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2011年8月22日 (月)

政治・社会 日本のビジョン「100の行動」: 7.エネルギー政策 【経産1】

2011年8月5日に孫正義氏と筆者(堀義人)とが、日本のエネルギー政策に関して「トコトン議論」を実施した。日本は、エネルギー問題が引き金となり第二次世界大戦に参戦した歴史がある。その重要な議題でもあったので、多くの人がインターネットを通して観戦した。

日本のエネルギー自給率は4%(2006年)、原子力エネルギーを国産エネルギーとして換算した場合でも19%と、主要先進国の中では最も低い水準にある。食糧自給率40%と比較しても著しく低い。そのエネルギーを一部の地域に依存する地政学的リスクを、日本は抱えている。それらのリスクを最小化するエネルギー安全保障の基本は「多様性」である。第二次世界大戦への参戦、そして敗戦の教訓を活かすためにも、資源の輸入元とエネルギー源は、多様化する必要がある。

多様性を確保するためには、中長期を見据えた骨太なエネルギー政策が不可欠となる。更にエネルギー自給率を引き上げるために、再生可能エネルギーとともに原子力エネルギーの比率を増やすことが求められている。

事実、政府は2010年6月に、従来の3E(エネルギーの安定供給確保/Energy security、温暖化対策の強化/Environment、効率的な供給/Efficiency)に、エネルギーを基軸とした経済成長の実現と産業構造改革を追加した、『エネルギー基本計画(第2次改定)』を閣議決定した。この計画では2030年に向けた具体的な数値目標として、原子力発電の割合を53%に高めることも示されていた。

しかしながら、3月11日の東日本大震災による福島第1原発の事故以降、政府内で客観的かつ中長期的視点による政策論議が十分に行われないまま、エネルギー基本計画を白紙に戻したこと、さらに原子力発電所の再稼働におけるストレステストを巡る閣内での政策決定が混乱したことに対しては、疑問を感じざるを得ない。

今回の様な原発事故を二度と起こしてはならない。悲しみ、苦しみを乗り越え、猛省し、厳しい現実を直視した上で、感情的に短絡的に反・脱原発と叫ぶのではなく、冷静に日本のエネルギー政策全体に立ち戻って論じる必要がある。

1.中長期のエネルギー政策は4つの視点で総合的に検討を!

1)エネルギー安全保障:
資源の輸入元とエネルギー源の多様化、自給率の向上などを考慮に入れ、石油、ガス、石炭等の化石燃料と、原子力、さらには、水力・風力・太陽光・地熱等の再生可能エネルギーのベスト・ミックスを検討する必要がある。

2)環境・命への影響:
各種電源の発電量当たりの温室効果ガス排出量、さらには、発電電力量当たりの死亡者数などによる、「環境と人命への優しさ」を考慮に入れる必要がある。原子力と再生可能エネルギーが最もその点優位である。

3)実現性/安定性/経済性:
実現性(必要な設置面積)、安定性(気候条件による出力変動)、経済性(電気料金・設備利用率・バックアップ火力発電のコスト、廃炉コスト、廃棄物処理費用)などを考慮に入れる必要がある。太陽光、風力などの再生可能エネルギーは、問題点(コスト、安定性、CO2排出、面積=実現性)が山積していることは事実であり、ドイツの事例を鑑みても原子力発電の代替となるベースロード電源にはなりえない。その点を考慮してエネルギー政策を立案する必要がある。

4)未来志向(50年・100年先のエネルギー):
世界人口は2050年には92億人に達すると予測されており、化石燃料枯渇後は、再生可能エネルギーと高速増殖炉・核融合を含めた原子力エネルギーしか残らないことを考慮に入れ、長期的視野に立った技術開発が必要となる。

上記4つの視点を考えるとしたがって、先ず実現性・代替可能性を十分に確認してから、(原子力を含めた)エネルギー政策を再度冷静になって構築する必要性があろう。

トコトン議論プレゼン資料を参照乞う。
反論部分の資料


2.技術開発のさらなる促進と政治力の発揮を

安定したエネルギー供給のためには、さらなる技術革新を行うと共に、高レベル放射性廃棄物の処分問題解決や原子力サイクルの完成を推し進める等の政治力が必要不可欠となる。

1)化石エネルギー(石油・天然ガス・石炭)
日本近海に埋蔵されているメタンハイドレードの開発技術、クリーンコールテクノロジー開発、コンバインドサイクル火力発電システム等への投資。

2)再生可能エネルギー
経済性を高めるためのエネルギー転換率の向上、設備利用率の向上等への研究開発投資。再生可能エネルギーの補助金のうち90%以上が、設置や運営に投下されるのは、技術革新と言う観点では、疑問が残る。是非研究開発への投資に重点を。

3)原子力エネルギー
高レベル放射性廃棄物の処分問題の解決、次世代原子力発電(高速増殖炉などの第4世代原子力システム・進行波炉・核融合炉など)、原子力燃料サイクルの早期実現のために、技術開発とともに政治力の発揮を期待したい。

4)他エネルギーや電池への投資
燃料電池への研究開発投資、化石燃料以外から水素や合成燃料を生産する方法(またはプロセス)の確立。大規模定置型を含む蓄電池の普及に向けた技術開発・標準化の推進。

5)スマートグリッド等へのインフラ整備
スマートグリッドによるピークシフトでの電力設備の有効活用と需要家の省エネルギー促進、家庭部門におけるエネルギー見える化促進のためのスマートメーターの普及、全国で電力融通ができるインフラ整備(送電網の整備と電源周波数の統一化)も期待したい。


3.官民一体となったエネルギー外交の強化を!

新興国・アジア諸国を中心とした旺盛なエネルギー消費により、各国間ではエネルギー確保という国益と国益がぶつかり合う、厳しい権益争いが繰り広げられている。したがって、資源小国である日本は、政府・民間(事業者)が一体となった、正にオールジャパンの体制を構築しながら、戦略的なエネルギー外交を展開することが必要不可欠である。

その際には、政府開発援助(ODA)や国際協力銀行などの政策スキームと外交ルート(チャネル)を最大限に活用して、エネルギー生産国との二国間関係の強化、エネルギー供給源の多様化、エネルギー輸送路などの安全確保、国際機関との連携の強化による国際協調の促進などを図ることが求められる。

エネルギー政策は環境政策・科学技術政策・外交政策のみならず、日本の経済成長戦略とも密接に関連する。
したがって、国家戦略として総合的・体系的・整合的に推進するには、国(政策当局)、民間(事業者)、地方自治体、国民など緊密に連携を図ることが不可欠である。

特に、エネルギー政策は国民生活や経済活動に大きな影響を及ぼすことから、国民の理解と支持が不可欠である。そのために、積極的な情報公開、政策対話、意見聴取を図ることが求められる。政治家には、安全保障的見地、更には経済発展の礎としてのエネルギー問題という見地で捉えて、積極的に発言し、前に進めて欲しい。

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コメント(6)

  • ・エネルギー政策についての貴ビジョンはおおむね賛成ですが、若干コメントします。

    1.開発課題を網羅的に示しているが、この資金は誰が何時用意できるのか?
    ・かつて20-30年前スウェーデンが提案したPIUSについて米政府高官は新型炉開発を政府資金で実施することはもはや望めないと述べていますが、日本で政府資金で開発できるのはFBR程度ではないのでしょうか?
    ・その点、孫さんが自分の資金で自然エネルギーに投資する事業を進めることは素晴らしいしゲイツが原子炉を開発することも歓迎です。問題は開発の継続性についての信頼度です。
    2.エネルギー問題の中で国が責任を持って計画を実施する課題に資源(人、物、金)に選択と集中する必要があることがビジョンに述べられていないことが気がかりです。
    ・短期的には、電源特会を投入した軽水炉の安全性向上
    ・短期的には、高レベル放射性廃棄物処分体制の再出発(これは別途説明がいるかも知れません)
    3.エネルギー政策推進体制
    ・原子力委員会と資源エネルギー庁の体制見直し

    投稿者: yatsugatake

  • 毎回、非常に興味深く議論を拝見しています。正面からご自身の意見をぶつける姿に感銘を受けています。

    エネルギー政策について、大枠は同感ですが、若干コメントさせて頂きたいと思います。

    1.原子力発電を維持するかどうかについては、安全性、採算性、エネルギー安全保障、国際競争力の議論に入る前に、「失われた信頼」をいかに回復するかが欠かせないと思います。私は個人的には原子力発電の意義を認めていますが、現状では推進は現実的には極めて難しいと考えています。冷却停止が道半ばであり、その先の処理も固まっていない、放射性物質の拡散の影響が特定できていないといことを考えると、福島事故はいまだ「進行中の危機」と言えます。資金的に問題がある東電が処理しきれる問題かも疑問です。今回の対応の中で、政府が示し(そして示し続けている)、(a)クライシス・マネージメント体制の不備、(b)リスク・コミュニケーションの失敗、(c)適正手続きに添わない場当たり的対応は、全ての論理的議論を吹き飛ばすほど政府、メディア、有識者の信頼を失墜させました。信頼回復のためには、国際的にも評価される形で、(1)福島事故の処理がきちんとできること、(2)事故の原因究明・検証をしっかりすることが不可欠です。残念ながら、今の世の中の議論は足元を固めず別方向に向いているように感じられます。加えて、どんなに安全基準を厳しくしても、テロ攻撃の対象となれば原子力事故は発生します。危機対応体制を確立し、危機対応能力を高めることは原子力発電を継続するためには欠かせませんが、現在進行中の危機に対してさえ、東電任せでは不安は消えません。

    2.エネルギー源については、実現性、安定性、経済性を考えた場合には、化石燃料(非在来型を含む)の技術開発は極めて重要です。確かに石油・天然ガスは有限の資源であり、現実的な時間軸の中では再生不可能ですが、数十年以内に、石油・天然ガス資源の供給可能量がピークを迎えると考えるのは疑問というのが、石油・天然ガス開発に携わる技術系の方々の声としてあります。BPも、主要油田の回収率を70%にするという目標を掲げていますが、過去から現在まで採掘された石油の総量は25%以下と言われており、70%という目標はチャレンジングであるとしても、今後、今までの採掘量の1.8倍近い石油が回収されるのであれば、当分は充分供給可能です。つまるところ技術革新と採算の問題です。また、石炭を含めた化石燃料のCO2排出量も技術革新によってまだまだ削減可能です。地球規模で考えた場合、メタンハイドレートだけでなく、シェール・ガス(オイル)やオイル・サンド等の重質油の開発は既に商用化段階に入っており大きな可能性です。

    3.日本は資源小国ですが、省エネ技術は進んでおり、技術によって資源を生み出しているとも言えます。GDP一単位当たり必要なエネルギー量が中国は日本の数倍ということは、その差は日本がエネルギーを自製しているのと同じことです。東大の小宮山前総長がおっしゃっている通り、エネルギー問題解決の鍵は省エネにあると思います。日本は乾いた雑巾と言われますが、産業部門に比べて、家庭部門における省エネは遅れており、日本全体としてはまだまだ改善の余地があります。さらにテクノロジーによって生み出したエネルギー資源を適正な経済価値に置き換えるビジネスモデルが構築できれば、日本は資源国として世界にエネルギーを”輸出”することもありえるのではないでしょうか。ビジネスマンとしての堀さんに是非とも取組んで頂きたいテーマです。

    投稿者: 阿達雅志

  • 堀先生の政策提言は、私と同じでございます。


    化石燃料が作られたプロセスは未だ解明されていない部分が多々ありますが、人類が誕生する前に得た様々なエネルギーの塊と言えます。
    化石燃料が枯渇するということは、長い地球の歴史上で得た様々なエネルギーを使い果たすということになります。


    化石燃料が枯渇した際、人類がエネルギーを得る方法は、原子力及び再生可能エネルギーのみです。これは、物理化学(熱力学)の法則として、有名な大先輩の科学者らが既に証明しております。


    私は原子力のエネルギーをアインシュタインのエネルギーと表現します。
    誰もが知る有名な科学者であるアインシュタイン。彼は、エネルギーEは質量の差(m)で作ることができるという法則(E=mc2)を定義した事でも有名です。


    今の原子力である原発は、ウランが核分裂し、質量(m)が減る(質量差が生じる)ことで、小さなウランでも大きなエネルギーEを生み出しています。


    化石燃料が枯渇した際、人類の持つエネルギーは、原子力及び再生可能エネルギーのみとなりますが、その際の原子力は、今の原発(ウランの核分裂)か、それ以外の原子力(最終的には核融合)を選ぶか、選択権は人類にあります。


    産業革命より使用したエネルギー源の化石燃料は、人類は5世紀程で使い果たしてしまうかもしれません。自分の人生として5世紀は長いですが、今後も繁栄を続ける人類の歴史として見れば短い期間です。


    化石燃料の枯渇が問題となる100年後、200年後は、原子力と再生可能エネルギーのベスト・ミックスになるかと思います。当然、省エネルギー技術は現在より大きく進歩していなければなりません。
    エネルギーのイノベーションは数年でできるものではありません。よって、この場が、人類の未来という長期的なエネルギー政策を考え、理解を深める良い機会になれば幸いです。

    投稿者: 星野毅

  • 発電量当たりの死亡者数について
    原発停止で、火力が増えることによって、大気汚染濃度が上昇し、それが原因で、3000人程度死亡者が増える(喘息等で、比較的重度の患者が影響を受け、短期的な死者増加数が3000人との推計)
    という見解があり、それを堀氏も採用しているようですが、これはおかしい、少なくとも詳細な検証が必要です
    WHOの大気汚染が原因の死者数3ー5万人を採用し、計算の出発点とし、大気汚染の原因を、自動車排気ガス、火力などに分類し、火力の大気汚染寄与度が上昇するのに比例して、死者が増える、というロジックのようです
    まず、これは臨床事例の積み上げではない、大まかな推計である
    そうであれば、原発由来の死者数も、同じ大まかベースの試算と比較する必要がある
    原発との関係においては、大気汚染由来の死者数が、火力への依存度低下に伴い、どの程度低下して来たのかの検証が必要 単に比例的に捉えて良いのか 臨床事例に当たれば、因果関係がよりはっきりするのではないか 統計的推計ではざっくりしたすうちで、かつ人口対比では、数千、数百は誤差の範囲になってしまう
    大気汚染由来の死者が特定できたとして、晩生症状、急性症状などの区分で、トータルの火力による死者数を推計する必要がある その際臨床事例に当たる必要が出てくる つまり、多様な原因によって、喘息等の重度の疾病を患った母集団に、火力が短期的に与える影響と、火力が原因で、晩生症状をどの程度引き起こしているのかを区別して、検証が必要
    最後に、仮に因果関係が明確にわかってる場合、そしてその影響が短期に3000人の死者を招くという場合は、避難措置、空気洗浄などの対策が取りやすい 逆に言うと、現実的には明白ではないので、臨床的にも対策が取りづらく、実際にそうなっていないとすると、3000人死者の根拠が不明確ということになります
    ロジックの問題が大きいですので、都合のいい結論に飛びつかず冷静な判断をお願いします

    投稿者: Tm

  • 今回の議題に関しては、見識が浅く、十分なコメントがございません。
    ただ、今から30年前、25~30年後には確実に化石燃料が枯渇し、
    新しいエネルギー世界となっていると社会の授業や図鑑で勉強していたのに、
    まだ化石燃料がクロージングしていないこと。こんな事故が起きてしまっていることに驚きを隠せません。

     早急な火力依存からの脱却したエネルギー戦略を構築して行ってほしいと思います。

    100まで頑張りましょう。

    投稿者: 宮本朋和

  • エネルギーソースの安全性指標について、一言。
    Well to grid(鉱山から送電線に乗せるまで)の、単位電力当たり死者率で表現できないでしょうか?おそらく石炭は非常に悪い結果になるでしょうし、石油と原子力の結果も面白いかもしれません。ただ技術の「枯れ具合」によって将来の負の遺産は、いずれにしても計算し来ませんが。

    投稿者: 斎藤岳史

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