2011年11月24日 (木)
| 政治・社会 | 日本のビジョン「100の行動」: 19.レジティメート・パワー(国際機関を通しての発言力アップを!)【外務5】 |
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2011年に国際通貨基金(IMF)の専務理事であったドミニク・ストラス・カーン氏がホテルのメイドとの疑惑にて逮捕された事件は、記憶に新しい。その後にフランス国の財務大臣であったラガルド女史が、専務理事に就任するに当たり、中国が一つの条件をつけてきた。4人目の副専務理事ポストに、中国の中央銀行である中国人民銀行元副総裁の朱民・特別顧問を指名することを求めてきたのだ。資本主義・市場主義の象徴であるIMFの重要ポストを、中国が獲得したのは初めてである。
今回のポスト獲得は、GDP(国内総生産)世界第2位、外貨準備高世界第1位という、中国の国際経済における存在感の反映のみならず、先のIMF専務理事選挙において、ラガルド氏を最終的に支持した中国政府による政治力が大きく反映されたものとしてみるべきであろう。
重要な国際機関の主要ポスト獲得は、国際社会における自国の国力と影響力・評価などの指標となる。さらに、ルール・メイキング・プロセスに関与できることにより、国益を維持することができるので、各国は、主要ポストを巡り、虚々実々の外交ゲームを繰り広げている。
国際機関(international organization)とは、構成員は国家であり、条約によって設立され、常設の事務局を有する組織のことと定義できよう。
世界には、普遍的国際機関として国際連合がある。また、専門機関もしくは一部の国・地域に限定された機関として、世界銀行、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構(OECD)、 国際エネルギー機関(IEA)、世界貿易機関(WTO)、欧州連合(EU)、米州開発銀行(IDB)、湾岸協力会議(GCC)、石油輸出国機構(OPEC)、アラブ連盟(LAS)、アフリカ連合(AU)、アジア開発銀行(ADB)、アジア太平洋経済協力(APEC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)などがある。
では、「なぜ国際機関が重要なのか?」。それは、日本単独の外交政策では困難な外交目標(国益)を、普遍性(幅広い諸国の参加)と専門性(世界中の情報や知見の集約)に支えられた正統性(レジティメート・パワー)を有する国際機関で討議し、決議することにより、図ることが期待されるからである。簡単に言ってしまえば、「国連決議」がなされると、正当性(レジティメシー)を持つのである。だからこそ、米国がイラクに攻撃する際にも、正当性を獲得するために、国連を舞台にギリギリまで外交努力をしたのだ。
但し、正統で権威あるレジティメートな国際機関では、政策方針・国際間ルールが規定された場合、加盟国は遵守することが求められる。日本に不利な決定・決議がなされたら、日本はそれを順守しなければならないのだ。したがって、「アジェンダ・セッティング(論点提起)」と「ルール・メイキング(規約策定)」のプロセスが非常に重要となり、そのプロセスに関与する人材の質・量・ポジションこそが、外交力の最大のポイントとなるのだ。
このように、日本が国際機関でのレジティメート・パワーを活用して、戦略的に日本外交を展開するために、以下の通り、今後の取り組むべき政策について提案をしたい。
1. 日本の常任理事国入りの外交活動を活発化せよ!
あらゆる国際機関の中で、最も広範な権限と、普遍性に支えられた、正統性を有している国連にて、日本のプレゼンスとポジショニングを高めることは重要である。
2006年に起こった北朝鮮によるミサイル発射に対する国連安保理決議では、日本が非常任理事国を務めていたから、北朝鮮非難決議まで出すことができた。もしも、日本が安全保障理事会に入っていなければ、あそこまでの非難決議まで持って行けたかどうかが怪しいのだ。なぜならば、日本政府は北朝鮮のミサイル発射を、国際社会の平和と安全、大量破壊兵器の不拡散の観点からも極めて重大な脅威と受け止め、非常任理事国として、直ちに国連安保理において安保理決議案を提示して、関係国と緊密に連携して採択に向けた働きかけを開始することが出来たからである。
日本は、小泉純一郎政権下で、ドイツ、インド、ブラジルと連携して常任理事国入りを目指したものの、2005年9月の国連総会では、日本の常任理事国入りに強硬に反対する中国・韓国によるA案阻止の多数派工作に敗れた結果、安保理改革の具体策は先送りされた。その結果、日本の最重要の外交目標である常任理事国入りは、未だに実現されていない。
今、地球次元の問題を世界は多く抱えている。環境・気候変動、核軍縮・不拡散、紛争解決や平和構築、テロ、貧困、感染症など、地球規模課題が、国際社会おける主要課題として顕在化している。国際機関を中心とした課題解決のための国際協調の必要性が高まっている。だが、冷戦の終結や新興国の台頭により、国際秩序の構築・維持はより複雑になりつつある。だからこそ、日本としても、世界平和、世界秩序の維持等に積極的に参画する必要がある。「内向き」ではいけないのだ。政府が積極的に発言し、主要なポストを求める姿勢を示すことにより、日本国民のグローバル化に影響を及ぼすのだ。
当然、日本が常任理事国としての役割と期待に応えられることを示すためにも、国際協力活動の強化に不可欠な施策(例:ODAの拡充、PKOへの積極的な参加など)を、同時並行で措置することも求められる。
日本が積極的に世界に貢献し、その中で貢献に相応しい地位と権限、発言力を得ることが重要である。
2. 「未来の緒方貞子育成プロジェクト」を!
国際協力機構(JICA)理事長の緒方貞子氏は、1990年代、国連難民高等弁務官に3回再任され、合計10年間務められた。その在任中には、内戦下のサラエボに自ら防弾チョッキ一枚で現地視察を行い、クルド難民問題では「国内難民」の定義を初めて国際社会に提示するなど、多大なる実績を上げられた。
退任後も、アフガニスタン支援政府特別代表、アフガニスタン復興支援国際会議共同議長を歴任したり、「人間の安全保障」の分野でも精力的な活動を行うなど、国際社会に多大な貢献をされた。
筆者もダボス会議に何度か参加しているが、緒方貞子さんへの国際社会の評価の高さは、尋常でない。国連事務総長を初め、数多くの世界の有識者は、「Sadako」と親しみを込めて呼んでいる。緒方氏の功績の結果、国際社会での日本の評価を高めたことは事実である。
今後、緒方貞子氏のような、国際機関で活躍し得る人材を次々と輩出することが求められる。名付けて、「Sadako Project」なるものの発足が求められるのだ。他にも世界銀行の副総裁を務められた西水美恵子女史の様に、世界次元で活躍する人々が増えていることは、嬉しいことだが、数が圧倒的に少なすぎるのだ。
国連・世界銀行・国際通貨基金・アジア開発銀行など、日本との関係が強い、主要な国際機関において、概ね共通している日本の問題点は、いずれも大口出資国・費用負担国であるにもかかわらず、人材力が弱いことから、アジェンダ・セッティングとルール・メイキングにおいて、日本の存在感、影響力、リーダーシップが十分に発揮されていないのである。
例えば、国連の場合、日本の2010~2012年における国連通常予算分担比率は、米国に次ぐ世界第2位の12.530%である(参考例:英国は第4位の6.604%、仏国は第5位の6.123%、中国は第8位の3.189%、ロシアは第15位の1.602%)。一方で、2009年6月末現在の国連事務局における職員数と、「望ましい職員数」では、日本は世界第5位の111名であり、望ましい職員数の312名を大幅に下回っている。
政府は国際機関の邦人職員の増強を図るべく、次の様な施策の拡充が望まれる。優秀な人材の発掘と応募の勧誘のための、外務省国際機関人事センターによる「ロスター登録制度」。更には国際機関に勤務を希望する若手邦人を外務省の経費負担により原則2年間国際機関に派遣し、勤務経験を積む機会を提供して正規職員への途を開くことを目的とした「JPO(Junior Professional Officer)派遣制度」、などだ。
3. 国際機関のトップの座を獲得するための政府との連携を!
冒頭に触れたIMFの副総裁に就任した中国の朱民氏は、世界経済フォーラムの理事も務め、ダボス会議では、スター的な存在になりつつある。英語も上手で、常にキーノートのセッションに登壇し、さりげなく中国のポジションを主張し、中国への風当たりを和らげているのだ。国際機関のトップ層に就任するためには、自らの能力とともに、IMFの副総裁に押し上げるような政府のバックアップ力が必要となる。
日本の場合には、先にあげた緒方貞子さんがスター的な存在である。だが、国連ならびに主要国際機関におけるハイレベル職員(ASG:Assistant Secretary General- 事務次長補相当以上)の主な日本人職員は、小和田恒氏が国際司法裁判所裁判官(所長)、天野之弥氏が国際原子力機関(IAEA)事務局長、赤阪清隆氏が国連広報局担当事務次長など、少数であることが現状である。しかも殆どの場合が、官僚出身である。官僚出身で悪いことは無いが、もっと幅広いキャリアの人々がそのレースに参画し、世界のトップに躍り出る努力をしても良いと思う。
日本的な手法の一つのアイディアとしては、民間がもっと積極的に国際機関に人材を出向させ、場合によっては、そのまま国際機関でのキャリアを追求させるための転籍制度を創るのも一案かと思う。また、海外と比べてみて、日本の場合、総理大臣経験者や、大臣経験者が、そのキャリアを活かして世界で活躍していないのが、気になるところだ。日本では、元外務大臣の川口順子氏、更には、元総務大臣の竹中平蔵氏の活躍が特筆すべきだが、もっと層を増やしたいところだ。IMFのトップや、国連のトップに毎回立候補出来るような人材の拡充を目指したい。
4. 国際機関の積極的な誘致を!
日本に本部のある国連関連機関は、国際連合大学(UNU)と国際熱帯木材機関(ITTO)の2機関にしか過ぎない。日本外交に積極的に活用するために、国際機関の積極的な誘致や国際会議の誘致を行うべきである。
この様にレジティメートなパワーをどうやって地道に獲得し、発揮していくかを論じてきた。やはりキーワードは、人材の育成と世界に出て行く積極性だ。「日本が、世界の平和や問題解決に積極的に高い次元で貢献するのだ」、と言う強い意思が、政府の政策に反映されていることが重要である。その結果が、世界からの感謝であり、常任理事国への就任であり、国際機関におけるレジティメート・パワーの獲得に繋がって行くのである。
大いに人材を育成し、世界に旅立ち、そして貢献しよう。その結果が、日本の国際社会における地位の向上に繋がるのである。
人材の育成は本分野でも重要ですね。
普通の会社員でも、様々な国とビジネス上の交渉が必須な時代ですし、その交渉の場では悩むことが多くあります。
私が一番悩む点は、「トレードオフ」の部分です。
得られる利益と失うものを天秤にかけ、結果はやってみないと分からないため、経験が重要となる点かと思いますが、まだ経験が浅いところでございます。
最近は、トレードオフという考え方をやめようと思うようになりました。
相手の懐に可能な限り入り込み(それでも、まだ十分に入り込むことが難しいですが・・・)、メリット・デメリットを互いに共有しようという意気込みでおります。
何事も、経験ですね。
投稿者: 星野毅
「100の行動」なので、具体案を示されているのでしょうが、やや技術論に偏っている印象があります。
「レジティメット・パワー」を向上させるのに必要なのは、国際機関のポスト争いで勝つという技術論の前に、「どのようなレジティマシーを発信するのか」という目的ではないでしょうか。目的が曖昧なものに対し、手段を強化する意味がありませんし、もし、国際機関のポストや常任理事国の地位を得る目的が日本の国益なのであれば、そのような(よこしまな目的による)選挙活動が支持されることはないでしょう。
欧米各国は人権・自由・民主主義を実現するという旗印の下にレジティメット・パワーを行使しており、途上国は途上国の声の反映という旗印を立てています。ブラジルや中国がいかに経済的に発展しようとも「途上国」を前面に押し出すのは、途上国の旗手以外の立場で支持されえないことが分かっているからです。(そして、国際社会での途上国の役割はしょせん野党に過ぎません。)
率直に言って、日本に欧米並の人権や民主主義の発信力があるとは思えません。これはオリンパス事件というような個別の事象にも現れますが、国民一人一人が自由の伝道師を自認してるかのような米国とは根本的に違う。精神的に他力本願で、社会への依存心が強く、それを是認するような・・・という日本批判はここの目的ではありませんが。それにしても、世界に対して、「世界が日本のようになれば、世界はもっと幸せになれる」と主張する自信が日本にあるでしょうか。
途上国でもなく、かといって人権意識の先進性もない日本。何の国際機関で何を実現したくて、ポスト争いをするのでしょうか?安全保障の素人だけど、防衛大臣の肩書きが欲しかった政治家や法務大臣の答弁は簡単だからいいと言った政治家と同じなのでしょうか?
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