起業家の風景(エッセイ) 起業家の風景 一覧へ

2013年6月 6日 (木)

日本人・アジア人・地球人 アジア7都市訪問ツアー~2)上海でのセミナーと対談

上海に到着。ちょっと蒸し暑い。空港に友人のドライバーが迎えに来て、彼の自宅に直行した。彼とは、ハーバードの同窓で一緒の時期に卒業生ボード(理事)を務めたことで親しくなった。僕は日本代表で、彼は中国代表の立場だった。

彼には子どもが4人いる。7歳から15歳。男3人、女1人だ。彼ら家族は、4年ほど前に日本に来て、我が家に遊びに来たこともあった。子供達は、中国語と英語のバイリンガルだ。長男は米国の全寮制の学校にいる。次男、三男、そして長女と一緒に食卓を囲み、中国料理を食べながら教育談義に花が咲いた。日中関係や政治的な話は一切出なかったので、僕からも持ち出さなかった。

友人宅での夕食会を終え、車でホテルまで送ってもらった。その夜は、早めに就寝した。

上海の朝。快晴。窓の外に青空が広がる。高層ビルの合間に、低層の集合住宅がひしめいている。一通りネット上でニュースに目を通し、一泳ぎだ。6月23日にKIBOWでトライアスロンに参加する予定。僕は、スイムのみを担当する。当日まであと一カ月を切った、初めて1500Mを泳いだ。

まずは、グロービスのセミナー会場に向かった。グロービスの上海スタッフに挨拶をして、会場の確認を行った。

そして、今回のゲスト・スピーカーである「第一財経」(中国で影響力の大きい政治経済誌)の創業者の秦朔さんとランチ会食をした。最初は通訳を入れて会話をしたが、途中から英語で直接話をした。中国の経済状況や課題、日中関係など多岐にわたる質問に丁寧に答えてもらった。とても洞察力があり、日本のことを良く知っている方だ。

セミナー「中国企業のグローバル化、日本企業の中国ビジネスへの提言」が13時よりスタートした。僕のスピーチに続き、質疑・応答、休憩時間を経て、「第一財経」の創業者の秦さんのスピーチが始まった。スピーチ後には、僕との対談を予定している。セミナーは、13時から16時までの長丁場だ。会場は、100人以上が集っている。聴衆は、日本人2割、中国人8割だ。秦さんが喋り始めた。

「フォーチュン500のうち、61社が中国企業。ブランド・トップ100社のうち、13社が中国企業。だが、バイドゥ等を除いた10社は、殆ど「中国」を冠する。トップ企業は、政府系だ。もっと中国の民間企業が頑張る必要がある。

中国企業の国際化のためには、バリュー・チェーンを改善する必要がある。設計、開発、製造、調達、マーケティング、営業等全てにおいて、国際化を促進する必要がある。政府も、中国企業の国際化を後押ししている。対外開放のレベルを上げて行く必要がある。中国企業の国際化は避けられない。では、どのようにして国際化するのか? 経営と人材の国際化が必要だ。

失敗事例1) 2003年にTCLが仏トムソンを買ったこと。失敗の教訓。世界トップ3に入ろうと焦り、買収前のリサーチを怠った。フランスの労働者政策への理解が足りなかった。失敗事例2)中国自動車企業がインドに投資をしたこと。課題は採用だ。優秀なインド人は、欧米企業志向だ。現地で良い人材を採用できない。タタ自動車との競争への認識も甘かった。失敗事例3) テレビメーカーの長虹の米国企業の買収。他にもアジアス社の買収等失敗事例がある。何故失敗なのか? 急ぎすぎて、買収のリスクを十分に認識していなかった。

一方では、ハイアール社やファーウェイ社などの成功事例もある。ファーウェイは、海外の売り上げは国内の倍以上ある。ハイアールやファーウェイは、社内の能力を一歩一歩高めて、戦略的提携を積み重ねた。他にも数多くの成功事例がある。基本的には、社内の能力向上に注力している会社が成功事例に多い。

あと成功事例のもう一つのパターンは、海外企業やブランド買収を中国市場で勝つために使う方法だ。結局は、経営チームが重要だ。イノベーションや管理能力。戦略立案、ブランド、採用、予算、財務、お客様サービスなどが世界次元かどうかが重要になる。

日系企業は当初は投資が多かったが、今は落ち込んでいる。自動車販売もシェアが23%から10%まで落ち込み、今は15%まで回復した。日中関係の悪化が大きな要因ではあるが、他にもできることがある。もっと現地化して、中国に合った製品を投入する必要がある。

サムスンは、優秀な人材を送り込んでいる。日本企業の社員は日本酒を飲んでいるが、サムスンは老酒を飲んでいる。殆どの韓国人は中国語を喋る。日本人も多くの人が中国語を喋るが、コミットメントと意欲が違う。日本企業は、その点ではちょっと保守的だ」

とても示唆に富む話だ。秦さんの話を聞いてわかったことは、結局は、日本企業であろうと中国企業であろうと基本は一緒だということ。地道に一歩一歩人材の能力を高め、全てのバリュー・チェーンでの力を世界次元に引き上げて行く努力が必要、ということだ。

秦さんとの対談が始まった。「中国は、1840年時点では世界のGDPの半分程度を占める大国だった。1895年にGDPで二位に転落した。その時の中国は、大きかったが強かったとは言えない。今、中国はかつての経済的地位を取り戻しつつあり、2020年には米国を抜いて世界一となるだろう。だが大きいからといって、強いとは限らない。

CCTVの親しい記者が米国、四川、タヒチ等の世界各国の被災地をまわった。日本の東北だけが、全く違って、とても整然としていた。大和民族の底力に、強い衝撃を受けたと言う。しかしネット上では、反日の書き込みが多い。『日本と中国は戦争に入る!』と叫ぶ人もいる。日本からもう学ぶものはなく、米国から学べばよい、と言う空気が支配的だ。

日本は、成長する中国市場を失うと大きな損失となる。だが、中国は日本を失うと、もっと大きな損失となろう。物質的な面でなく、文化的・精神的な面でだ。日本の文化度の高さや精神性から学ぶことは多い。それを見過ごして成長しても、強い国になるとは言わない」。

この言葉が、大きく心に残った。僕は、日本はもっと中国を信頼してもよいと思う。中国には、日本らしく誠実に、優しさを持って、粘り強く接することが重要なのであろう。日本の良さは、必ずや中国人が認めることになる。隣の大国とは、主張することは主張しながらも、誠実に粘り強く付き合うことが重要なのであろう。

対談を終えて、カジュアルな服に着替えて、グロービスの上海事務所を訪問した。入口の受付の前で、中国人スタッフの王さんとツーショット。グロービスは、中国では、「顧彼思」と言う。

6687_508991239166854_961532934_n_2

グロービス事務所を訪問後、1階のスターバックスで、モカ・フラペチーノのスモールを買った。何と日本円にして500円以上もした(33中国元)。車の中でメールやツイッターをしながら、空港に向かった。フラペチーノの細かい氷片が気持ちいい。もうそろそろ空港に着く。次は、シンガポールだ。


2013年6月5日
バンコクからネピドーに向かうフライトで執筆
堀義人

トラックバック(0)

この記事のトラックバックURL :
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/45572/57535800

コメント(1)

  • 掘学長。
    上海でのコラム、中国の経済実情勉強になりました。
    掘学長は経済人、経営者、起業家、教育者という立場から、各国の要人と多岐にわたる対話を進められていますね。
    自国(日本)の発展のみならずアジアの、またその他の国々の経営や経済、政治、規制、文化等を熟慮されたうえで世界的な視野に立ってコミットする姿勢に心打たれます。
    私は私の立場で20歳からヨーロッパ、北米、東アジアの一民間人と27年間、草の根の交流を続けて来ました。
    ある時は一対一の膝づめで、またある時は中国の全青連等との代表と。
    私が対話に臨む時に心掛けている事は、
    黄色人種、白人、黒人、カトリック教徒、仏教徒である前に、起業家である前に「人間」であるという観点に立って胸襟を開いて真剣に時に楽しく粘り強い対話を持続していくならば文化やイデオロギーの壁を越え、必ずや理解し合えるという事を体験する事ができました。
    今日は撫順から就労ビザで日本で外食産業を営んでいる女性オーナーと対話をしましたが、歴史認識の件でも一致し合えたことは大変大きな収穫でした。
    男性は、特に政治家は見栄や立場や保身から、なかなか胸襟を開いて話すことは難しいと思うのですが、遠回りに見えて一番近い道はやはり草の根の民間交流が基本と考えます。なぜなら日本在住の上海人も北京人も、「日本でこういう人に会ったよ!尖閣問題も、満州のことも文革のことも中国共産党のことも中国バブルのことも今まで出会ったことのない考え方を持っている人だからあなたも、この日本人と話した方がいい」と口コミで薦め会わせてくれるのです。
    日清戦争以降、脱亜入欧を唱え傲慢になり、中国の背景も考慮せず、日本の革命(明治維新)を輸出しようとした日本の非礼を詫び、謝るところは誠意で謝罪し、糾すべきは糾すという芯がないと、ずっと意地の張り合い、平行線です。
    僕は昔、掘学長がセミナーで話していたことが脳裏から離れません。それは「良い評判がどんなたくさん広がっても一つの悪い評判が広まれば、それは千にも万にも広がり良い評判を根底からひっくり返すほどの力がある」との主意でした。国同士も同じと思いました。
    私は中国の方に対しては、日本にとっては文化の大恩ある国と敬っています。
    漢字を初め、儒教、朱子学、陽明学、仏教、陶芸や詩などの芸術・文化、書物(孔子、孟子、孫子、貞観政要や史記、三国志、春秋左史伝など数え上げたらきりがない)すべてを日本は輸入し何らかの形で取り入れてきました。
    相手を、そして相手の国を敬う心があれば必ずや互いが心を開いて本音の対話になるのだというのが、私感ではありますが外交の鉄則だとと確信しています。

    青臭い理想論といわれればそれまでですが、フランス革命も中国の文革もアメリカの独立戦争も幕末の維新も、本質は理想論から始まって、その後より現実的な既成の構造、システム、オペレーションを改革するといった流れなのだと思います。結局は、人を、国を尊重し合うところからすべては始まると思います。
    掘学長の素晴らしさは、重要な会合に参加し、スピーカーとして発言もされますが、いかなる立場になってもブレる事なく現地の方とお酒を酌み交わし、人間対人間の民間交流も持続されているということに誇りを思っています。

    立場も次元も異なりますが掘学長のコラムに刺激され、私は私の立場で各国の方々と歴史観、教育観、政治観、哲学観、人間観を生涯深化させながら自身の使命に邁進しようと思っています。

    大変大変長くなりましたが思い付くまま推敲もせずアップ致しましたので誤字脱字・不適切な文面があればご容赦下さいませ。

    掘学長、いつもコラムにより、志を奮い立たせて下さり感謝しています。有難うございます!

    和賀 公威

    投稿者: 和賀 公威

コメントを書く

お名前
メールアドレス 本サイト上には掲載しません。
URL
コメント本文(必須
コメントは管理者が公開するまで表示されません。
不適切な発言は、管理者の判断において削除することがあります。

はじめに

「起業家の風景/冒言」一覧

起業家の風景 最新コラム

起業家の冒言 最新コラム

メールマガジン配信

著書

グロービス 事業紹介