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2011年12月 6日 (火)

政治・社会 日本のビジョン「100の行動」: 21.ODAパワー【外務7】

東日本大震災に対して、合計163の国・地域と43の機関から人・物資・寄付金などを含む支援表明があり、現時点において、合計126の国・地域・機関から公式ルートで物資・寄付金が届けられたと外務省が公表した。

さらに、発災直後の3月22日の時点で、世界中の670以上のNGOなどから支援の申し入れやお見舞いの言葉があったことを、総理官邸のホームページで明らかにしている。そして、これまでに少なくとも16カ国43のNGO団体が来日した模様である。

このように、日本には途上国を含め、諸外国から多くの支援が寄せられた。これらの支援の背景には、甚大な災害被害への人道的支援のみならず、日本が長年取り組んできた政府開発援助(ODA)などの国際協力に対する、評価や感謝の気持ちも反映していると思われる。

しかしながら、日本のODAを取り巻く国内環境は、予算面でも国民世論の面でも、非常に厳しい状況に直面している。

日本が2009年度までに、2国間政府開発援助の実績を有する国・地域数は189に達している。また、国際協力機構(JICA)が行っている青年海外協力隊事業では、これまでに合計30,816名の日本人が世界の82ヵ国でボランティアとして国際協力活動に従事してきた(2007年11月時点)。さらに、将来の国造りを担う途上国の青年を対象にした海外研修生受け入れ事業では、既に30,000名を超える若者が来日している。

しかしながら、1993年以降8 年間にわたり世界第1 位であった日本のODA予算額は、2001 年には米国、2006 年には英国、2007年にはドイツとフランスを下回り、現在では第5 位に転落している。過去3年間のODAの円借款などを除いた一般会計での予算額は、2009年度は6,722億円(対前年比−4.0%)、2010年度は6,187 億円(対前年比−7.9%)、2011年度は5,727 億円(対前年比−7.4%)であり、ついにピーク時の1997年度1兆1,687億円から半減している。

さらに、2009年のDAC諸国(開発援助委員会: Development Assistance CommitteeでOECD委員会の一つ)における政府開発援助実績の国民一人当たりの負担額は、22カ国中第18位の74.2米ドル、また政府開発援助実績の対国民総所得(GNI)比では、22カ国中第20位の0.18%と低迷が続いているのが現状である。

「日本のODAは、何に使われているのだろうか?」

日本のODAは、(1)貧困削減(教育・保健医療・人口・水と衛生)、(2)持続的成長(経済社会基盤・ICT・貿易・農業・制度整備)、(3)地球規模課題への取組(環境・気候変動問題・感染症・食料・資源・エネルギー・防災・テロ対策)、(4)平和構築(アフガニスタン・パキスタン支援・イラク支援・対人地雷対策)など、様々な分野で実施されている。

具体例としては、以下がある。
・インドネシアでの母と子の健康を守る母子健康手帳普及支援による妊産婦死亡率の低下
・ベトナムのフーミー発電所事業による官民連携によるインフラ整備
・世界最貧国のひとつであるニジェールでの「みんなの学校」プロジェクトによる初等教育の普及
・メキシコでのマヤビニック生産者協同組合に対するコーヒー技術支援による経済的自立
・エジプトのザファラーナ風力発電事業プロジェクトへの支援
・インドネシアのアサハン・プロジェクトでの水力発電とアルミニウム製造事業への支援
・その他に、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などを通じ、資源を保有する開発途上国に対する資源開発調査での技術協力
など多岐に渡っている。

尚、日本のODA支援を相手国が非常に高く評価した結果、日本の援助に敬意を称して、「中国の雲南省人材育成計画記念切手」や、「カンボジアの1000リエル紙幣(国道6・7号線改修計画)」や、「ガーナの野口英世博士生誕120周年記念切手」などになったものもある。

一方、国民のODAへの見方は、年々厳しくなっている。2011年度の内閣府「外交に関する世論調査」の結果は、「積極的にすすめるべきだ」との回答が1990年以降でピークを付けた1991年と比較すると、41.4%から14.0%も減り、27.4%にとどまる。一方、「なるべく少なくすべきだ」では、8.0%から10%近くも増え、17.8%となった。

外交における戦略的効果、一方では減り続けるODA予算、更には世論の厳しい見方を考えると、自ずとODAパワーを上げるための「行動」は、見えてくる。具体的には、(1)ODAの戦略を構築し、(2)必要予算額を確保し、(3)実行のために必要な国民の理解と支持を得ることが重要課題になる。その「行動」を以下の通り提案したい。

1. 国際協力(ODA)戦略を立案し、司令塔の設立を!

日本の国益を実現するためのODAの戦略的重要性を踏まえると、国家安全保障会議(NSC)の場で、安全保障、通商、金融、外交戦略の一環として、ODAのグランドデザイン・戦略を策定する必要があろう。

また、その実行のために、司令塔として国際協力庁(仮称)の設立を検討することも一考の余地がある。米国では国務省国際開発庁、ドイツでは経済協力開発省、英国での国際開発省など、主要国では国際協力の一元化機関(司令塔)が設置されている。しかし、日本ではODA関係省庁が、外務省以外に、警察庁、金融庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省など12省庁もあり、政策・予算・権限の一元化が図られていないことから、国際協力庁(仮称)の設立を検討することは、検討に値する。

2. ODA予算額を死守せよ!

国の一般会計でのODA予算額は2011年度で約5727 億円で、全体の約0.6%に過ぎず、ODA予算の削減による財政健全化への効果はあまり期待出来ない。むしろ、ODA予算額の減少による外交政策に対する支障や、国際社会でのプレゼンス低下への懸念が大きい。

したがって、後述のODA効率化、国民の理解と支持を得るための情報公開の促進、などを必須条件として、ODA予算額については、政治判断として死守する必要があろう。さらに、民間資金やODA 以外のその他政府資金である国際協力銀行(JBIC)の出資金・融資金や日本貿易保険(NEXI)の貿易保険なども、発展途上国の経済発展に寄与するために継続的に活用できよう。

3. 国民にODAの目的と重要性を明示せよ!

「ODAを中核とした国際協力により、世界の様々な課題解決に積極的に貢献することは、日本の国益に合致する。日本の平和と豊かさは、世界の平和と繁栄の中でのみ実現可能である」、と政府は国民に対し説明する必要がある。

その上で、国益と国際社会からの期待と要請との両立を図るために、具体的な国際協力の重点分野、(1)貧困削減、(2)平和への投資(紛争予防・緊急人道支援・平和構築)、(3)持続的経済成長の後押し(インフラ整備・グリーンイノベーションなど)、(4)資源・エネルギー・食糧の確保など)を明示することで、国民に理解と協力を求めることが望ましい。

日本国民にODAへの親しみを持ってもらうために、国連難民高等弁務官事務所の親善大使にアンジェリーナ・ジョリー氏を選んだように、日本の若者に人気がある女優・俳優・歌手をJICA親善大使に任命するのも一案かと思う。

更に、大学の国際関係ゼミ生の現地への派遣や、JICAボランティア事業への参加の呼びかけ、小学校・中学校での国際交流についての教育機会の拡充などを図るべきであろう。NGO・外務省定期協議会の更なる拡充、外務省・国際協力機構(JICA)とNGO との人事交流の促進等も同様である。

また、更なる情報公開の強化のためにも、全ての援助プロジェクトの事前評価・進捗状況・事後評価などがウェブサイトで、情報公開されている必要があろう。

このように、戦略立案と司令塔、予算、そして世論の理解喚起等「行動」を提案してきたが、全ての問題にも絡むのが、人材育成である。援助活動に従事した人が、ビジネスに携われるようにする等、自由自在にキャリアを組成出来るように工夫することが重要である。グロービスにも、ベトナムで国際協力に2年間従事した人がいる。グロービスがある麹町のビルにJICAの派遣センターが位置する。JICAの持つ世界的なネットワークを国内にも広め、国民に理解を促進する方策を一緒になって考えていきたい。

日本の外交パワーを支える一つが、顔が見えるODAだ。どの国に行っても日本の援助への賞賛は絶えない。それは、お金ばかりでなく、日本人が現地に溶け込み、その国のために本心からお手伝いしたいという、「心」がこもっているからだ。日本の心や現地との絆の意識が、発展途上国にも伝わり、生きているのだ。

是非とも、僕ら日本人一人一人がODAの必要性を認識し、一緒に行動し、声を上げ、日本にとり重要な外交の「打ち手」であるODAを、現地の人々のためにも、国益のためにも有効活用できるようにしたいものだ。

今、JICAのトップは、緒方貞子さんだ。緒方さんを引き継ぐ人材を育て上げながらも、戦略立案、予算の確保、そして国民の理解を測る仕組みを構築したいものである。

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コメント(2)

  • ODA=無駄、ばらまき
    という方程式が国民意識としてあり、結果として予算削減の方向になっているのかと思います。


    こちらの結果も、ODAを知るという意味で、重要かもしれません。

    行政刷新会議ワーキンググループ
    「事業仕分け」 WG-A
    http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake/detail/gijiroku/a-3.pdf

    投稿者: 星野毅

  • 読了後「アウフヘーベン!」という言葉が浮かびました。

    「ODA≒加減乗除の損得勘定?」と思っている国民を
    「ODA≒国家戦略の方程式!!」に意識向上させるには・・

    先ず、世界的に見ても日本が豊かである事を
    「国民に実感」させる必要があります。

    いずれ、
    {国民に「消費税」を課す政策}
    から
    {国民に「消費益」を提供する政策}
    に転換する事が可能なアイデアを
    「堀さんに提案したい!」
    と、思った次第です。

    投稿者: 三成21

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