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2004年2月 5日 (木)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議参加報告(その4)

ダボス会議の4日目は、前日までのハードワークの疲れと多少の二日酔いもあったので、のんびりと過ごすこととした。

その日は、ビル・ゲイツ氏や米国副大統領などのビッグセッションにも参加せずに、ダボスの参加者と話をすることに専念した。e-Bayの創業社長や、中国自動車会社の副会長のロイド氏、ランチは韓国の大鮮グループの.キム会長と一緒にのんびり楽しんだ。

ダボスでは、様々な会議が開催されるが、実は、一番の目的は会議に参加することではない。それよりも重要なのは、この場に集まった参加者と出会い、ミーティングを持つことである。国家元首や国連事務総長が集まる場である。当然、外交が繰り広げられる。大企業のCEOが集まる場である。当然商談が始まる。世界の多数の業界関係者が集まる場である。当然業界団体の会合が行われる。今回のダボス会議の場でも、世界の建設会社のCEO50人が集い、「今後一切賄賂を提供しない」という共同宣言をした。これはかなり注目を集めた。

各地でプロフェッショナルサービスの会社がクライアントを集めた会合も行っている。マッキンゼー、ADL(アーサー・D・リトル)、モルガンスタンレーなどが何度も会合を繰り広げている。ここダボスは最高の外交・商談の場と化する。限られた期間しかないし、その中でなるべく多くの方が来てもらえるように良い場所を設定する必要がある。従い、全ての値段が通常の倍以上に吊り上るのである。

僕も、今回はネットワーク拡大とPR活動の場と決めていたが、その気になれば投資家へのプレゼンを高めることもできた。あるいは、他のVCファームとの意見交換や、ビジネススクールの学長との提携の可能性の打診などもできたのである。ま、今回は、初めての国際舞台である。来年から少しずつ様々な可能性を模索したいと思う。

一方、僕にとっては今回のPRに関しては、やるべきことはやったと思っている。「何をPRするのか?」という質問を良く受ける。その答えは、「何もPRしない」である。グロービスのことをPRしようと思っても誰もそんな話を聞きたがらないし、メディアが宣伝をしてくれるわけが無い。では、「なぜ取材したがるのか?」という疑問が湧くであろうが、答えは、「ジャーナリストがそのストーリーを面白いと思えば、取材をする」である。そして、僕はその質問に対して、なるべく効果的にプラスになることを答えるのである。

では、「そんなことでPRになるのか?」、と疑問を持たれるであろうが、海外においては、先ずはトップが顔を出し、存在を示すことが重要なのだ。なぜならば、海外では、グロービスは知られていないし、誰も「堀義人」を知らないからである。(日本でもまだまだなのに、なおさらである)。今回は、この点でもやるべきことをしっかりとやったと思う。但し、これも未だやっと始まった程度であり、効果のほどは知れている。気が遠くなるほど繰り返し繰り返し出つづけて、卒業生や投資先企業が海外で活躍し始めて、やっと「みんなが認める良いグロービス」として知られることになる。やるべきことはたくさんあるが、このプロセスを楽しみながら粘り強くやり続けたいと思う。

現在41才。あと20回ダボス会議に参加しても60歳をちょっと超える程度である。その間にかなりのことができるのではないかと思えてくる。

そうこうするうちに日が暮れ始めた。夕方からは、ハーバード大学のレセプションが開催された。「ハーバード流交渉術」の著者やトロントビジネススクールの学長などとお話した。ハーバード大学のローレンス・サマーズ学長の挨拶があった。「ハーバードのネットワークは、世界で最もパワフルなネットワークである。毎年ここダボスで再会することを一つの伝統にしたいと思う」と。

僕は、将来のグロービス・マネジメント・スクールの姿と重ねていた。「グロービス・マネジメント・スクールの卒業生は日本で、いやアジアで最もパワフルなネットワークである。またダボスの場で再会しよう」と、十数年後には語っているであろう。

雪道を足早にコングレスセンターに戻り、WEF主催のコンサートに参加した。階段を降りてコングレスホールにたどり着くと、目の前にはオーケストラの扇型の配置があった。何とロシアのマリンスキー劇場が、そのままダボスに再現されているのだ。会場に入り、前から数列目のど真ん中のベストポジションに座った。ワクワクしながら開演を待った。指揮はワレリー・ゲルギエフ氏、曲目は、「くるみ割り人形」である。1時間程度の心地よい音楽の調べである。僕は、最初から最後まで、心底酔いしれた。素晴らしかった。終わったらスタンディング・オベーションとブラボーの連呼である。拍手が鳴り止まなかった。

会場を出て、参加者の流れに従い歩くと、そこには、ブラックタイ(正装)のソワレの会場があった。こういった場には、カップルで行かないと面白くないので、僕は、ちょこっとだけ顔を出してホテルに戻ることにした。帰り道には、まだくるみ割人形の余韻に浸っている僕がいた。こうやって初参加のダボス会議の全日程を終了した。

5日目の朝、荷物をまとめて、ホテルをチェックアウトした。この日は、一転して雪である。行きがバスだったので、帰り道は列車で帰る事とした。僕は好奇心が強いので、旅に出ると、なるべく違うルートで帰りたいと思う。駅まで近かったので、スーツケースを引っ張りながら雪道を歩いた。定刻で見る色と違う。濃い緑色である。列車を乗り継いで、出発から約3時間後にチューリッヒ駅に降り立った。

これで欧州出張の半分の日程を終えることになった。これからは、チューリッヒとロンドンでの旅程である。投資家プレゼンテーション、YEO(Young Entrepreneurs' Oraganization)でのスピーチ、そしてLBS(London Business School)でのスピーチなどハードなスケジュールが待っている。ホテルにチェックインして、プールで泳ぎ体調を整えて、後半戦に備えることとした。

2004年1月25日
チューリッヒにて

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コメント(4)

  • 日本人が国際社会それも世界でもトップクラスの会議で堂々と活躍している姿が目に浮かび実にうれしい。レポートされる内容もさることながら堀社長の率直な姿勢と雰囲気が良く伝わってきて気持ちの高まりを覚えます。小生65才になりますが、こんなレポートははじめて、是非続けてください。思わず筆をとりました。

    投稿者:

  • コメントありがとうございます。こういうメール励みになります。僕にできる限りの努力をしたいと思っています。

    投稿者: 堀義人

  • これだけ大きな会議であるにも係わらず、日本国内でのマスコミの取り上げ方が小さいのが残念です。石原都知事が拉致問題を話したとかいうことは、昨年の「米国対欧州」、今年の「モスリム対米国(欧州一部)」という対立や協調構図からいえばマイナーな話ですし、少なくとも為替問題などでもっとプレゼンスを出せる(出すべき)のにと思い残念な思いをしてました。

    日本という国が「世界の場で取り上げられない(プレゼンスが下がった)」と新聞等で嘆くよりは、なぜ首脳級が討ってでていかないのか。それが残念です。よほど旧国際連盟で演説をぶち、退席した松岡外相が勇ましいです(内容の良し悪しは別として)。皆英語ができないからでしょうか(笑)

    その様な中、堀さんがしっかり世界のリーダーの話を聞き、発言(発信)し、関係をつくり、feedbackをくれるというのは、なんともうれしい限りです。必ず、次につながると思いますし、つながって欲しいです。

    堀さんがHPのフィオリーナをはじめ多くのリーダー達からリーダーとしての必要なことを聞いていましたが、その中で「シンプルにメッセージを伝える」というのが頭に残りました。
    その意味では堀さんは「グロービスをどうInseadやIMDのようにもっていくか」「会議で何かを得てこよう、次につなげよう」という少なくとも2点について、今回のコラムから読者にシンプルに伝わっていると思います。

    個人的には、リーダーには、みなが驚く運や逸話も大事だと思います。そんな意味では11月のHBSのbusiness awardで堀さんがゴーン氏のサイン入りの本を当てたときは、個人的には「この人運が強いな」とつくづく思いました。(僕はゴーン氏との写真はとりましたが・・・(笑)

    生き方・行動・考え方が伝わってくるこのコラムは大変楽しみにしています。中でもかならずまたダボス会議関連の記事を載せてください。世界との接点が少し見えたようで、すごくおもしろいです。(いつかは自分が同会議に潜り込めないか考えたいところです)

    中途半端な知識で、拙い文章、徒然なるままに書いて、大変失礼しました。

    投稿者:

  • ご多忙な中、このようにコラムのフィードバックを頂きありがたく思っております。僕も、僕なりに一生懸命にやるべきことをやり、感じたままに「起業家の風景」を書きつづけようと思っています。

    投稿者: 堀義人

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