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2012年10月22日 (月)

日本人・アジア人・地球人 KIBOW水戸「何すっぺ200万円」

上野発のスーパーひたちに乗り、水戸へ向かう。一時間ほど経つと、左側に偕楽園が見え、右側に桜山・千波湖が見えてくる。僕は、左右に顔を振りながら、車窓から見えるこの光景をいつも楽しんでいる。そして、特急が水戸駅に滑り込み下車する。年に一回はふるさと水戸に帰省するので、ワクワクしながらこの動作をし続けてきたことになる。

今回の目的は、KIBOW水戸を主催し、翌日に水戸青年会議所の60周年記念セミナーにて講演するためだ。

KIBOW水戸は、今回で3回目だ。1回目は震災後2週間の3月25日に開催された。この時は、常磐線が復旧していなかったので、高速バスに乗り、水戸に辿りついた。2回目が昨秋開催され、「水戸をよくするために何をすべきか」の発表会をした。10グループに自分の思いを喋ってもらった。そして、KIBOWの活動は、3順目に入った。3回目の今回は、いよいよ「何すっぺ200万円」ということで、事業コンペにより集めた寄付金の使い道を決めてもらうのだ。

そもそものきっかけは、水戸のNPO法人ウォータードアーズ(水戸の英語読み)の代表が東京に「ベロタクシーをやりたいから100万円寄付してくれ」とお願いに来られたことだった。僕は、「KIBOWに寄付してくれた皆さまからの大切な資金を、自分がその場で独断で使い道を決めていいのか」と躊躇した。

そこで、「水戸に500万円寄附することをコミットしている。であれば、その使い道をみんなで考えてもらい、みんなで決めてもらおう」と逆提案して、今回の企画「何すっぺ200万円」が立てられた。

ちなみに、今まで寄附することが決まっているのは、全てKIBOWを行った場所のコミュニティーだ。水戸以外には、いわき、仙台(石巻を含む)、盛岡(遠野、大槌を含む)、そして福島市の5カ所だ。KIBOWを実施した山元町には、既に町に「教育のために使ってくれ」と一千万円強を寄附していた。八戸でも行ったが、被害状況をみた結果、コミットするには至っていない(八戸の皆さま>スミマセンm(__)m)。

KIBOWのお金は、「頑張っている個人や組織に出す」と言うのが基本方針だ。政府からは、数兆円が出ている。それに比べたらはるかに少ない。だが、KIBOWは、心の底からその地域を愛し、何かを草の根で始めたいというマインドを持った人を応援することにしている。もしかしたらKIBOWの活動の方が、地域を変える原動力になるかもしれない。

「何すっぺ200万円」は、KIBOWに寄付してもらった額の中から200万円の使い道を争奪するコンペだ。書類審査を経て7つのグループに絞られたプレゼンターが、各5分間で自らのアイディアを発表する。その場にいる参加者が全員審査員だ。みんなの投票で、順位を付けてトップが100万円、2位が50万円、3位が30万円そして、4、5位が10万円をそれぞれがゲットする仕組みになっていた。

開始時刻の30分も前に現地に着いたのに、もう半分以上の席が埋まり、受付に並ぶ人の列もあった。こんなこと今までのKIBOWではありえなかった。僕は、KIBOWのTシャツに、新しく作ったKIBOWバッチ、そして、KIBOW帽子を被り、スタンバイした。立ち見も出る熱気ムンムンの会場で、僕が冒頭の挨拶をして、プレゼンが始まった。

最初のプレゼンは、「水戸劇場化プロジェクト」だ。男女二人組による発表だ。演劇の役者でもある女性が、心の底から訴えてくる。「水戸北口にある映画館や劇場が閉鎖してしまった。だからこそ、今水戸には劇場が必要なのだ。100万円があれば、先ずは劇場を借りて演劇や映画を自主開催・上映できる。ゆくゆくは劇場を水戸に創りたい。水戸を文化の発信拠点にしたい!」熱いプレゼンが、心に響く。水戸訛りが懐かしい。そして、質疑応答へ。

2番目のプレゼンターは、」66歳の男性だ。「66歳のロートルが、老体に鞭を打って参りました」の掴みで始まったプレゼンは、「水戸城再建プロジェクト」だ。「水戸城を是非水戸に再建したい。その候補地は、市役所跡だ」。と訴えてくる。

KIBOW水戸は、大いに盛り上がってきた。3番目のプレゼンは、「水戸桜川千本桜プロジェクト」。先生と生徒が登場だ。BGMは、モーツアルト。ボリュームが小さいと指摘していた。皆こだわりを持ち、真剣勝負だ。制服を着た高校生が、マイクの前で、訴えかける。ほぼ全員がパワーポイントを使い、ビジュアルにも訴えかける。5分間しかないから必死だ。「龍馬の『今一度日本を洗濯したく候』。『今一度』は、水戸学から学んだ。水戸学の始祖である光圀公がつくった桜川の一部に、桜1000本を植えたい」。どうやら桜川の一部は、ごみダメの様に荒れ果てているので、そこに桜を植えたいのだという。最後のスライドが映し出された。「さあ、はじめよう。未来へつなぐために。あなたは水戸の歴史の主人公である」。そして、質疑応答だ。

素晴らしい言葉を残し、4番目のプレゼンへ。プレゼン5分、質疑応答2分でテンポよく、次から次へと進む。「時代観光都市 水戸藩かご屋で『ほいさっさ』」だ。観光客を乗せるだけでなく、途中で侍が登場し、チャンバラ合戦をする、という演技付き(と言っても一人演技だが)のプレゼンだ。ベロタクシーではなく、水戸らしくかごなのだと訴えかける。

5番目のプレゼンターは、「水戸カレーバトルいばらきKIZUNAプロジェクト」。昨年この場で、「MITOコン」を提案した仕掛け人が登場だ。有言実行で、既に4回で合計1万人が参加した街コンが開かれていた。水戸コンは、街コンでは日本一の規模になったと言う。独身男性と独身女性が各2千人参加して、水戸の街中全部で開催する規模になったのだという。既にカップルも複数生まれ、結婚までしたと。KIBOWから生まれたさざ波が、うねりとなり大きな変化を起こしていた。

「餃子と言えば宇都宮。カレーと言えば水戸にするプロジェクト」だ。「水戸のカレーの消費量は、日本で4番目。一人一人があと100g食べればカレー消費量で、日本一になる。みんなでカレーを食べて、水戸をカレーの街にしよう」と訴えかける。

残り2つ。6番目が、「水戸魅力再発見『自転車タクシー(ベロタクシー)事業』」だ。NPO法人ウォータードアーズの企画だ。本日、千波湖の清掃ボランティアも実施してきたらしい。素晴らしい!

千波湖から桜山・偕楽園にかけては、広大な公園になっている。水戸は、世界で第二位の都市型公園を持つのだと言う。ちなみに、1位はNYのセントラルパークだ。NYと比較していいのだろうか、と疑問に思うのだが。。。

「ベロタクシー1台、100万円だ。ベロタクシーを使って、水戸への観光客誘致の起爆剤にしたい」、と訴えかける。観客席には、お揃いのウィンド・ブレザーを着たスタッフが来ていた。

プレゼンの順番は、フェイスブックに集まった「いいね」の数で、決めることになっていた。事前に全グループがフェイスブックページを立ちあげ競い合うのだ。イベントの前から、既に戦いが始まっているのだ。いよいよ最後だ。「新イバラキ・ヒーロー・プロジェクト」。いいね!の数が最も多くついたので、オオトリを選んだのだ。

双子のヒーローが登場だ。「今は、ソーラン・ドラゴンズを演じているが、これから新しいイバラキヒーローをつくりたい。ヒーローの衣装に100万円かかる。茨城・水戸の子供達に夢を」というプロジェクトなのだという。最後のヒーローは、元幼稚園先生だ。「教育のまち水戸からヒーロー教育を広めたい」という熱い思いが伝わってくる。

これで終わりだ。さあて、どれに投票するかは、難しい。それぞれにユニークな発想で、草の根から水戸を良くしたいという思いが、心から伝わってくる。どこが100万円をゲットするのかが、楽しみだ。

KIBOW水戸は、交流会に突入した。会場にある椅子は、端へとよせられ真ん中に、大きな交流のスペースが設けられた。会費が1500円とかなり安くなっているが、ドリンク一杯と簡単なホットドッグ風の食事が出される。これではお腹がすくので、千波湖の白鳥をモチーフにした白鳥シューを食べる事にした。今いる千波湖畔の好文カフェは、ガラス張りで千羽湖の景色を楽しめるデザインになっているのだ。僕も昔よく白鳥とたわむれたのだ。キャラメルラテとともにパチリ。
Photo

交流会では、プレゼンターがたすきをかけて、目立つキンキラキンの飾りをまとい、参加者兼審査員と交流し、質問に答える形式になっていた。参加者は、投票箱に一人二票チェックを入れる。動員された人も多いであろうから、不公平にならないように、もう一つを選ぶことが義務づけられている。

交流会の最中に移動されていた椅子を戻し、着席して結果を待つ。ワクワクする瞬間だ。今から発表だ。5位から発表だ。司会の川崎アツシが、登場した。

そして、発表された。5位は、かごやのほいさっさだ。おめでとう!!10万円ゲットだ。「かごの制作費に充てる」とのこと。

続けて第4位は、水戸劇場化プロジェクトだ。おめでとう!! 同じく10万円だ。役者と劇場プロデューサーの2人組が出て来て、喜びの言葉を述べた。

第3位は、ベロタクシーだ。30万円ゲットだ。おめでとう!!優勝で100万円ゲット狙っていたのでちょっと悔しそう。でも、気を取り直して、「中古のベロタクシーを買って始める」、と。

第2位は、何と「カレープロジェクト」。50万円ゲットだ!水戸がカレーの街になる。「大事に使いたい」と。街コンの実績があるからか、皆新たなプロジェクトを楽しみにしているようだった。「皆さん、カレーを食べよう!」と訴えていた。

そして、第1位の発表だ。まだ賞を得ていない3チームは、皆緊張の面持ちだ。そして、発表だ。水戸桜川千本桜プロジェクトだ! プレゼンターである学校の先生が天を仰いだ。千本桜プロジェクトは、圧勝だった。僕の目の前に生徒と先生が登場して、今感激のコメントを出してくれている。拍手喝采だ。

「投票してくれた人々にも責任がある。実現するには、河川を管理している国、県、水戸の了解が必要だ。それらをみんなの力で動かして欲しい。みんなで桜川に桜を植える事業を実現させて欲しい」と。

おめでとう!! 100万円ゲットだ! これで、水戸は桜の街になる。偕楽園の梅に加えて、桜川の全川敷にも桜が植えられる。これから、多いに水戸を良くしてくれー。みんな期待しているぞーー。

KIBOWがきっかけになり、桜川に桜が数多く植えられる。ベロタクシーとかごが走り、劇場ができる。そして、水戸はカレーの街になり、ヒーローが出現する。水戸城の再建も始まるかもしれない。歴史が今から始まる。そういう感慨を皆持っている様だ。

最後に審査員5人が一人一人コメントを述べている。審査員は10票。参加者は2票だから5倍の投票が入る。最後は、僕の講評と締めだ。

「可能性を信じ、前に一歩踏み始めよう。そして、多くの人を巻き込み、良きフォロワーと組み、適宜連携し一緒になって歩んで欲しい。震災で何も変わらなかったと言う人がいる。僕はそう思わない。明らかに水戸は変わった。先の第二回KIBOW水戸がきっかけとなりファッションショーが始まり(10月28日に歩行者天国にして行われる)、日本一の規模に達した街コンも開かれている。そして、これからも水戸は変わり続けるのだ。先ずは、その一歩をみんなで踏み出そう」。と僕が締めくくり、感動のうちにKIBOW水戸が終わった。

最後に参加者みんなで記念撮影だ。KIBOW水戸、ものすごい盛り上がりのなかで無事に終了!! みんないい顔している。
Kibow

僕らは、スタッフとともに二次会に参加した。これからこの「何すっぺ200万円」をいわき、仙台、盛岡、そして福島市で行うことにした。3順目のKIBOWは、草の根から変化を巻き起こす為に、有志によるプレゼン、そして参加者による投票で、お金を何に使うかを決めてもらうことにした。みんなの力で地域を、そして日本を変えていく原動力にしたいのだ。

二次会の場で、KIBOW水戸スタッフが飲み続ける。水戸の街が熱く燃えた一日であった。


2012年10月22日
二番町のオフィスにて執筆
堀義人

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