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2005年2月10日 (木)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議の「12の難題」

今年のダボス会議のコラムは、昨年のコラムとは趣向を変えて、時系列に書かずに印象に残ったことをまとめて書くようにしている(「ダボス会議参加報告その1〜4」20041.27〜2004.2.5を参照)。だが、実態は、ダボス会議開催中にリアルタイムに書けずに、帰りの飛行機の中でまとめて書いたので、時系列になっていないだけなのかもしれないが。。(^^;;

いずれにせよ、まだ書き足りないことがあるので、書きつづけることとした。

今回ダボスに来る前は、正直言って憂鬱であった。参加費は高いし、約1週間の時間的コミットメントが必要だし、ダボスは寒いし、会場間の移動も多いし、泊まれるホテルはいわゆるビジネスホテルしか残っていないし、仕事は超多忙だしで、「税制改正」の一件があったしで、実はあまり気乗りしてなかった。

ダボス会議は、今年で2回目である。僕は飽きっぽい性格なので、同じことを繰り返すのは、あまり好きではない。なるべく違うことにチャレンジしてみたいと常日頃より思っている。そこで、今年のダボス会議では、昨年とは違うことをしてみたいと思案し始めた。

振り返ってみると、昨年はPR会社にお願いしてテレビなどの媒体に積極的に出演した。今回は、テレビやラジオのインタビューは受けず、違うことに時間を使おうと思った。また、昨年はニュー・アジアン・リーダー(NAL)の関係で、様々な会合を持ったりで慌しかったが、NALは今年からYoung・Global・Leader’(YGL)という形となり、アジアの会合からグローバルな会合に進化していた。YGLは、40歳以下を対象としているため、42歳の僕はアルムナイ(卒業生)の位置付けとなった。従い、これも今年はやらなくて良い。

その代わりに何をしようかと考えてみた。ダボスに来る飛行機の中で、以下の3つを今年のテーマにしようと決めた。

1)「税制改正」を訴える活動
(「コラム:ダボス会議での憂鬱」参照)

2)著名人や首脳級のスピーチに多く参加する。
世界的に名を馳せている方には何かの魅力があるに違いない。テーマで選ぶよりも、高名な方々が参加するセッションに出よう、と決めた。(「コラム:世論形成の場としてのダボス会議」参照)

3)テクノロジーをテーマにしたセッションに多く参加する。

1)と2)に関しては、今までのコラムで活動の状況がわかると思うので、今回は割愛する。3)のテクノロジーに関しては、いくつかのセッションに参加したが、あまり新しい発見もなく、ちょっと期待はずれに終わってしまった感じがする。

今回のダボス会議で、それら3つのテーマ以外で、意外に面白いと思ったのが、初日の13:00-16:00まで行われた「タウン・ホール・ミーティング」という企画である。参加者には、「世界が直面する12の難題(タッフイッシュウ)」に関する小冊子が事前に配られていた。その12の中で何が重要かを参加者とともに選んでいくのである。そのプロセスは、以下のとおり三部に分かれていた。

第一部が、有識者5人による意見表明である。各有識者がそれぞれ5分程度で、自らが選んだ難題とその説明をしていくのである。
第二部では、「12の難題」に関してグループで討議する。
そして、第三部で参加者一人一人が投票をして、ダボス会議での緊急提案に盛り込むのである。

シラク大統領が急遽参加されることになったので、予定よりも時間が大幅に短縮されていた。しかも、参加者が1000人を超えているので、グループも多くなる。この3つのプロセスを3時間弱で行うのだ。これこそかなりの「難題」に思えていた。

そこで、テクノロジーが駆使されることになる。二つのツールが使われていた。一つが各テーブル(グループ)単位に置かれたパソコンで、もう一つが各自に配布されたテン・キーが入っているリモコン端末みたいなものである。パソコンは、各グループで討議されたことをリアルタイムにセンターに送信されるために使われる。その内容を、センターで集計して、即座にプレゼンテーション・シートにまとめることができるように使われていた。一方、リモコン端末は、各人の意見を投票するために使われていた。

第一部の5人の有識者の意見を聞いたあとで、第二部では、次のテーマが与えられていた。「12の難題の中で一番優先順位が高いと思うものを選び、その理由を述べよ」である。12の難題の中には、中国、中東、イスラム、地球温暖化、グローバルガバナンス(国連など)、米国のリーダーシップ、不均等な成長などがあった。それら12の難題に関する説明を読み、自分なりに優先順位を付けて選択し、グループの中で、選んだ難題を表明し、その理由を述べていくのである。

僕は悩んだ末、地球温暖化問題(グローバルウォーミング)を上げた。一方、他に意見が多かったのが、貧困問題であった。僕は、やはり地球の温暖化が心配であった。貧困は確かに大きな問題ではあるが、過去から現在にかけては、徐々に良い方向に向かっている。ところが、気候の問題は年々悪化している。本当に僕らの子孫に良い環境を残せるのだろうか、と気がかりであった。

僕らのグループでは、「貧困」対「地球温暖化」で激論をかわすことになった。僕は、「2020年の世界の難題は何だと思いますか?」などと質問しながら、議論を進めていった。グロービスで講師もやっているので、ファシリテーションにはある程度自信があった。グループで、貧困と地球温暖化を30分程度集中的に議論をしたあと、他の難題に関しても意見交換した。そして、その討議された内容を書記役がまとめて、パソコンに打ち込み、センターに送られた。

センターでは、30ぐらいあるグループから送られた内容を集計して、12の難問ごとに理由が列挙されていく。そして、瞬時にその結果が、スクリーンに打ち出された。司会者(ファシリテーター)は、それらの理由を紹介していく。12以外に、教育などが加えられて合計14のテーマになった。かなりスムーズに進行していった。

そして、第三部で、その14の中から投票をすることになる。リモコン端末で、自らが選ぶ難題を投票することになる。グループでは、コンセンサスをとる必要が無く、あくまでも、意見交換の場として使われたのである。僕は、やはり考えは変わらずに、地球温暖化問題を一番に上げた。全員による投票の結果、今年のダボス会議で一番取り組むべき難題は、貧困と不均等な成長などの「貧困問題」と「地球温暖化問題」であった。

その後行われた、英国のトニー・ブレア首相のスピーチが、偶然にもその二つの問題にフォーカスされていたのは、実に興味深かった。グローバル・リーダー(地球人)として、首相と同じ次元で、何をするべきかを考え、議論してきたのだ。その結果、ブレア首相のスピーチの内容にかなり共感できるのであった。

その日から始まったダボス会議の様々なセッションでは、数日間にわたりそれらの難題をどう解決するかが、意見交換されることになった。だからこそ、ダボス会議の四日目に、シャロン・ストーンが立ち上がり、彼女の呼びかけで、数分間で1億円もの寄付金が集まったのであろう。僕はその場にはいなかったが、後のマスコミ報道でシャロン・ストーンが1億円集めた逸話を知ることとなった。

2005年1月31日
グロービスのオフィスにて
堀義人

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