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2012年2月 2日 (木)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議2012~3) 4日目 外交の主戦場としてのダボス会議

ダボス会議4日目の朝。目覚まし機能を使わなくても、朝6時前に起きられるようになってきた。今年は、最初から最後までのフル参加であり、且つ、最後まで登壇セッションがあるので、全く気が抜けない。体調管理が重要になる。ルーチンのメール返信をして、スーツにネクタイという出で立ちで、スノーブーツをはき、暗い雪道を歩くことにした。

ダボスの街のはずれにある小さなホテルで開催された、朝7時半からのプライベート・セッションに参加した。ラウンドテーブル形式の少人数の朝食会に、グラミン銀行のユヌス氏や独SAP社のCEOが参加していた。僕も3回ほど発言し、多くの人々と意見交換できた。純粋に楽しかった。その後、スタンフォード大学の教授と本会議場にバスで移動した。移動中もネットワーキングができるのがダボスの良い点だ。

本会議場で最初に参加したセッションのテーマが、「もしイランが核兵器を持ったら」、だ。先ずは、冒頭にIAEAの天野事務局長からイランの核兵器開発の現況について話があり、米国の外交担当者の話があり、アラブの代表、イスラエルの副総理兼国防大臣、中国の国際政治学者という順番で話が進んで行った。

セッションでは、イスラエルの副総理兼国防大臣が、熱く訴えかけていた。イランが核兵器を持ったら、1)サウジ、トルコ、イスラエル、エジプトも核兵器を持つだろう。2)イランの姿勢も変わるであろう。イランは既に、イラク、アフガニスタン、ソマリア、イエメン等にある反政府勢力や、ヒズボラ等の政治組織、テロ組織に資金を提供している。核を持ったら、更に強い姿勢に転換するであろう。

イスラエルの国防大臣にすれば、ダボスの場で、危機意識を醸成させて、自らの正当性を訴えかけるチャンスなのだ。ここは、既に外交の場になっていた。アラブ代表の話が面白かった。「アラブを語る時には、リーダーがどう考えるかよりも、4億人のアラブ人がどう動くかが重要だ」。よく出てくる言葉が、「タハリール広場」(エジプトの広場)だ。もはやリーダーは、タハリール広場の世論を無視できないのだ。「アメリカは、アラブ4億人に語りかける術を持たなければならない」と。

西側が経済制裁する中で、ロシア・中国は制裁に参加せずに経済的果実を得る、という構図が明白になっている。イランが核兵器を開発したら、イスラエルは何らかの軍事的アクションを取らざるを得なくなるであろう。一方、アラブは、「アラブの春」の影響で、民衆の力が高まっている。民衆は、反イスラエルに動きそうだ。一方のサウジなどの湾岸諸国も核兵器を持つ必要が出て来よう。その時、米国は、国連安保理は、どう動くのか。日本は?

天野事務局長によると、「明日、IAEAの専門家がイランに派遣される。現時点では、イランが核兵器を開発する途上にある確たる証拠がある。その点をイランに問いただし、確認することになる」そうだ。ホルムズ海峡は、いよいよ波が高くなってきた。日本も北朝鮮の核兵器に関して、強いアクションが必要だ。他人事ではない。

次は、ユーロ圏に関するパネルだ。世界の諸問題が、ダボス会議では討議されている。数多くのリーダーが集っているので、自らの考えを伝え、正当性を訴えるチャンスなのだ。そのセッションには、ドイツ、フランス、スペインの担当大臣が登壇していた。期待していたが、残念ながらそれを大きく裏切られる結果となった。ユーロ圏の問題を政治家ばかりで話をしても、表面的な「政治的発言」ばかりで盛り上がらない。キャスターがモデレーターでは、よほど勉強をしていないと、どうしてもツッコミが足りなくなる。従い、途中で退席をして、違うセッションに参加することにした。

暫くカフェでネットワーキングしてから、ティム・ガイトナー財務長官のセッションに参加した。米国は、どうも態度がハッキリしない。途中で退席した。ランチは、「起業の生態系」に関するプライベート・セッションに参加することにした。クロークでコートをピックアップして、シャトルバスで移動した。ライフネットの岩瀬さんもそのセッションに参加していた。「どうやったら起業が生まれる生態系が創れるのか?」という、ちょっと議論が大きすぎて、掴みどころが無いものになっていた。だが、僕なりに発言し、貢献できたのがよかった。その場には、ダボスを代表するベンチャー・キャピタリストや起業関係の学者が皆参加していたので、ネットワーキングの場としては最高だ。

昼食後に本会場まで歩いて戻った。廊下でばったり、BBCのニック・ガウイン氏と再会した。僕は、ニックのことを人間的にも能力的にも尊敬しているので、再会しただけで、とても嬉しくなってしまう。30分ほどカフェで意見交換した。その後、韓国の毎日新聞社の取材に応じた。今年の10月にソウルで開催する「世界知識フォーラム(WKF)」に再度来て欲しいと招待を受けた。

夕方にダボスのホテルに一旦戻った時のこと。ふと、レストランを見ると、ショーン・パーカー氏とラリー・サマーズ前ハーバード学長が談笑していた。2人とも映画『ソーシャル・ネットワーク』に出てきた強烈なキャラの持ち主だ。「ハイ!」と声をかけて輪に入ろうかと思ったが、さすがにそこまで図々しくなれなかった。

夕方にハーバード大学のレセプションに向かった。ハーバード大学学長、ハーバード経営大学院のDean等、数多く参加していた。カルロス・ゴーン氏も来ていたので、再度会話した。こうやって何度か会っていくうちに親しくなっていくものである。

その後、「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」というディナー・セッションに登壇した。EQの創案者のダニエル・ゴールマン氏、さらにはチベット僧侶のフランス人等とで、ディナーの討議を引っ張って行く役割である。とても奥深い分野である。オープンなセッションなので、数多くの参加者が来ていた。ロイターの社長も一参加者として来られていた。

夜10時過ぎにディナー・セッションを終えた。その晩は、真っすぐホテルに戻り、翌日に備えることにした。ダボス会議4日目を終了した。あと二日間の会期である。多少疲れがたまってきている感じがしていたが、気分は充実していた。

2012年2月1日
一番町の自宅にて執筆
堀義人

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