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2016年3月11日 (金)

日本人・アジア人・地球人 「やらないこと」を決める 上手な時間管理のコツ

※この記事は日経産業新聞で2016年1月15日に掲載されたものです。
日本経済新聞社の許諾の元、転載しています。

「どうやって時間管理しているのですか?」とよく聞かれる。僕は大学院を経営しているだけでなく、ベンチャーキャピタルでの投資事業や日本版ダボス会議「G1」を主催しているほか、東北復興を支援する一般財団法人「KIBOW」の代表理事も務めている。交流サイト(SNS)で情報発信したり、本を執筆したりしている。プライベートでは囲碁やスノーボード、水泳に打ち込んでいる。家に帰れば男ばかり5人の子どもと向かい合っている。

「やらないことを決める」。日々の時間管理にはこれがすごく重要だ。僕は会食や接待はしないと決めている。テレビは見ないし、ゴルフもしない。読書はするが、ノンフィクションだけで小説などのフィクションはまったく読まない。長時間通勤もしない。創業してから20年近く、職場から徒歩圏内に住んでいる。

無駄を省くだけでなく、やるべきことを絞り込むことも大切だ。あれもこれもやろうとすると、意識が散漫になってしまい、能力にならない。本当に楽しみだと思えることも減ってしまう。戦略とは選ぶものだ。集中すればするほど能力も向上しやすくなる。

やるべきことが明確になったら、その効率をできるだけ高めることに心血を注ぐ。自分のスケジュールとにらめっこしながら、どうやったら最も効率的になるのかをいつも必死に考えている。

僕は出張するとき、できることを可能な限り組み合わせることにしている。例えばワシントンDCに行くと決まっているなら、現地の記者や著名な政治家に会うためアポイントを入れたり、現地の起業家たちのネットワークとの会合を設定したり、英語でスピーチをする機会を作ったりする。スイスのダボス会議に行くなら、隣国のオーストリアのウィーンに立ち寄って国連の事務局や国際原子力機関(IAEA)を訪問する。このように他の活動と組み合わせると、複数回かかるところが1回で済む。

戦略的な時間の使い方は結果にも結びつく。僕のプライベートの事例で恐縮だが、日本マスターズ水泳に2015年まで11回連続で参戦し、9回連続でメダルをもらった。囲碁は十数年のキャリアで今ではアマチュアで2、3段の棋力だ。40代で始めたスノーボードは今では板を回転させながら跳びはねる「グランドトリック」ができるようになった。

今でこそ僕は仕事、趣味、家族などにバランスのとれた人生を送っているように周囲から見られる。だが、人生のそれぞれの段階では、実はかなりアンバランスな、偏りがある生き方をしてきた。

住友商事の社員だった20代後半は経営学修士(MBA)を取得するための勉強に打ち込んだ。それ以外は一切やらなかった。30代前半はグロービスの立ち上げに専念した。あまりに多忙すぎたため、東京・麹町にあった当時のオフィスで寝袋にくるまって夜を明かしたことは数知れない。そのときはプライベートな時間も家族とのふれあいも、仕事以外の全てを犠牲にしていた。

僕がようやく家族との時間を取り戻し始めたのは30代後半、子どもが生まれ始めてからだ。もっとも30代は健康をほとんど顧みなかった。体重は今より10キロ以上も多かった。40代に入ってから囲碁を習い始め、43歳で日本マスターズ水泳に初めて参加した。スノーボードを始めたのは46歳だ。

今、この瞬間にバランスがとれているように見えていることであっても、これまでずっとそうだったわけではない。過去に犠牲にしてきたものを必死に取り戻しているだけなのだ。何年、何十年にわたるスパンで人生のバランスをとる。この「長期のタイムマネジメント」も日々の時間管理と同じように大切なことだと思う。

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