起業家の風景(エッセイ) 起業家の風景 一覧へ

2013年1月30日 (水)

日本人・アジア人・地球人 ダボス会議2013~その3)ダボス会議三日目

朝食アポが珍しく入っていない。のんびりとした気持ちで、朝7時からメールで日本と連絡をとり、様々な意思決定をする。窓の外はうっすらと明るくなり、アルプスの白い山々が鎮座している様が見える。今日のダボスも晴れだ。本日は、セッションに参加することに重点を置く。

本日は、英国のキャメロン首相とドイツのメルケル首相の揃い踏みだ。この2人のスピーチの比較が、ヨーロッパの方向性を占う意味でもとても興味深い。昼食時には、ビル・ゲイツ氏、ラリー・サマーズ前ハーバード大学学長、フェイスブックの投資家で著名なピーター・ティール氏、トーマス・フリードマン氏やMIT学長が登壇するパネルがある。凄く贅沢だ。

他に楽しみな登壇者は、ヘンリー・キッシンジャー氏、ロシアのメドベージェブ首相、イタリアのマリオ・モンティ首相や、ノーベル経済学賞受賞学者のジョセフ・スティグリッツ氏だ。これは、楽しみだ。これらの話を聞けば、だいたい世界の動きがわかる。

そして、夜はジャパン・ナイトとグロービス・ナイトだ。

ダボス会議では、昨年まで孤軍奮闘してきたが、今年は心強い助っ人が来ている。本日のグロービス・ナイトに向けて、東京から3名のスタッフ(日本人男、日本人女、欧州人)、そしてグロービスの社長室長だった仲間も、ベルギーから駆けつけてくれる予定だ。堀義人の登壇に続き、「グロービス」がデビューだ。

本日のグロービス・ナイトに合わせて、ジャパンタイムズに僕の記事が掲載された。Aiming to take Japan’s best onto the global stage
本日のWall Street Journalに、グロービスの広告が掲載された。とっくりとちょうしの写真が、日本っぽくて、いいですよね。(^^)
2

メイン会場にて、キッシンジャー氏の話を聞く。「私が生きているアメリカはまだ己を信じている。政府が国民に自己犠牲を求める事が出来ているからだ」。

そして、英国のキャメロン首相のスピーチが始まった。7回連続のダボス登壇。過去3回は、首相としての登場だ。今年、G8を英国がホストする。英国キャメロン首相のエネルギーと気合が伝わってくる。「英国は、やるべきことやった。だが、ヨーロッパはちょっと遅れてしまった」。

英国キャメロン首相は、ダボスの場をうまく使い、英国のポジションを伝えている。またG8の議長としての立場をうまく活用している。「G8では、次の3つをテーマにする。1)自由貿易、2)公正な税金、3)トランスペアレンシー」。G20には、現時点では、殆ど言及していない。

「私は、税金下げることの信者だ。だから最高税率を下げた。所得の補足率を上げて税収を増やし、その分しっかりと税率を下げるのだ。英国は、最も税制的に世界で競争力がある。法人税は20%に近づいている。個人所得税の最高税率も下げた。最もビジネスがしやすいのが英国だ」

「我らのポリシーはヨーロッパに背を向ける為では無くヨーロッパでの地位を築く為の物だ。英国は、EUが中央集権的な政治手法に終始するなら、私も英国にとってもEUは不要になる」。

英国キャメロン首相のスピーチが終わった。キャメロン首相は、とても饒舌だ。演台から離れ、自由に質問を募った。「何でも答えますよ」という姿勢を示している。とても、情熱的に、明確にポイントをつく。隣のドイツ人が「オックスブリッジでは弁論能力を養っている。他の国にはこれが無い」と。

さて、次は「ユーロ圏の危機」のパネルだ。イタリアのマリオ・モンティ首相の登場だ。他パネリストは、オランダ、デンマーク、アイルランドの首相だ。贅沢なパネルだ。モンティ首相が英語で喋り始めた。恐らくこのパネルは、全て英語で実施されるのであろう。

デンマークは、46歳の女性首相だ。赤いジャケットにブロンドの髪が映える美人首相だ。英語で流暢に、政策を語っている。「緊縮財政、改革、ヨーロッパのコア価値の3つが重要だ。ユーロ圏とEU他国とのオープンな交流が必要だ」。

「EUの魅力は、自由貿易だ。これに米国、日本が加われば、GDPが更に成長する。不満があるのは、EU内でユーロ圏の危機ばかりを話し過ぎていることだ。EU内の非ユーロ圏がもっと協調すべきだ」オランダ首相。どんどんこのEU内のユーロ圏対非ユーロ圏のディバイド(分裂)が、顕在化している気がする。

ダボスのメイン会場からモロサニホテルに移動し、プライベートランチ・セッションに参加した。ラリー・サマーズ前ハーバード大学学長、ビル・ゲイツ氏、フェイスブックの投資家で著名なピーター・ティール氏、MITの学長などが、登壇するセッションだ。ダボスでは、プライベート・イベントの方が、面白いことが多い。

11歳のパキスタンの女性が登壇。トーマス・フリードマン氏がインタビューし始めた。スタンフォードの人工知能のオンラインコースを終了した天才少女だ。難しい物理等も含め、全てマスターした。英語で話し始めた。「将来は、物理学者になりたい。キチンと説明し、事例が豊富で、楽しいクラスが良い」。オンライン教育のポテンシャルを痛感した11歳の少女の友達は、イランとインドからだという。

そして、他のパネリストが登壇した。一人目は、Daphne Koller。Couseraの共同創業者兼スタンフォード大学コンピュータ科学の教授。既に200万人の学生が196カ国から学んでいる。

ちなみにこのセッションのテーマは、「オンライン教育が世界を変える」だ。MIT学長、「オンラインでできないのは、寮生活、社会性などだ」。ラリー・サマーズ「物事は思ったより遅く起こり、始まったら予想よりも早いスピードで変化する。例えばリーマンショックなど。大学の教育も思ったよりも早いスピードで変化するであろう」

「大学は、基本的に変わっていない。1970年代のMITと今とでは、殆ど変化がない。一方、例えばIBMはハード会社からサービス会社に変わった等の変化があった。大学教育も変化が始まると学期制、試験制度などを含めてドラスティックに変わるであろう」(ラリー・サマーズ 前ハーバード大学学長)。

「高等教育は、今バブルの状態だ。住宅バブルやITバブルと同じだ。こんなに高い学費は、維持できない。何かが間違っている。教育は、本来の学習の目的からキャリア上での保険や、戦い(トーナメント)へと歪められてきた。教育は、兵器商人の様に、戦争に勝つための道具になっている。これを本来の目的の学習に戻す必要がある」。(ピーター・ティール氏)

ここで、ビル・ゲイツが登壇し、少女が降壇した。そしてSebastian Thrun (UdacityのCEO)が話す番だ。「教育は、全ての基本だ。全ての資源の中で一番重要なのは、人的資源だ。人々が、教育を受ける機会を持つのは、基本的人権の一つだ」。

MIT学長「教授は、オンライン上で学生のメンターのようになっていくであろう」。ラリー・サマーズ「アメフトの試合を会場で見るのか、それとも快適な自宅で観るのとどっちがいいのか? そもそも、どっちに人がお金を払おうとするのか? 人と会い、交流することの価値を過小評価してはいけない」。

<写真1>「オンライン教育が、世界を変える」のパネル。右からCourseraの共同創業者、MIT教授、ビル・ゲイツ氏、トーマス・フリードマン氏、ラリー・サマーズ氏、ピーター・ティール氏、UdacityのCEO。
Hori_davos_03_3

昼食会場を出て、雪で固まった道を20分ほど歩き、メイン会場に戻ってきた。目の前に、SPで守られた背が高い女性がいるなぁと思って見ていたら、クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事だった。目が合った時に声をかけようかと思ったけど、お互い急いでいたので、遠慮した。

メルケル首相のスピーチの会場に遅れて到着。印象は、疲れている感じだ。3年ほど続けてメルケル首相のスピーチを聞いてきたが、今回は力強さを感じないし、あまり準備してない感じだ。ユーロの問題の緊急性が無いからだろうか? 地方選挙に負けたからだろうか? 今から、シュワブ氏との対談だ。

「日本が為替を弱めていることを危惧している」。メルケル首相が、日本を名指ししたのは、ちょっと意外だった。中央銀行の独立性に関しても日本の名が上がった。日本が、これだけ話題に上がることは過去になかった。そういう意味では安倍政権は成功しているのだろう。一番よくないのが無視されることだから。

「ユーロ通貨は、EU加盟国皆の共通通貨にすることが共通認識で始まった。ユーロには、誰でも入りたい人が入れる。門戸は開いている」(メルケル首相)。英国キャメロン首相のスピーチを受けてのコメント。

メルケル首相のスピーチからよく出てくる言葉が、「投資家」だ。とても、投資家や市場を意識した政策を練っている。あれ、会場から質問を一つも受けないで、あっと言う間に終わってしまった。今回は、キャメロン首相に軍杯が上がった気がする。

メルケル首相のスピーチを終えて、「成長に向けた新しいビジョン」のセッションにいる。パネリストは、OECD事務総長、ダウケミカルのCEO、ウィプロのアジム・プレムジ氏、コスタリカとスウェーデンの大統領・首相と、東芝の西田会長だ。

東芝の西田会長。「成長には、次の3つが必要だ。1)不断のイノベーション、2)生産性の向上、3)リスクに対応する強靭さ。バリュー・イノベーションとプロセスイノベーションとは、別だ。前者は革新、後者が改善で前者が難しい」

今回のダボス会議では、日本人の登壇者が少ない。日本への関心が高まっているのに、良いスピーカーがいないわけではないのに、とても残念だ。

登壇者から、次のコメントがあったから、会場から質問してみた。「『生産性の向上が、世界の職を減らした』とのコメントがあったが、1)本当か? 2)もしそうならば、どうやったら職を増やせるのか?」。みなさんは、どう思いますか?

ホテルの部屋に一旦戻り、ジャパン・ナイトの会場に向かう。そして、夜9時からはグロービス・ナイトだ。どんな感じになるか、楽しみだ。


2013年1月30日
一番町の自宅にて執筆
堀義人

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL :
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45572/56660726

コメント(4)

  • 東芝の西田会長。「成長には、次の3つが必要だ。1)不断のイノベーション、2)生産性の向上、3)リスクに対応する強靭さ。バリュー・イノベーションとプロセスイノベーションとは、別だ。後者は改善、前者は革新で後者が難しい」


    上記について質問です。
    プロセスイノベーション=改善
    バリューイノベーション=革新

    難しいのは新しい価値を創造する革新のほうと思うのですが、
    既存価値をより良くする改善のほうが難しいと西田会長が
    仰ったのはなぜでしょうか?そのあたりに言及はございましたか?

    投稿者: EGAMI

  • 正しくは「前者は革新、後者が改善で前者が難しい」でした。ご指摘ありがとうございます。本文は訂正しました。

    投稿者: 堀義人

  • 現在アメリカの大学にてビジネスとコミュニケーションを専攻しているものです。
    最後の堀さんの問いがちょうどマクロ経済の授業とかさなったので、コメントさせていただきたいと思います。


    「生産性の向上が、世界の職を減らした」

     1)本当か。
    いえ、それは経済全体の答えではないはずです。生産性の向上が技術の向上によってもたらされたとして、機械が人の職を奪っているという考え方だとしたら、それはある一企業や業界をみているにすぎません。ある企業では機械化により人を以前より雇わなくなったところがあるのは事実です。ただ、歴史からみても技術の革新は生産性をあげ、より多くの製品を作れるようになり、より多くの機械を動かしたり作ったりする労働者を必要とし、技術革新そのものが新たなビジネスを生み、新たな需要を生み、経済全体をよくしてきたはずです。

     2)もしそうならば、どうやったら職を増やせるのか?
    失業率と就業率の両方をみて、本当の原因をそれぞれの国と地域が探るべきだろうと思います。例えば機械化によって工場から職を失った人がいるとします。一方その機械の売り込みに成功し拡大している企業は人材を募集しているでしょう。ただここにスキルのミスマッチがあり、失業した人をそのまま採用できるわけではありません。また、機械の会社は失業者とは違う場所にあるかもしれません。こういった構造的な失業を生み出しているとしたら、今日本がしているような職業訓練を斡旋したり、企業に、ある地域からの移動へ補助をだしたりすることができるかもしれません。


    まだ日本はどうすべき、アメリカはどうすべきなどと言えるまでの具体化はできていませんが、「生産性の向上が、世界の職を減らした」に対して述べるところがあったのでコメントさせていただきました。

    投稿者: namiai3

  • 登壇者から、次のコメントがあったから、会場から質問してみた。「『生産性の向上が、世界の職を減らした』とのコメントがあったが、1)本当か? 2)もしそうならば、どうやったら職を増やせるのか?」。みなさんは、どう思いますか?

    1)そういう面はあると思います

    生産性上昇はイギリスの産業革命以来、急速に伸びてきました。しかし、その反面、世界人口の伸びも右肩上がりで止まる余地はありません。
    つまり、簡単に、均衡モデルで表すと
    生産物が人口に対して追いつかない動的均衡モデル状態が生じているので幾ら生産性をあげようが、世界人口は伸び続ける限り失業率改善は起こりえません。

    2)職を増やす方法は私のモデルが正しいならば、出生率をコントロールする。もしくは、出生率の低い先進国と出生率の多い後進諸国の伸び率を平準化することです。
    アプローチとしては、出生率の低い国は移民を受け入れる。
    出生率の高い国は一人っ子政策のような形で課税すれば平準化が取れます。
    この結果により、需要は安定し、失業率も安定するでしょう。

    この案は口語的に言えば、できちゃった婚をせず、計画性を持って異性と付き合い子供の成長を促すと言うことです。

    投稿者: KK

コメントを書く

お名前
メールアドレス 本サイト上には掲載しません。
URL
コメント本文(必須
コメントは管理者が公開するまで表示されません。
不適切な発言は、管理者の判断において削除することがあります。

はじめに

「起業家の風景/冒言」一覧

起業家の風景 最新コラム

起業家の冒言 最新コラム

メールマガジン配信

著書

グロービス 事業紹介