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2011年3月 3日 (木)

組織人 ハーバードかロックフェラーか?

次の通り、僕が初めて英語で書いたエッセイが、世界的起業家集団(Entrepreneur's Organization=EO)のウェブサイトに掲載された。

この記事を出させるのに、実は苦労したのだ。1月の上旬にEOの機関誌に「アジア地域から執筆者が少ないから」と頼まれた。躊躇しながらも、「日本の存在感を上げるために一肌脱ごう」と思い引き受けた。ダボス出張前のバタバタしている時に、慣れない英語のエッセイを書くことになった。やっとのことで書きあげ、締切期日に間に合わせて、発信した。

暫くして、先方から「45以上のエッセイが届いたので、オマエのは、結局没になった」と言われた。ここで、引き下がると、男がすたる。僕は、ここからもの凄い勢いで、担当者に食ってかかった。「あなたが書いてくれと言ったから書いたのだ」。「アジア地域の執筆者が少ないんでしょ」。「日本人が英語でエッセイを書くことの難しさを、認識しているのか?」等だ。

最後は、メールに返事せずに、冷たく無視した。暫くして、「ブログにアップすることになった」、と言うメールが入った。僕は、もう一つ確認した。「機関誌には、掲載されるのか」、と。すると、「来月に載る」と。ヨッシャー。僕は、初めてここで、「Thank You」と言って、感謝の意を表した。

その経緯で書きあがったものです。
原文は、EOのサイトでも確認できます。
末尾に日本語訳も掲載しました。

<英語文>

John Rockefeller or John Harvard?

By Yoshito Hori, an EO Japan member and chairman and CEO of GLOBIS Group.

Who do you respect more: John Rockefeller, founder of Standard Oil, or John Harvard, founder of Harvard University? Perhaps the better question is: Who do you value more— the person who built a money-making empire or the person who created a leading educational institution?

This is a tough question to tackle, especially when it comes to business. I faced a similar query after I started GLOBIS, one of Japan's leading venture capital firms, upon graduating from Harvard Business School (HBS) in 1992. The concept was simple: I wanted to create an HBS-like institution in Japan using case methods to educate visionary leaders. I started this as a for-profit entity, and it quickly became a successful and influential organization.

The business achieved great success, netting a 30- to 50-percent annual growth rate in the first 10 years. What’s more, we expanded from Tokyo to Osaka and Nagoya, and we made more than US$10 million in profit. We achieved incredible success, but ultimately, we had to decide what direction we wanted our business to take— stay on the profitable route or build a leading educational institution? Should we make GLOBIS public and capitalize on our success, or convert it into a not-for-profit, allowing us to build a university that could last several hundred years?

If we chose the former, we knew we would become very rich. If we chose the latter, we could create Asia’s number one business school, even if that meant we couldn’t receive dividends or capital gain. We spent a year and a half mulling over the options, trying to reach our conclusion. Personally, I went through a lot of philosophical questioning. What is the purpose of life? What do I want to use my life for? What do I value the most? To solve this questioning, I used meditation to remove myself from greed and the desires for money, power and fame. In time, I started to realize who I was and what I wanted to achieve in life and business.

In the end, we decided to create a foundation (an educational corporation, really) and donate our business and cash. We even obtained University status. Since our decision, GLOBIS has become the largest business school in Japan, ranking number one for 2008 and 2009. We are now following the path to become number one in all of Asia, and we have a purpose. Looking back, I don’t regret my decision. My friends have become billionaires, but I made the right choice. I enjoy teaching, educating leaders and creating new industries. I guess I’ve decided to follow John Harvard’s path.

Which do you follow?


<日本語訳>

ジョン・ロックフェラーかジョン・ハーバードか?

EOジャパンメンバー、グロービス・グループ代表、堀 義人

スタンダード・オイル社を設立したジョン・ロックフェラーと、ハーバード大学の基礎を築いたジョン・ハーバード ―あなたならどちらを尊敬するだろうか。質問をもう少しわかりやすくしてみよう。巨万の富を生み出す帝国を築き上げた人物と、一流の教育機関を創り出した人物。どちらを高く評価するだろうか。

答えを出すのは簡単ではない。僕も以前、この問題を改めて考えさせられたことがあった。それは、1992年にハーバード・ビジネス・スクール(HBS)を卒業し、日本の第一線で活躍するベンチャーキャピタルと教育機関である、グロービスを立ち上げた後のことだった。事業のコンセプト自体は単純なものだった。僕は日本で、ケースメソッドを駆使し、明確なビジョンを持つリーダーを育成する、HBSのような教育機関を立ち上げたかったのだ。当初は営利を目的としてスタートし、その後グロービスは瞬く間に成功して有力な教育機関となった。

ビジネスは大成功を収め、最初の10年間は毎年30%から50%という成長率を達成することができた。さらに拠点を東京だけでなく大阪、名古屋にも広げた。このような成功を収めながらも、僕らは最終的にはどのような方向を目指したいのか – つまりこのまま利益を生む流れに乗り続けるのか、あるいは最先端の教育機関を目指すのか、という二者択一に迫られた。グロービスを公開企業にして、成功の勢いそのままに突き進むべきか、あるいは非営利の道に転換し、数百年にわたって伝統を築き上げられるような大学を創設できるようにするべきか、という二者択一だ。

前者を選べば、膨大な個人資産が得られることはわかっていた。後者を選択すれば、配当やキャピタル・ゲインは期待できないけれども、ビジネス・スクールをアジアでNo.1にまで発展させる可能性がある。一年半の間、僕たちはどうすべきかじっくりと考え、自分たちなりの結論を出そうとした。僕はこの間、一人の人間として、さまざまなことを冷静に自問した。人生の目的は何だろうか。自分の人生を何のために使いたいのか。自分は何を最も重視するのか。こういった問いかけに対する答えを得るために、沈思黙考して欲から身を遠ざけ、金銭や権力、名声に対するこだわりを捨てるよう努力した。そうするうちに、自分自身のこれまで、そして人生やビジネスにおいて何を成し遂げたかったのかが、はっきりと見えてきたのだ。

最終的にグロービスは、学校法人を設立し、学校事業とビジネスで得た資金を学校法人に寄付することにした。そして、大学の設置認可も取ることができた。以降、グロービスは日本最大の経営大学院となり、2008年、2009年と連続で、学生満足度No.1のビジネス・スクールとしての地位を不動のものにした。今ではアジアでNo.1となる目的も見据えており、邁進している。今振り返っても、僕は自分の決断を後悔はしていない。友人たちは巨万の富を築いている。けれども、僕の選択は間違っていないと言い切れる。教えること、そしてリーダーを育てること、新しい業界を創り出すこと、僕はこうしたことが大好きなのだ。だからこそ、ジョン・ハーバードの背中を追いかけることにしたのだと思っている。

あなたなら、どうするだろうか。


2011年3月3日
堀義人

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コメント(1)

  • 堀義人様

    John Rockefeller or John Harvard?を大変興味深く拝読しました。

    堀様の生きざま・信条を拝察するにまず伊庭貞号剛の「君子材を愛す。之を取るに道あり」と住友に伝統的に生きている「自利利他公私一如」が思考・行動に滲み出ているように受け取りました。

    John Rockefeller or John Harvard?…何れもビジネスモデルの代表例ですが、別の視点から見ると成功事例にみられる負の一面をのぞかせています。メール添付した「質素な身なりの訪問者」は一つの挿話として語られたものですが、心に迫る話です。

    Rockefellerについては別の紹介記事があります。それは「プロフェッション」とは何か?の原点が?1920年代、ロックフェラー&カーネギー財団副理事長フレックスナー(A.Flexner)の定義として紹介されています。①~⑦の紹介例で最後の⑦がポイントです。それは利他主義の精神にみちていることと述べています。所謂Altruismです。堀義人様がどのような理念で事業を構築、組み立ててゆかれるのか、われわれは興味深く、支援してゆきたいと希っています。

    投稿者: 佐藤陽一

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