプログラムでは、基本的に午前中4時間から5時間労働し、午後は自由時間となっていた。家族が楽しみ、社会見分を広められるようにという配慮であった。この日は、全員でビクトリアの滝を訪問することになっていた。

世界の7不思議の一つに選ばれているビクトリアの滝は、僕の想像を超えるスケールであった。ナイアガラの滝と比べても、倍の1.7kmも滝が広がり、滝の高低差も倍近くの100M前後である。水量も倍以上だという。しかも、滝は、滝底の渓谷に陥落している形状になっているので、滝の上部と同じ目線で対岸から水が落ちていく様を見ることができるのだ。場所によっては、滝までの距離が数メートルの近さまで迫っていける。滝の水しぶきで、服がびしょびしょになる。水しぶきのおかげで、その地域だけは、熱帯雨林の植生となっていた。

この滝は、現地用語では、Mosi-Oa-Tayun、つまり「Storm Of Thunder」という意味が付けられている。その意味が良く伝わってくる。まさに、雷のような轟音と、嵐のような水しぶきなのだ。

夜は、屋外の大自然のもと食事だ。その晩は、新月なのか、月が出ていない。当然、地上から発される光も無い。こんなに美しい星空は見たことが無い。天の川がくっきりと見える。天の川にかかるように、南十字星が輝いていた。

現地の言葉では、天の川(Milky Way)は「象の道(Elephant Track)」と呼ばれているらしい。僕は、満点の星に抱かれるように天を仰ぎ、草むらに胡坐をかき、目をつぶった。大宇宙・大自然の中では、小さい存在ながらも、鼓動を打ちながら明らかに生きている感覚を得られた。目を開けた時に、たまたま後ろから懐中電灯で照らされた。光が照らしだしたところに、ジャッカルの群れがいた。ジャッカルの目の光と耳の形が印象的であった。

2010年8月8日
ジンバブエのホテルにて執筆
堀義人

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コメント(4)

  • 堀学長、こんにちは。GMBA2006の伊藤正芳と申します。
    私はいまお隣の国、マラウイにいます。2年間休職し、JICAの青年海外協力隊に参加しました。アドミニストレーターとして病院で働いています。
    堀学長のように多くのリーダーが途上国の現状を知ってほしいと願っています。それはただ単なる憐れみの対象としてではありません。このひとたちはよく生きられる可能性を秘めているし、それはみんなの手でよくしていけるはずだ、と気付いてほしいということです。
    現場に身を投じてみて、みんなが働きやすいしくみをつくるだけでも、この停滞した状況をもっとよくできるはずだと肌で感じています。不平不満の数々も「宝の山」に見えてきます。
    そして、こんな不平不満のなかでも底抜けに明るく生きているひとびとに、底知れないパワーも感じているところでもあります。ご帰国後は、こんな人間が持っているパワーを、堀学長の人間力を通して日本の同志にも伝道いただければ幸いです。

    投稿者: 伊藤 正芳

  • 2つの点で、率直に、とても感動いたしました。

    一つは名だたる経営大学院のトップでありながら、このような機会、泥臭い汗をかき、全く異なる境遇、立場の人たちにも思いを馳せる場へと自ら参加してゆく(経営者、一人の日本人としての)あり方。そして、家庭の父親として、堀家の家族教育のあり方です。ともに、そのマインドを私自身の目標とさせて頂きたく思っています。

    私は堀様がこうした機会へ参加し、(ツイッターやブログで)発信されていることの意義は、とても大きいと思います。
    「子供たちの面倒を見て、学校を建て直し、コミュニティを支えることである」というプロジェクトの目的、参加者自身への効果という第一義な意味合い以上に、受信側が一人の大人として、日本人としての在り方に新たな知見を広げてゆく機会を得ることができるからです。

    あとは、日本へ帰国後、ご子息様を含め、いかにしてこの経験を日々の意識や持続的な行動へ繋げてゆくかがポイント、難しさではないかと想像しています。(しかし、このような経験は躍起になって何かの成果に結び付けようとするより、どこか頭の片隅に残っているものが、ふと忘れた頃に思い出され、じわじわと効いてくるのかもしれませんね・・・特に子どもたちにとっては)

    投稿者: 栗山 啓

  • 20数年前アフリカの一番端のスペイン領セウタにいたことがあり、現在もアフリカへの日本の中古車輸出、最近ぼつぼつとアフリカからの鉄鉱石、レアメタルの輸入などを事業としておりますそんなことでアフリカには思い入れがあります。
    堀さんの国際貢献素晴らしいと思います、また先日スーダンで活躍する川原医師の話を聞きにゆきました。
    その中でアフリカには何もないが人は希望を持っている、日本は何でもあるが人に何かが欠けているという話がありアフリカに住んだものとして痛いほど理解できました。

    投稿者: 上羽 義弘

  • ジンバブエ記、楽しく拝見させていただいております。

    単純な作業の先にある、「崇高な目的」
    まさにレンガ積みの逸話・・・

    私の業務はこれに近いものなので、
    この「なんのために(先にある大きな目的)」を自分たちのやっていることに
    転換して考えることの重要さを、日々感じております。


    また、夜、満天の星と深い闇の大地に包まれて、
    堀さんが目を閉じた描写にて・・・

    自然の中に身を置き、その場に「在」(ある)と感じた時の感覚

    「居る」ではなく「在(ある)」と感じることで、
    自分自身を含めた取り巻くその全てが、ひとつながりの存在であるかの
    様な感覚を覚える。

    自分自身が山の中で感じたこの感覚を思い出し、
    その感覚を堀さんの文章に重ね

    鳥肌を立てたところでした。


    続き、心より楽しみにしております。

    炎天下での作業、くれぐれも熱射病にはご注意くださいませ。
    (特に末のお子様、家の4歳の娘が先日キャンプで熱出してました。)

    無事のお帰りおまちしております。
    失礼いたします。

    投稿者: たかお

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