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1999年9月 3日 (金)

組織人 会社の存在する意義は? vol.1

今、時価総額で企業をはかるのが大はやりである。先日公開したグッドウィルの折口さんからは、「わが社の公開時の時価総額は、公開時の光通信を上回り、すでにHISよりも大きい」というメールが届いた。ソフトバンクの孫社長が、「すでにソフトバンクの時価総額は、新日鐵を上回っている。それにもかかわらず、経団連からお呼びもかからないのはどういうことか?」と発言されているのを耳にした。

ここで疑問が湧きあがった。時価総額で企業をはかるのは妥当なことなのだろうか? 米国では、当然のごとく時価総額が一番の尺度になっていることは事実だが、本当にそれでよいのだろうか? 会社というのは、何をもって優劣をつけるべきなのだろうか? その指標とは何だろうか? そして、それら一連の疑問の最後には、必然的に、「グロービスは何を目標にすればよいのだろうか?」という重い根本的な質問を自らに突きつけられることになった。

以前の日本は、売上高至上主義であり、絶対的な利益が会社の価値を左右する要素であった。あるいは総資産や社員の総数も重要ではあった。ファイナンスを多少学べば、「時価総額は、理論的には、将来生み出されるであろうキャッシュフローの現在価値の総和である」し、また、「株主の評価の総和」であるので、規模をはかる指標としては、最も妥当な気がする。しかし、それでよいのだろうか?

今、この点を悩んでいる。グロービスの経営者としては、時価総額の最大化を目標とすべきなのだろうか、あるいは違う目標を持つべきなのだろうか。

グロービスの行っているビジネス・スクールを例にとって、説明しよう。ビジネス・スクールの展開には、二つのビジネスモデルがある。

一つは、株式公開を前提にして、エクイティ・ファイナンス(株式)で資金を調達して、投資を積極的に増やす拡大路線を歩むモデルである。当然、多拠点展開をして、東京・大阪以外にも主要都市すべてにスクールを開講して、受講生数を増やして、インターネットや衛星放送などを使ってクラスを提供して、クオリティーを保ちながらも規模を追求する方法がある。

もう一つは、非公開のまま、パートナーシップ形態にして、適正規模でクオリティを追求する方法である。つまり、「アジアNo.1のビジネス・スクール」を目指すモデルである。欧州のINSEADやIMDのように、政府の援助なし
で独自に存続して、公的機関からも認可を受けなくとも、社会が認めるMBAを発行する機関として、欧州No.1、No.2の評価を受けている大学院もある。当然、グロービスも同様に、アジア版INSEADのように独自のMBAを
発行して、優秀な受講生を引き続き集め、クオリティを高めて、アジアNo.1のビジネス・スクールの評判を得ることができるかもしれない。

当然、上記のミックス型もあるかもしれない。もしも、会社の価値は時価総額によって決まるという見地に立てば、必然的に、グロービスは前者のモデルを追求すべきという結論に達する。一方、後者の場合のように、受講生の満足度や社会の評価など定性的側面を重視することもできる。

一方、ベンチャー・キャピタルもJAFCOのように公開することによって時価総額を高める方向性があるが、パートナーシップ形態で非公開のまま価値を生み出す個人に利益を還元するビジネスモデルもある。

双方の事例とも、僕は正直言って、正解はないと思っている。つまり、どちらのビジネスモデルを模索しても良いと思っている。それはステークホールダー(企業を取り巻く人・組織)が満足するかぎりであれば、本人たちが決めれば良い問題であると思う。

したがって、グロービスでも「本人たち」が、どのモデルを追求すべきかを、何を尺度にすべきかをおおいに議論している真っ最中である。この尺度も、自由に決めてよいと思う。

つまり、時価総額であってもよいし、定性的な目標であってもよいと思う(公開すれば当然、株主価値の最大化をしなければならないが、非公開の段階では、さまざまな尺度を導入することができると思っている)。ただし、方向性は出さなければならない。

8月13日に、グロービスのエグゼクティブ・コミッティ(各部門のリーダーで構成される会)のメンバー8名が一日かけて、グロービスの方向性を議論した。グロービスの各部門単位の競争優位性の分析から全社戦略の方向性を議論したが、上記問題の結論は出なかった。時間を仕切り直して再度議論をすることとなった。当然、引き続き、全社レベルでオープンに意見交換されることになるで
あろう。

僕らは、この問題に対峙するにあたっては、「そもそも会社は何のために存在するのか?」から始まって、「グロービスをどういう会社にしたいのか?」を議論したいと思っており、その際には「僕らが大切にしたい尺度・価値は何であろうか?」まで当然話し合われることになると思う。

コラムの読者のみなさんにもご意見をいただけたらと思っている。ステークホールダーの皆様のご意見は、非常に貴重だ。

ある程度方向性が定まれば、このコラムの場で「会社の存在する意義は?VOL2」をご披露したいと思っている。乞うご期待  。

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