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2011年6月 9日 (木)

個人 ハーバード20周年同窓会の風景

NY経由で、ボストンに到着。今回は、珍しく一都市に滞在型の出張だ。目的は、3つ。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の卒業生理事会の総会に出席する為と、リユニオン(同窓会)に参加する為と、米国レッドヘリング誌主催のベンチャー・キャピタル会合でスピーチをする為だ。全てがボストンで開催だ。

今回のリユニオン(同窓会)には、下の子供3人(3男~5男)を連れて5人で来た。ちなみに、5周年は夫婦2人で参加、10周年は子供2人+義理の妹と5人。15周年は子供5人+義理の母と8人で参加した。家族のライフサイクルととともに、同行者の人数も変わってきている。そのうちまた2人参加に戻るときが来るのであろう。

ボストンのホテルに着いた。旅行中、機内でゲームや子供番組に興奮し続けた子供達は、時差ボケと疲れのためか、すぐに眠りについた。僕は、その日の夜に行われた卒業生理事会の食事会に一人で参加した。久しぶりの面々に会えて、充実していた。皆、震災後に僕が出した3600名宛てのメールを「読んだよ。面白かった」と口ぐちに伝えてくれた。

翌日も朝から理事会だ。この日のHBSの理事会には、過去の理事(僕の任期は2008年で終了)も参加可能となっていた。

一つ目のアジェンダが、ハーバードのイノベーション研究所の取り組み紹介だ。「アントレプレナーの教授陣がHBSを起業家精神(アントレプレナーシップ)中心に変えたように、HBSがハーバードを変える。ハーバードが変われば世界が変わる。ハーバード大学の各スクールが総力を上げて、新たな創造に取り組む。そのど真ん中にいるのがHBSだ」。意欲的な取り組みだ。

二つ目のアジェンダが、「スマートグリッド」のケース討議だ。理事会でケース討議というのも不思議な感じがするが、これは「卒業生が折角理事会に参加するならば、学びも得たい」、という要望があり、実現したものだ。

その討議の中で、教授が「1996年からスマートグリッドのベンチャー企業の非常勤取締役に就任してきたが、一向に立ち上がらない」と嘆いていた。スマートグリッドは、まだまだ先送りされそうだ。ま、実現しても、せいぜいスマートメーターとそれとの通信程度であろう。

スマートグリッドは、そもそも誰が費用を負担するのか、そのコストに見合ったリターンがあるのかが、まだまだ未知数のようだ。シスコ、グーグル等が熱心だが、政府の規制、電力会社の消極的姿勢もあり、動きが鈍い。韓国の友人は、韓国ではスマートメーターへの投資が始まりそうだと教えてくれた。

僕も、通信機能付きのスマートメーターによる、ピーク電力の削減(価格をこまめに変えることによる)や、通信を通しての各戸電力使用量把握のメリットはあるが、それ以上は現時点では想定しにくい気がする。「流行り言葉」に流されることなく、自分の考えを常に持つように努力していきたい。

最後に僕は、質問してみた。「スマートグリッドの定義って何ですか?」。教授からは、明確な答えが返ってこなかった。ベンチャー・キャピタルやっているとよく分かるのだが、「流行り言葉」が出来ると、必ずバブルが発生するのだ。過去においては、「ナノテク」、「クリーンテック」等だ。

3つ目のアジェンダが、HBSが今取り組んでいる「FIELD」の概要説明だ。意欲的な、イニシアティブを次々と実現しているのが、よく理解できた。

ランチの後、HBSのビデオ撮影に応じた。僕一人がフィーチャーされるインタビュー形式だ。思ったよりも撮影に時間がかかってしまった。午後3時半ごろに、妻と子供達と待ち合わせして、ハーバード・スクエアに向かった。子供達に、妻と出会った場所やハーバードのキャンパスを見せてあげたかったのだ。

ハーバードのキャンパスに座り、のんびりすることにした。子供達は、日本から持ってきたサッカーボールでじゃれ合っていた。晴れたり曇ったり、風が吹いたり止んだりの不思議な天気だ。目の前に白い仮設のテントが見えた。卒業式の準備であろう。20年前にこの地で卒業した日のことを思い出した。その日は、ハーバード・スクエアにあるメキシコ料理店で、家族5人で夕食を楽しんだ。

翌朝、ボストンは晴れ。朝8時半からDeanの挨拶、そして教授による最新研究のプレゼン・セッションが3つある。これが実に面白いのだ。久しぶりに仲間に会えるのも、楽しみだ。バスに乗り込むと早速、セクション仲間と同席した。

キャンパスにある大きなホールで、ノーリア(Nitin Nohria) HBS学長が、インド訛りの英語で挨拶した。「100年前のトップ10の大学は、8つがドイツで、2つが英国。今は、ほぼ米国が独占している。ドイツの大学は最高で33位だ。100年後に、ハーバードがトップでいるかどうかは、わからない。だからこそ、変化と革新を行うと共に、良いものを残し続けるべくコミットするのだ。HBSは、5つのIにFocusする。-Innovation - Intellectual - International -Inclusion -Integrationだ」。

学長のスピーチの後に、ビル・サロモン教授、竹内先生、デイビッド・ヨーフィ(David B. Yoffie) 教授の3名のプレゼンテーションを聞いた。HBSの授業は、グロービス経営大学院同様、原則ケースメソッドだが、教授から研究成果のプレゼンを聞くのも面白い。グロービスのリユニオンでも同じフォーマットで、教員のプレゼンを企画してみたい。

デイビッド・ヨーフィ教授のプレゼンの際に、いくつかの質問を受けた。面白いので、みんなにも聞いてみることにした。(1)米国の結婚の何パーセントが、オンライン結婚サイト等によるものか? (2)米国の13~19歳の一日あたりの平均ショートメッセージ(SMS)発信数はいくつか? (3)50歳以上でメアドを持っている人の割合は?

答えは、それぞれ、(1)結婚に占めるネット出会いの割合は、20%だと言う。イーハーモニー社だけでその4分の1を占めると言う。(2)13~19歳の一日平均SMS数は100を超える。「平均」だから驚く。(3)61~72歳のうち91%がメアドを持っている。時代は、明らかに変わっていく。

これらのプレゼンの合間に、子供達の様子を見に行くのが楽しいのだ。ベイカー図書館の前の芝生に、「キッズ・キャンパス」がつくられ、そこに設置されている遊具で皆自由闊達に遊んでいた。3男は大好きなサッカーボールをひたすらけり続けていた。リフティングが1028回もできるのだ。8歳の4男は、卓球を楽しみ、5歳の5男は、ホッケーゲームが好きなようだった。

午後5時過ぎに、一旦ホテルに戻った。ベビーシッターに子供達を任せて、夫婦2人で、HBSの同窓会のセクション・パーティに参加することにした。HBSは、グロービスと同様に「セクション制」をとっている。1学年は、800人いる(今は900人)。そこで、学年を80~90名単位の「セクション」に分けて親しくさせるのだ。同窓会のパーティもこのセクショ単位で開催される。

セクション・パーティは、1回目の5周年は、レストランで開催され、直近の過去2回は、ボストン在住のセクション仲間の自宅で開催された。アットホームでとても良い。多くの人は、カップルで参加する。セクション仲間の成長を5年ごとに定点観測できてとても面白い。

5周年(1996年、平均34歳):結婚して、一所懸命にキャリアと家庭を構築中。10周年(2001年):景気が凄く良く、ネットバブル長者も出始める。リスクとった人と他の人との差が出始める。15周年(2006年):仕事、家庭のリズムが落ち着きだす。今回の20周年:ほぼ「勝負あり」。各自の生き方がだいたい固まっているようだった。

20周年では、出席者に5周年や10周年の頃の様なギラギラ感は無く、それぞれに人生を満喫している様に見えた。逆に言えば、そういう人しか来ていないのかもしれない。皆子沢山だ。だいたい3人だ。多いと4人。我が家のように5人と言うとさすがにビックリされる。

最初は、多少ぎこちないが、暫くすると昔の気分に戻れるから不思議だ。多くのカップルは、大学院時代から付き合っているから、ゲストの旦那さんも奥さんとも親しく話せる。妻とは、HBS時代から付き合っていたので、妻は僕の友達と仲がいい。ホテルに残してきた子供達が心配なので、早目に帰ることにした。

翌朝、子供達と妻を見送りに、ボストン空港に向かった。月曜日から学校があるし、長男・次男を長い期間置いていくのも心配だから、土曜日の朝発のフライトで家族は帰ることになった。

同窓会(リユニオン)は2泊3日と長い。中二日の昼間は、ひたすら教授による研究成果のプレゼンが行われる。3晩のうち、最初が滞在先の指定ホテルで開催される学年単位のレセプション。次の晩が、セクション・パーティ。そして、最後の晩が学年単位のガラ・パーティだ。

このリユニオンは、5、10、15、20周年、そして55、60周年(+α)をまとめて行う。だから、ライフネット生命の岩瀬氏(5周年)とキャンパスでばったり会ったりすることになる。一方、25周年から55周年までは秋に開催されるようだ。僕は、次回からは、秋の訪問となる。

ここで、HBSの教授のプレゼンで面白かった話を4つ紹介しよう。

(1)「米国では、社歴1年以上の会社は、平均で雇用を減らしている。つまり、雇用を生み出すには、新たな企業の創造が必要になる」(ビル・サロモン教授)。(堀注:大企業が雇用を減らしているのではなく、創業1年以上の会社が平均で雇用を減らしているのには、驚いた。)

(2)「僕が、世界を経営する立場であれば、原子力を造り続ける。太陽光も風力もまだまだコスト的に見合わないし、化石燃料はCO2の問題があるからだ」(HBS教授Joseph B. Lassiter)。

(3)「人々は、体の健康のために何を体に入れるか気にするが、心の健康のために何を心に入れるかを気にしない」。今、TV、ゲーム、等のメディアを通して、子供達の心の健康が失われている」(Dr. Rich)

(4)「今、子供達は平均7時間、TV、インターネット、SNSなどのメディアに接している。全てのメディアは、良くも悪くも教育的効果がある。従い、メディアに接する時間、コンテンツ、場所等をコントロールする必要がある」。(Dr. Rich)。

教授のプレゼンが終わり、一人ホテルに戻った。カップル参加が基本の夜のイベントに一人で参加するのは寂しいものだ。疲れもあり、億劫になったので、ダンスが伴うガラ・パーティを、結局サボってしまった。

日曜日の朝、ホテルのプールでひと泳ぎし、フェアウェル・ブランチに顔を出し、ボストン滞在中の民主党の田村耕太郎氏とブランチ・アポを楽しんだ。夕方は、急きょ決まったボストン在住の日本人向けスピーチだ。ツイッターで、「今ボストン」と呟いたら、「是非講演会を」と返信があり、実現したものだ。あっという間に、定員の60名を越え、75名になったところで締め切ったと言う。夏休みに入ったので、集まらないかと思ったが、意外に社会人の方も多かった。その夜は、参加者の有志と懇親ディナーを楽しんだ。

翌朝、プールでひと泳ぎして、ホテルを移動した。その日からは世界の投資家とベンチャー・キャピタリスト(VC)が集うレッドヘリングの会合だ。その会場があるハーバード・スクエアにあるホテルに移動し、朝10時からのアポに向かった。会議に入るなり、僕が震災後に毎週海外の友人3600名に送り続けた10通のメールの話題だ。「全部読んだよ」と言われた。嬉しかった。

(後は、ツイッターの呟きを3つ)

「アポを終え、スーツからポロシャツ・チノパンに着替える。ハーバード・スクウェアにあるカフェに入り、ハンバーガーをほおばる。ガラスの向こうを多国籍の人々が通りすぎる。食後にアイスティを楽しみながら、英語の詩集に胸おどらす」。

「カフェのBGMは、徹底的に80'sだ。ホール&オーツ、ブリンス、ポリス、デュラン・デュラン。僕はまだ、厨房の喧騒の中、ガラス越しの「人間ウォッチング」を楽しんでいた。一人でボーっとできる時間に、ありがたみを感じながら」。

「ホテルの中庭にあるガラス張りのプールで泳ぐ。3階に位置するのに、それよりも高い木々に守られている。緑の葉っぱ、赤茶色の煉瓦の合間に、青い空が垣間見える。ふと動くものをみつけたのでゴーグルを外して見ると、鳥が挨拶に来てくれていた」。

2011年6月9日
成田に向かう飛行機で執筆
堀義人

追伸.HBSの15周年の同窓会の風景を5年前にコラムの3部作にまとめています。また10周年の同窓会も2001年にコラムとしてまとめています。さすがに、1996年の5周年の時は、ブログに記載していなかったです。

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