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2011年9月26日 (月)

政治・社会 日本のビジョン「100の行動」: 13. Cool Japanの推進を 【経産7】

2009年にグロービスが実施した世界主要国を対象としたクリエイティビティに関する調査では、フランス、イタリア等のクリエイティブな国々を差し置いて、日本は世界からはアメリカと並ぶクリエイティブな国とみなされていることが分かった。注)

日本には、アニメ・マンガ・ゲーム・音楽・映画・ドラマなどのコンテンツ、渋谷・原宿を中心とした若者の(「カワイイ系」)ファッション、健康的な日本食文化、安全安心でおいしい食材、秋葉原の高機能家電など、独自の文化、サービス、製品などがあり、これらは「Cool Japan」として世界で高く評価されている。

海外に行くと、「スタジオ・ジブリ」の映画が好きな人に良く出会う。昨年来日したテニスのナダル選手は、小さい頃に学校から帰るなり毎日「ドラゴンボール」を観ていた、と取材に応じていた。海外のセレブは、ハロー・キティに夢中だし、北京でのSMAPのコンサートの大成功も記憶に新しいところである。

しかしながら、日本は今までこれらが有する国際競争力への潜在的な影響力を、十分に活用してこなかったのが実情である。

Cool Japanを戦略的に推し進めることを提唱しているATカーニー日本代表の梅澤高明氏は、「日本はクリエイティブの力は総じて強いが、弱いのが1)海外市場に向けた目利き、2)海外展開をリードできる事業家、3)それらの活動を支えるリスクマネーである。これらを重点的に強化することがカギである」、と指摘する。

今日のグローバル経済において、国家ブランドや無形資産の魅力などが、国際競争力に影響を及ぼすようになっている。日本が国家戦略として主体的に、それらのソフトパワーの価値を再認識して、海外市場や内需を拡大することが、強く求められる。

既に、一部の海外諸国では、ソフトパワーが経済活動に与える効果に着目して、国を挙げてコンテンツやブランド振興戦略を中核に据えた経済成長戦略を実施している。

例えば、隣国の韓国ではアジア通貨危機を契機として、1998年金大中大統領(当時)が「文化大統領宣言」を行い、以後、高付加価値コンテンツ産業を「21世紀型国家戦略事業」として、国家予算を重点配分するなど、官民一体となったCool Korea戦略を推進してきた。その一環として、デザイン振興院・コンテンツ振興院を設立するとともに、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)を中核とした、アジアマーケットでの官民一体の戦略的販路拡大を図ってきた。

その結果、2003年頃には韓流ブームが始まった。この波及効果は、同国内のソフトパワー産業のみならず、自動車、家電製品などの海外市場でのシェア拡大、国際競争力の強化、外国人観光客の増加にも貢献したともいわれている。現職の李明博大統領も、就任後に国家ブランド委員会を設置して、引き続き国家戦略として文化産業を育成・強化を行っている。このような韓国での官民一体となったソフトパワー産業の振興政策を、日本は謙虚に学ぶ必要があると考える。

日本は、2010年6月の「新成長戦略」(閣議決定)に、「知的財産・標準化戦略とCool Japanの海外展開」を位置づけ、ソフトパワー産業を経済成長の原動力にすることが記された。

日本のCool Japanの源泉であるソフトパワー産業を、官民一体となって、産業振興、海外展開、人材育成、海外発信に戦略的に推進することが不可欠であることから、今後の取り組むべき政策について、以下の通り、提案をしたい。

1. Cool Japanを国家戦略として取り組め!

Cool Japanの推進には、官民連携による国家戦略として取り組むことが重要である。高付加価値コンテンツ産業に対して国家予算を重点配分し、ソフト産業で実績のある民間プロデューサーを司令塔にして、デザインやコンテンツを振興する施策を実施し、積極的にアジアや欧米マーケットを取り組む姿勢を前面に押し出すことが求められる。

官民メンバーから構成される戦略会議の設置、新進気鋭のプロデューサーを中心とする懇談会の設置、地方自治体との連携、在外公館との連携、関係機関(国際交流基金、日本貿易振興機構、国際観光振興機構)との連携、国際的な人的ネットワークの構築など、官民一体となったCool Japan戦略を運動論として推進することも重要となろう。

海外現地での情報発信を強化するために、日本貿易振興機構・国際交流基金などの関係機関と連携するとともに、在外公館に官民連携による広報センターを設置して、コンテンツやファッションなどの日本ブランドの紹介・普及に、積極的に取り組む。また、国際共同番組製作、日本国内の人気ウェブサイトの翻訳支援、日本文化紹介イベント、国際放送の活用など、複数のチャネルを活用した、クロスメデイアによる効果的な発信をするのも一案である。民間だけでも限度があり、官だけでは広がりにかける。双方の連携が重要となるのだ。

2. プロデューサー・事業家の人材発掘・育成を!

Cool Japanは、ゲーム・マンガ・アニメなどのコンテンツ、ファッション、日本食、伝統文化、デザイン、ロボット・環境技術などのハイテク製品にまで範囲が広がっている。冒頭に述べて来た通り、日本はクリエイティビティの力は総じて強いし、海外からもその様に評価されている。しかしながら、それがビジネス化されてないのが実情である。

「何がクールか」「何が面白いか」の目利きを、日本人が行ってもハズすことが多い。外国人が発見したものが、勝手に広まっていくケースも少なくない。日本人にとって日常的なものの中に、外国人が関心を持つCool Japanが潜んでいることが多いのだ。従い、埋もれている文化資源・地域資源を発掘・創造するCool Japanの目利き役となる外国人中心のネットワークを、国内外に組織化していくことが効果的である。

そして、クリエーターが創作し、「目利き」により発掘されたクールなコンテンツやアートを世界に広めるのが、プロデューサーや事業家の役割である。彼らが、Cool Japanを支える原動力であるべきなのだが、日本はこの部分で他国に負けているのである。海外展開をリードする事業家は、海外に根付いて活動する日本のビジネスマンや日本好きの外国人を中心に、他産業からも広く求めることが必要である。Cool Japanの担い手は日本人に限る必要はなく、むしろ、アジアなど国外の多様な人材も対象にすべきである。

今後は、留学生30万人計画との連携で、コンテンツ分野での留学生の受入れを拡大して、文化交流を通じて日本の良き理解者を輩出することを目指す。さらに、海外で貢献している外国人を対象にした表彰制度(アンバサダー任命など)も充実させるべきであろう。この様に海外から積極的に人材を受け入れ、育成する発想が求められよう。

これらのプロデューサー・事業家の人材育成は、最重要課題である。グロービス経営大学院でも、今後この分野の人材育成を強化することとしたい。

3. 海外に向けての発信力強化を!

Cool Japanのグローバル展開には、戦略的な情報発信が不可欠となる。対象国のニーズの把握とともに、例えば、映画・ドラマ番組とファッション、食、ライフスタイルのように、様々なアイテムを有機的に組合せて発信することが重要である。尚、東日本大震災後の、日本に関する情報が正確に伝わっていないため、風評被害が広がっていたことから、インターネットを含めた多様なチャネルを通じて、多言語による正確かつ迅速な情報発信が求められる。

Cool Japanの発信には、「場」や「イベント」の活用も重要となる。「JAPAN国際コンテンツ・フェスティバル」や「東京国際映画祭」など、国内イベントでの海外発信力を強化したい。さらに、2011年の日独交流150周年、日本・クウェート国交樹立50周年、2012年の日中国交正常化40周年などの周年記念事業や、Japan Expoや世界経済フォーラム(ダボス会議)などの国際的なイベントも、積極的に活用できる。

中国大連市で開催されていたサマーダボスでは、したたかな中国政府は、その世界のリーダーが集う場を、中国のアートを広める場として活用していた。日本でも世界から多くのリーダーが集う場をつくり、その場の引力を使いCool Japanを広めることも重要な施策の一環となろう。ちなみにグロービスでは、2011年11月3日に、第一回の「G1グローバル・コンファレンス」を開催する。世界のリーダーが注目するこの場では、当然「Cool Japan」のセッションを実施することにしている。

効果的なプロモーションのあり方は、ネットやソーシャルメディアの飛躍的発展とともに大きく変わりつつある。従来の見本市・商談展示会、ハリウッドや韓国が上手に活用してきたテレビ番組や映画などを広告塔とするアプローチ加えて、情報ハブとなるCool Japan・アンバサダーを含め口コミやC2Cの情報流を飛躍的に増やすための戦略的な仕掛け(YouTubeやFacebookを絡めながら)が今後いよいよ重要となろう。

4. 十分な資金の投下を!

上述の通り、コンテンツが生まれ、プロデューサー・事業家が育ち、そして海外に向けてCool Japanが発信されるためには、様々な分野で充分な資金を投下することが肝要となる。官民人材と資金力を結集し、日本の優れたコンテンツの海外展開を図るファンドの創設や、最初から海外展開を視野に入れたコンテンツの製作、販路の開拓、海外現地メディアでの露出強化などに対して、総合的な支援策が求められる。リスクマネーの供給源としては、通常の官民ファンドに加えて、趣旨に賛同する国内の篤志家から足の長い(かつ高いリターンを求めない)カネを集めることもオプションの一つであろう。

韓国が音楽、ドラマ、映画等成功できたことは、日本が海外でもできる筈である。常に、コンテンツを制作するときには、海外に売り込むのだと言う発想が、重要になろう。ちなみに、日本が得意であったゲーム分野は、今やプラットフォームを携帯に変え、そしてスマートフォンに主戦場が移行している。この分野で、日本の若者は、果敢に世界を視野に入れて動き始めていることを、とても頼もしく感じている。

グロービスも当然それらのゲーム・コンテンツ会社に積極的に投資している。以前、ソニーやホンダ等のハードが海を渡って海外に進出したように、今の時代は、ダウンロードすることによりソフトも自由に海を渡れるようになってきた。今まさに日本のソフト・コンテンツが、海外に進出する絶好の機会が生まれたのだと言えよう。

今や、株式市場の一日の売買代金では、創業後たった数年のグリーがあのトヨタを抜き去り、日本一となる時代となった。この事実は、ハードのものづくりも重要だが、ソフトの楽しさや夢創りが更に重要な時代になることを予兆している。その時代に向けて今日本が、Cool Japanにより世界に打って出る必要があるのだ。

注記:
本結果は、2009年にグロービスが行ったクリエイティビティに関するリサーチ(アメリカ、欧州、中国など主要14カ国のビジネスパーソンを対象としたクリエイティビティに対する認識調査)に基づくものである。本リサーチからの示唆としては、「日本人は自分たちのクリエイティブな能力に対する認識は低いが、他国のビジネスパーソンは日本人のことを非常にクリエイティブであると認識している」、「中国人は自分たちのクリエイティブさに対する高い自信を持ち、その姿勢は日本人と対極にある。」といったことが挙げられる。

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コメント(1)

  • 外国出張は欧州がメインでして、先月は、約5年ぶりに米国(西海岸・ポートランド)へ行ってまいりました。
    私も、現地のTVで「ドラゴンボール」(当然ながら、英語)を久しぶりに観ました。また、スーパーでは、普通に寿司を販売しており、驚きました。


    しかし、残念ながら、食文化に関しては、日本食レストランが多いにもかかわらず、経営者は日本人以外のアジアの方でした。欧州も同様です。

    海外での日本食は、値段は日本より割高。にもかかわらず、たくさんの現地の方が利用しており、日本人がチェーン展開しましたら、巨大な市場だといつも思っております。


    私は自身の進むべき道がありますので、この市場には参入できませんが、明らかに目に見える市場が育たない理由は何であるのか? 堀先生が挙げられている以外として私が思いつく点としましては、例えば「語学の壁」等、この分析が重要と思っております。

    投稿者: 星野毅

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