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2012年1月31日 (火)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議2012~1)1、2日目統一テーマ「大いなる変遷と新たなモデルの構築」

今年もダボス会議が始まった。ダボス会議は、通常火曜日の夕方に始まり、日曜日の午後に終わる。今年初めて、ダボス会議を最初から最終日まで参加する予定だ。今までは、ダボス直前会議があったり、土曜日に帰国する必要があったりで、全てを堪能できていなかった。今回は、6日間みっちりと参加する予定だ。

僕のダボスの最初のイベントは、1月25日火曜日のワイン・フォーラムのディナーからだ。シャトー・マルゴーの伝説的なワインメーカーのPaul Pontallier氏を招いての贅沢なプライベート・イベントだ。参加する前に「ノ・ミカタ」を飲み、参加した。ダボス会議では、体調管理が重要である。ついつい美味しいからと言って、飲みすぎて体調を壊しては元も子も無いのだ。

ワイン・フォーラムでラッキーだったのが、眼の前にハーバード経営大学院のジョシュ・ラーナー教授が座っていたことだ。ビッチリ2時間、無料の講義を受けた気分だ。「米国ベンチャー・キャピタル(VC)の中国進出は、失敗だ。クリーンテックの投資は、回収不能。フェースブックの上場で100倍以上のスーパーリターンが生まれる」等。ラーナー教授の話は、あまり真新しい話は無かったが、世界のVC環境を確認する意味で役に立った。面白かったのが、「中国では純粋なアーリーステージのVC投資が失敗し、プリIPO投資が成功している。だからレイター・ステージのサービス案件に皆向かっている」と言う。これでは健全なVCが育たないだろう。

ダボスの夜は遅く、朝が早い。ワイン・フォーラムに参加してホテルに戻ったのは、夜の11時半。翌日の朝は7時に集合だ。ダボスに何度も参加すると、プライベート・イベントに誘われるようになる。ワイン・フォーラムしかり、翌朝のセッションもしかりだ。プライベート・セッションは、ネットワークを広げる絶好のチャンスだ。

ダボス会議では、オフィシャルなプログラムに載っているセッションよりも、多くのWEF主催のプライベート・セッションが開かれる。しかもそれ以外に、勝手に参加者が開く私的会合がある。しかも全て基本的に無料である。ワイン・フォーラムはシェブロンのスポンサーで超高級ワインを無料で堪能できたという具合に、皆存在感を出すのに工夫をしている。

ダボス朝6時過ぎ。まだ辺りは、暗い。昼間は聳え立っているアルプスの山並みが、一面銀世界の中、真っ黒な闇の世界へと埋没し、ことさら強調されている感じがする。日本時間は、午後2時だ。メール返信をして、出かける準備をする。

今回のホテルは会議場に一番近い場所で、移動に便利だ。真中に位置するので、ホテル会場も、全て歩いて行けそうだ。昨年のブログにも書いたが、自分が泊っているホテルで、自らの相対的なポジションがわかる。今回は、会場に一番近いホテルだ。出世した気分だ。

いつも思うのが、ダボス会議等の国際会議で重要なことは、「インサイダー」になることだ。可能な限り誘われたら喜んで出向き、友達を創り、印象付けて、次にも呼んでもらう事にすることだ。帰国後は挨拶状を書き、自分がやっていることを説明し、必要に応じてメールを出す。すると何回か会ううちに、ダボスには友達だらけになる。

ダボス会議の二日目がスタートした。先ずは、世界最大の独立系PR会社のエデルマン社の「世界信頼度調査」に関するプライベート・セッションで登壇だ。プライベート・セッションは、企業・個人がお金を出して実施するものだから、本気度がとても高い。参加者も通常クオリティが高い。

僕以外の登壇者は、米国ALCOA、eBbay、マイクロソフト、ドイツ銀行等のトップ経営者とYale大学の総長だ。ゼロからの起業家は、唯一僕のみだ。またアジア人も僕一人だ。このエデルマンの信頼度調査は、とても面白い。経営者よりも一般の社員の見解の方が、信頼されている事実や政府リーダーが全く信頼されていない事実など、ショッキングなデータが出ている。僕は積極的に、自分が思っていることを発言した。僕の登壇は、結構インパクトがあったようだ。その後、多くの人からフィードバックをもらった。ちなみに同様のセミナーを、2月7日(火)にグロービスにて実施予定だ。

朝のエデルマンのセッションを終えて、 ホテル会場から、コングレスセンタ(本会議場)に徒歩で移動した。渡辺謙さんのセッションに顔を出して、安全保障のセッションに座った。内容が深まりそうにないので、渡辺謙さんのセッションに移動することにした。

参加者は、半分日本人で、半分が日本人以外だ。安全保障のセッションよりも人が多い。 やはり、これだけ参加者を集められる日本人は、あまりいない。渡辺謙さんには頑張って欲しい。

共に登壇された竹内先生が、うまくまとめている。「今回のセッションで3つの日本語を学んだ。絆、足るを知る、思い、だ」。会場から、「謙」の意味も学んだ、と指摘があった。「簡素で、謙虚さが重要だ」、と。

渡辺謙さんのセッションを終えて、45分間は、ネットワーキングだ。会場のカフェ・カウンターで、古くからの友人であるインド人経営者と30分お茶をして、グロービス・キャピタル・パートナーズのファンドのスイス人投資家と会話をする。その間、通りがかった友人達に挨拶をする。世界の主要なリーダーが集っているので、交流するには、便利な場所である。

次は、「グローバル・ビジネス・コンテクスト」というセッションだ。大企業経営者の見解を聞いてみようと思い、参加することにした。朝一緒だったALCOAのCEOや、シスコCEOのジョン・チェンバーズ、NYSEユーロネクストのCEO等が登壇している。

CEOの関心事は、1)変化に対する変革の重要さ。2)テクノロジー(SNS)の進化への適応等だ。強い危機意識を持っているのが印象的だった。面白かったのが、「これからの企業は、良いサービス・商品を提供すれば終わりではない。CSR等の社会的貢献が重要になる」という指摘だ。

ホテルで手にしたWSJの欧州版を手にしたら、デカデカとグロービスの広告が、掲載されていた。僕の横顔の顔写真とともに、「No.1 MBA Program in Japan. GLOBIS MBA」と書かれていた。ダボスの各ホテルで無料で配布されているので、手に取れば観てもらえるはずだ。水、木、金と3日続けて掲載される予定。グロービスの存在感を徹底的に上げていきたい。

急きょ、今夜開催予定のTalent Mobilityのプライベート・ディナー・セッションのディスカッション・リーダーの要請を受けた。メールで、即座に受諾することにした。グロービスが、そのレポートの事例の一つとして協力したのが、誘われた一因かと思う。ディナーをしながら英語で討議をまとめるのは大変だが、最大限貢献するように努力をしたい。

ダボス会議のオープニングセレモニーが始まった。ダボス会議が始まって1日経って初めて「オープニング」が行われるのだ。センターステージには、鼓笛隊が登場し、演奏を始めた。着席しながらもネットワーキングができるのが、ダボス会議の面白みだ。斜め後ろのフランス人のチベット仏教僧侶と会う。ダライ・ラマの片腕の方だ。金曜日のディナー・セッションでご一緒させていただく予定だ。

鼓笛隊が退場し、クラウス・シュワブ氏とスイスの大統領が登場した。シュワブ氏により、42回目の年次総会の開会が宣言された。ドイツ訛りの英語でゆっくりと話すのが、とても効果的だ。今年のテーマは、「大いなる変遷と新たなモデルの構築」、だ。「今最も大事な資源は、金銭的資本ではなくて、起業家精神がある人的資源だ」、と指摘された。

スイス大統領のスピーチが続く。立ち見が出ている満員の会場は、彼女のスピーチに耳を傾けているが、明らかに真打の登場を待っている。ドイツのメルケル首相だ。彼女が何を語るのかに、皆の関心が集まっている。

まばらな拍手でスイス大統領が見送られ、いよいよ真打登場だ。ドイツのメルケル首相だ。シュワブ氏が、ドイツ語でメルケル首相を紹介し、メルケル氏が演題に立ち、ドイツ語で喋り始めた。

「ドーハラウンド、気候変動に関しても、結局グローバル・リーダーは、全地球的問題に関して解決ができていない。人口も25億から70億人に増えたが、その間にヨーロッパの人口は増えていない」(堀注:未だにドイツという言葉を使っていない。欧州のリーダーという立場を打ち出している)。

「我々は、よりヨーロッパ人としてやっていくのかどうかが、問われている。財政の規律も重要だ。我々は、一つの組織にいるという意識が必要だ。未だに、財政規律に関しては、ポルトガル、ギリシャ、スペイン等十分ではない」(堀注:欧州の大統領という自覚を感じる。メルケル氏は、昨年同様殆どメモに目を通さず、力強い口調で喋り続ける)。

「財政と同様、労働市場の改革も必要だ。(ドイツのような)ベストプラクティスから学ぶべきだ。単一市場をどうするのかという率直な議論が必要だ。将来の若者が、市場に入っていてよかったと思ってくれるかどうかを考えねばならない」

「当初より財政規律を守ると約束したではないか。もう言いわけができない。これからは、更に統合が進んでいくだろう。ドイツにも南北の不均衡がある。競争力の違いから不均衡は発生するのだ。皆が野心的にならなければならない」。

「欧州の将来の繁栄をつくっていくことが重要だ。財政面の統合も考えているが、やるべきことが山積している。ドイツは、最初からユーロを守ると公約している。だが、市場から攻撃をかけられたら公約を守れないかもしれない。だからこそ、連帯しなければならない」。

メルケル首相の顔が紅潮して来た。身振り手振りに力が入っている。相変わらず殆どメモを見ない。

「ヨーロッパは、世界経済の頭痛の種になっていると言われていることは承知しているが、欧州だけが頭痛の種ではない。自由な世界貿易をどう守るのか。地球の気候変動もある。日本や韓国とか今、自由貿易の協議をしている」( 堀注:ここで初めて日本に言及)。

「ダボス会議の成功を祈ります」と言う言葉で締めくくってソファーに座り、シュワブ氏との対談に入った。「ヨーロッパのビジョンは?」。「ヨーロッパで行おうとしているのは、他に前例が無いことだ。米国とも全く違う。今後は、更に移動を自由にし、年金を含めて統合化が必要だ。欧州の政府機能の強化が必要だ」。

メルケル首相はスピーチを終えた。感想は、「力強い」、だ。昨年にも増して、強さを打ち出す必要があったのだろう。その後、センターステージで、ソーシャル・アントレプレナーの表彰があり、デスモンド・トゥトゥ氏がシュワブ氏と対談した。観客は、一挙に半数以下となった。

一旦ホテルに戻り、夜の部スタートだ。先ずは、僕の友達がいるCCTVのレセプションに顔を出した。中国人の親友と抱擁して再会を喜んだ。それから人材に関するプライベート・セッションに参加してきた。ま、何とかディスカッション・リーダーの役割を果たせたと思う。そして、最後にワイン・フォーラムに顔を出した。昨晩お会いした方々。そして、更なる友人との出会いがあった。

友達の輪が複層的に広がって行くのがわかる。メールを称賛する人、パネルを褒めてくれる人等様々だ。いつもは、夜遅くまで友達と飲み明かすのだが、まだダボス会議は始まったばかりで、しかも出番が多い。珍しく理性が働き、夜中の12時前にホテルに戻ってこれた。自分を褒めたい気分だ。翌日も朝からボード会議等で、ぎっしりのスケジュールだ。早く寝て、翌日に備えることにしたい。ダボスでは、体力が必要なのだ。

2012年1月30日
成田に戻る機内で執筆
堀義人

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