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2011年5月 9日 (月)

日本人・アジア人・地球人 LAでのミルケン会議2011参加記

アマゾン河のほとりのマナウス市から、リオデジャネイロ空港まで4時間南下した。そして、リオから再度北上してパナマ経由でLAに向かう。マナウスの上空を再度飛ぶのではないかと思うほどの無駄な飛行ルートだ。だが、翌日の早朝一番のLAでのスピーチ間に合わせるには、この方法しかないと言うのだ。

8時間かけて、パナマに到着した。パナマ運河をしっかりとこの目でとらえた。思ったよりも近代的なビルが立ち並ぶ都市だった。そして、LAまで北上する。また約8時間のフライトだ。オサマ・ビン・ラディンが殺害されたからか、LA行きのフライトのセキュリティーは、厳重だ。数人がかりで、全ての手荷物をゲートで開けて確認する用意周到さだ。

ようやくLA空港に到着した。LAからタクシーで、ホテルに向かった。片側5車線の高速を走りながら、ぼんやりとガソリンが枯渇した後の車社会を思いおこした。当然その時には、電気自動車になっているのであろう。だが化石燃料が枯渇した後のエネルギー源は、どうするのだろうか。将来まで見越した政策が必要だ。決して感情的にならずに、冷静に考える必要がある。

そう考えている間に、LAのべバリー・ヒルズに位置するホテルに到着した。マナウスのホテルを出てから26時間経過していた。時計を見るともう深夜1時を回っていた。長い旅程だった。3-4時間仮眠をとってから、朝6時半からのセッションに参加するために、6時前に起床する予定だ。

ここで、僕が参加するミルケン・インスティテュートのグローバル・コンファレンスに関して説明しよう。このミルケンGCは、9月の国連総会に合わせてNYで行われる「クリントン・グローバル・イニシアティブ」、そしてベイエリアで開催される「TED」と並ぶ、米国3大コンファレンスの一つであると、僕が勝手に認識しているものだ。

クリントンが主に、政治家・NGOが対象で、TEDが主にビジョナリーのスピーチが中心だが、ミルケンは各方面の専門家が集う「一大シンクタンクの祭典」という感じだ。参加者が3000名超で、スピーカーも400名を超えている。セッション数も100前後で、中身も多岐に亘っている。

この会合は4日間行われる。最初の1日がプライベートな会合で、かなりの重鎮たちが参加している(らしい)。その後3日間かけて、様々なセッションが繰り広げられる。ただ、「グローバル」と銘打ちながら、基本的には米国中心主義である。パネラーも殆どが米国人だ。ま、それはそれでわかりやすい。

米国人が多いと、米国の良き「議論の文化」を肌で感じることができ、かなり知的刺激を受けることができる。僕は、コンファレンスの3日目の朝8時からのセッションに登壇依頼された。朝6時半のセッションに精力的に参加してから、登壇者控室に向かった。

僕が登壇するセッションは、「Investing Asia」だ。他の登壇者は、タイの通商部代表、シンガポール金融庁のトップ、投資グループアポロのアジアのヘッド等だ。僕の役割は、日本の状況を伝えることと、アジア投資全般に関する考え方を披露することだ。著名な投資家も聴衆にいた。

モデレーターは、フォーブズのジャーナリストで、元CNNの女性キャスターだ。僕も良く知っている人だから、やりやすい。僕の手ごたえは、かなり良かった。後でツイッターで知ったのだが、田村耕太郎氏によると、「早朝ミーティングで聞き逃したが私の知人の多くが絶賛されていた。彼は日本が誇る貴重なグローバルエリートだ」、との評価を受けているようだった。

僕が参加したセッションのビデオはネット上で観ることができる(Milken Institute Global Conference 2011 - Investing in Asia
注:僕が喋るまでの冒頭の部分は、冗長なのでスキップしてもいいと思います。なお、コラム末尾の、僕のスピーチメモをご参考ください。

僕のセッションが終わった後に、コーヒーショップで登壇者と雑談をした。1時間ほど雑談した後に、日本セッションの登壇者に挨拶をしに、控室に向かった。三井住友銀行の北山会長、アレン・マイナー氏、田村耕太郎氏等に挨拶をした。

僕は、日本セッションの時間帯に、「ソーシャルメディア」のセッションに参加した。この登壇者の中で抜群に面白かったのが、アイディアラボのCEOのビル・グロス氏だ。他の登壇者が皆ジーンズにノータイのラフな格好で“それなり“の雰囲気を醸し出す中、グロス氏は、一人”ださい”スーツとネクタイで登壇していた。だが、発言は群を抜いて面白かった。

「ソーシャルメディアの可能性は、まだ始まったばかりだ。新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネット、ソーシャルメディア、(敢えて二つを分けて語るが)、で考えた場合、ソーシャルメディアに人々が使う時間は、まだまだ増え続けている。とてもパワフルなツールなので、これからも更に進化するであろう」。

「今までは、在庫を短期化したり、回転率を上げたりすることにより、利益を上げて来た。これからは、在庫ではなくて、知識だ。今まで顧客の声を拾うのに、膨大な試行錯誤をしてきた。だが、今やその顧客の声が、実名で、リアルタイムに、ソーシャルグラフとともに、継続的に手に入るのだ。これからは、その顧客の声等の知識やデータの処理・解釈が、成功への鍵となる」。

「これからは、『聞く力』が重要になる。顧客の声を聞く、『リスニング・オーガニゼーション』の時代に入る。ソーシャルメディアは、誤解を恐れずに言えば、社員が皆ウィキ・リークスを持っている様なものだ。全てが漏れることが前提に、組織の透明性を高めることが重要になる。組織そのものも進化せざるを得ないのだ」。

「宣伝とは、今までは顧客にとって邪魔者でしか無かった。だがソーシャルメディアの出現とともに、宣伝ではなくて、顧客の推薦・声がメガフォンの様な働きをする。宣伝よりも、友人や尊敬する人々の推薦や口コミが、多くの人間の考えや購買行動に影響を与えるのだ」。

「ツイッターの呟きは、特定多数な人にテキストメッセージを送ると同時に、世界全体にbccしているようなものだ。良い意見を拡張し、悪い意見を先回りして抑える必要がある」。

「これからのベンチャーの姿も変わる。瞬時に世界市場にリーチできるようになる。今まで使ってきた『マーケティング予算』という概念そのものがなくなり、瞬時に数百万人にリーチできるようになる。マーケティングは不要になり、良いプロダクトを作り口コミで広げるようになってきた。人類史上最速でゼロから100万人に顧客を広げられるようになったのだ」。

「ソーシャル検索は、まだまだ機能としては不満足だ。アルゴリズムを使った検索では、もの足りない。そうなると、検索そのものよりも、誰がいいと思ったかの情報の方が重要になる」等、ビル・グロスの話は、切れ味が良く、実に面白い。

僕も、思わず刺激を受けたので、日本からの声として、ソーシャルメディアのセッションで、語られてない視点を3点、会場から手を上げて付け加えることにした。

(1)震災後に、携帯や電話は使えない中、身元確認で一番効果的だったのがソーシャルメディアだった。呟くだけで、安否が確認できるので、最近では安否確認のためにも、ツイッターやフェイスブックを義務化している会社もある(ちなみにグロービスがそうだが)。

(2)ニュース・情報ソースとしての価値も証明された。新聞では遅く、テレビでは広範な情報は得られない。インターネットだけでは、適切な人に適切な情報が届かない。そこで、ツイッターが重要な情報ソースとなるとともに、情報媒体になった。

(3)そして励まし合う効果も大きかった。あまりのショックに、多くの人々がソーシャルメディアに活路を求めて、勇気を与え合い、苦難を乗り越えて行った。

発言をした後に、僕の肩を優しく叩く人がいた。振り返ると年配の女性が、「情報を共有してくれてありがとう」と、わざわざ伝えてくれた。僕の胸が熱くなるのを感じ取れた。

ランチタイムのパネルも面白かった。「Global Risk」と言うテーマで、元NATOの最高指揮官、英国諜報部MI6の元長官、CIAの元副長官等の米英の安保・諜報機関の元トップがパネラーとして登壇するのだ。モデレーターは、CNBCのキャスターだ。ビン・ラディン氏から始まり、中東情報、中国の状況などを語って行く。

印象に残った言葉は、「今ほど世界的な協調が必要な時代は無いのにも拘わらず、米国・英国を含めて政治家がポピュリストになり、ナショナリスト的で内向きになり、国際協調しなくなっている。G8もG20も機能していない。その点が、一番憂慮すべき問題だ」。英米の諜報機関のレベルの高さを見せつけられた気分だった。

ランチタイムの後は、「フクシマ後の原子力(Nuclear Energy after Fukushima)」というテーマのセッションに参加した。ダボス会議同様、10ぐらいのセッションが同時に開催されているので、参加するのを選ぶのが大変なのだ。

印象に残った発言を列挙しよう。

「テラワット(100万メガワット)当たりの死亡者は、石炭が161名、石油が36名、原子力は0.1名だ。安全性で考えたら、ベースロードとなりうる電力源の中で、原子力が圧倒的に安全である」。

「フクシマの事故で思う事がある。車が事故して、危険が見つかったからと言って、車を作るのをやめるのだろうか。そうはしない。安全性を高めて、乗り続けることになるであろう」。

「今、原子力に力を入れているのは、韓国、インド、中国、ロシア等の新興国だ」。

「メディアのカバレッジも一方的過ぎる。3万人の殆どが津波で死んだにも拘わらず、原子力の恐怖のみを喧伝している。理不尽を感じるし、バランスを著しく欠いていると言えよう」。

「石油は、最も不安定な地域に偏在している。ホルムズ海峡を守るのに米国はどれだけの費用を投入してきただろうか。1970年代の石油危機後に、フランスは政策的に80%まで原子力発電の比重を上げた」。

「現時点では、原子力に代わる信頼できる代替エネルギーは、見つからない。100年前には、原子力と言う経済的で、革新的なエネルギーが可能とは、誰も思わなかった。原子力が無いと、地球全体が『喫煙所』になってしまう」。

一方、米国の世論は、反原子力に傾いているようだ。このジレンマや世論対策の難しさに、政策決定者は、日本同様に苛まされているようだった。僕も、日本代表として、フロアから発言した。うまく、自分が言いたいことが説明できたかどうかは自信が無い。もっと簡潔に分かりやすく発言できるように訓練する必要性を認識した。ま、何事も訓練だ。

僕は、さすがに疲れたので、このセッションの後に部屋に戻って、一休みをすることにした。暫くして、部屋でシャワーを浴びているときに、停電が発生した。「アルカイダの逆襲か」等と勘繰ってみたが、どうやらベバリー・ヒルズ・カウンティ一帯が停電となった模様だ。僕は、やることが無いから、ひたすら寝続けた。日本の電力は、震災以外での停電はほぼ皆無だ。その安定性に感謝しなければならないと思った。

翌朝7時から、投資家とホテルで朝食ミーティングだ。日本の状況を一通り説明して、理解してもらえた。充実感を胸に部屋に戻り、その足で、LA空港に向かった。

タクシーの窓から見るLAの空は、いつものように青かった。僕は、その瞬間ホテルから一歩出てなかったことを認識した。青い空を楽しみながら、僕は後部座席で横になった。

長旅を振り返りながらも、目をつぶった。気分はカリフォルニアの空のように、爽快だった。

2011年5月5日
成田に向かう飛行機の中で執筆
堀義人

<末尾:参考スピーチメモ>
Milken Global Conference May 3rd , 2011
Investing in Asia

1. 8 disasters
1)Earth Quake-magnitude 9.0,
2)Tsunami- 15m, 37m at Miyako-city
3)Fukushima Radiation – 4 reactors with Level 7 Accident ,
4)Supply Chains issues,
5)Power Supply shortage
6)Reputation Damage on Japanese products
7)Economy: bankruptcy and unemployment
8)Solvency risk of JGB

2. The Implication from the past
1) Great Kanto Earthquake in 1925. 4 years later in 1929, Banking Depressions in Japan.
2) Kobe Earthquake in 1995, 3 years later in 1998 Financial Crisis which made Yamaichi, LTCB, NCB to go bankrupt.
3) Great East Japan Earthquake in 2011, what should follow????

3. Economy short-term - Bad
1)Automobile Sales
March, 2011 37% down from previous year
April, 2011 51%!! Down
2) GDP Growth
1Q 2011, - 0.8%
2Q 2011 -1.5% ???

4. Economy Opportunity & Threat something to be decided by Japanese -Demand of Reconstruction -Competitiveness -Changes -Spirit-Awakening!!!

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