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2014年9月16日 (火)

日本人・アジア人・地球人 全世界共通! パワフル・プレゼンテーション、3つのルール

現代のグローバル化した経済では、価値観や期待が異なるさまざまな聴衆を相手に、同じプレゼンテーションを行わなくてはならないことも少なくない。

例えば僕は、ベンチャー・キャピタリストとしての仕事の一環で、アジア人投資家と欧米人投資家の両方にファンドを売り込む必要がある。

両者がプレゼンターに求めるものは違う。

欧米の聴衆は概して、精力的で身振り手振りが大きく、どちらかと言えば自分を売り込むような話し方をするプレゼンターを好む傾向がある。そして何よりも、力強い表現によって心を動かされたいと考えている。

一方、アジアの聴衆は控えめで穏やかに、個人的な話題を多少交えながら話すプレゼンターを好む。そして何よりも、話し手に好意を抱き、親近感を覚えたいと考えている。

このように両者の好みは正反対である。だから、プレゼンテーションを行う際は、聴衆に合わせて適切な伝え方をするのが肝心だ。

欧米で効果を発揮するエネルギッシュなスタイルは、アジアでは高慢で利己的という不快な印象を与えてしまう恐れがある。

同様に、石橋を叩いて渡るようなアジア型のアプローチは、欧米では弱々しく退屈で焦点が定まっていないという誤った印象を与えてしまいかねない。

英国のパーソナル・インパクト・コンサルタントであるマーティン・ニューマン氏と言えば、2020年東京オリンピック招致チームをコーチングして勝利に導いたことで有名な人物だ。彼もまた、プレゼンテーションでは伝え方がきわめて重要だと考えている。

そして彼には、その持論を裏付けるデータが(言うまでもなく実績も)ある。

ニューマン氏によれば、プレゼンターが聴衆に与える印象全体のうち、話の内容(「言葉(verbal)」の要素)が占める割合は、わずか7%にすぎないという。

意外にも、大きくものを言うのは言葉以外の要素なのである。

話し方(「声(vocal)」)は印象全体の38%を占める。それに対し、見せ方(「ビジュアル(visual)」)が占める割合は55%にのぼる。

プレゼンテーションでは、中身にもまして伝え方こそが最も重要なのである。

僕はこれまで自分なりに、アジア型と欧米型のアプローチをいいとこ取りした「普遍的なプレゼンテーション・スタイル」を編み出そうとしてきた。多少の調整を加えれば、このスタイルは世界中のどこでも通用するはずだ。

それを要約したのが、次のシンプルな3つのルールである。

●エネルギッシュであるべし。ただし、度は超すべからず。

元気はありすぎてもなさすぎても疎まれる可能性がある。僕が思うに、穏やかで温もりのあるエネルギー(昔ながらの白熱電球のような)を発するほうが、ありのままのエネルギーをむき出しにするよりも効果的だ。そうすれば、聴衆との一体感が生まれるからである。

●人間味を出すべし。ただし、感情的にはなるべからず。

人間味を出すのはいいことだが、出しすぎには気を付けよう。日本の政治家である野々村竜太郎氏は記者会見の席で、公金の大部分をどう使ったか説明するよう求められ、号泣し始めた。その記者会見の動画はYouTubeで公開され、世界的に悪い意味でセンセーションを巻き起こす結果となった。人間味を出すことは重要だ。かといって、お涙頂戴的になったり、ヒステリックになったりするのは禁物である。

●事実を示すべし。ただし、高飛車にはなるべからず。

どの国や地域の聴衆も、重要なデータを網羅してうまく構成した簡明なプレゼンテーションを高く評価する。しかしその一方で、連勝中のWWEのプロレスラーさながらに、自分の実績をこれでもかと誇示するのは避けたいところだ。ときには、少し控えめなほうが効果的なこともある。例えば、グラフを提示する際は、詳細をいちいち説明して聴衆を感心させようとするよりも、数字そのものに語らせてみてはどうだろうか。

新製品のプレゼンテーションの動画をウェブで公開する企業――特に、Apple、フェイスブック、アマゾン、Googleなどの大手IT企業が思い浮かぶ――が非常に増えたことで、世界中のどこにいても最高のプレゼンテーションから学ぶことができるようになった。その結果、世界全体のプレゼンテーションの好みは少しずつ一元化されつつある。

もちろん、シリコンバレーのプレゼンテーション・スタイル全体の始祖は、Appleの故スティーブ・ジョブズ氏だ。仏教と禅の愛好家だったジョブズ氏は、ハードウェアのデザインにしても、ソフトウェアのインターフェースにしても、プレゼンテーションのスタイルにしても、単純明快であることにこだわった。Appleの新製品について説明する際は、大げさな表現(「革命的」「驚異的」など)を使う傾向があったのも確かである。しかし、プレゼンテーションのそれ以外の要素――言葉、舞台装置――は必要最小限で、慎ましく、禁欲的ですらあった。

シリコンバレーは西海岸に位置し、太平洋を挟んでアジアと向かい合っている。それを踏まえると、ジョブズ氏の考案したプレゼンテーション・スタイルがアジア型と欧米型のハイブリッドであることは納得がいく。カジュアルだが綿密に構成され、楽しいが軽薄ではなく、シンプルだが単純すぎることはなく、親しみを感じさせるが脱線することは決してない、そんなスタイルだ。

僕も、プレゼンテーションの分野では自動車の分野と同様に、ハイブリッドこそが未来のあり方であり、世界全体で最も有効なスタイルであると考えている。

あなたはどうだろうか。文化の異なる聴衆を相手にプレゼンテーションを行った経験はあるだろうか? そして、その結果は? あなたなりの「べし、べからず」をシェアしてみてはいかがだろうか。LinkedInのメンバーは多様性に富んでいるので、貴重かつ実用的なフィードバックが得られるものと期待している。


この記事は、2014年9月9日にLinkedInに寄稿した英文を和訳したものです。

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